ゴールウェーは、ダブリンから乗った電車の終着駅
ビールと映画が何より大好きな日本人の友達と一緒じゃなかったら、私はそのパブに行けなかったと思う。
友達はイングランド北部に住む私の家から彼女が過去に住んだことがあったスコットランドを訪れ、その後ギネスビールの工場や「イニシェリン島の精霊」という映画のロケ地であるイニシュモア島を見たいからアイルランドに行きたいと言った。
アイルランドに着いた時入管でパスポートを見せて、入管の人が何をしに来たのかと聞いた。
「観光です」
「どこ行くの」
「ゴールウェー」
その時、突然入管の男性は私の知らない言語で話し始めた。
この人多分ゲール語で話してるのかな、と思った。
私が理解すると思って話してるわけじゃなく、からかってるんだろうけど、ゴールウェーではゲール語がまだ話されているんだろうか、と思った。
ゴールウェーは、ダブリンから乗った電車の終着駅だった。
ダブリンが始発でゴールウェーが終着。
私たちはアイルランドの東から西へとただひたすら電車で横切ったのだった。
そして前の客の汚れたシーツやゴミがそのままの部屋にたどり着いた。
幸運なことに国際電話のはずなのに、SMSがつながって、早速私は
「私たちは怒っています!」と言うショートメッセージをスマホからたたいて、このアパートのオーナーに、そこについて10分以内に送った。
すぐに「部屋5に行ってください」と言うメッセージが送られてきた。
「部屋5ってどこですか」
「私にもわからないのです」
といった支離滅裂なやりとりをした後、私たちは部屋5がすぐ下の部屋であることを発見した。
私たちのアパートはひどく狭くてひどくぼろいけれど、街の真ん中にあって、次から次へとパブが立ち並ぶ、ハイストリートから5分と離れていないことに気がついた。
私たちはひどいアパートの部屋に必要以上に長々といた挙句、やっとこさ初めて訪れた、アイルランドの果ての海のそばのゴルウェイの繁華街へと繰り出した。
アパート出た時はもうすでに8時半だった。
パブを散策したいと言う私たちの目的にはちょうどいい時間だった。
友達は、呑平らしくひたすらビールを飲むことを考えていた。
私は全然飲めないけど、イギリス人やアイルランド人たちと昔キャンプをしたときに、イギリス人と違って、アイルランドの一行だけ楽しそうにみんな歌ったり踊ったりしていた光景が忘れられなかった。
だからあのアイルランド人による朗らかな光景を見たいと言うその思いだけで、友達と8時半にアパートを出た。
もうゴールウェーの店はパブしかないんじゃないかって言う位パブばっかりで平日なのに通りは人と活気に溢れていたいた。
私たちの目当ては、アイルランド音楽が聴けるパブ。
友達の「地球の歩き方」におすすめしてある2つのパブは、すぐに見つかった。
でもどっちもものすごく人がいっぱいで、入ることすらできないほどだ。
じゃあちょっと歩いてみるかと言って、5分ぐらい歩くと、友達が別のパブを早速見つけた。
友達は耳が良くて(私は自分も耳がいいと思っていたんだけど)、
「アイルランド音楽が中に鳴っている!」とものすごくうるさい通りから叫ぶのだ。
実際音楽はどこからでも、どのパブからも聞こえてきた。
中はほとんど人でいっぱいだったけど、不思議なことになんとかスペースを確保した。
といっても、椅子もテーブルも空きはなく、地下の倉庫への、立入禁止の鎖の前の隙間を陣取った。
立ち見だけど笛とアコーディオンとギターをかき鳴らす3人の男たちを間近に見た。
(続く)
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