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魅力ある高校づくりを島根から全国へ。答えのない仕事に挑み続ける。〈後編〉

島根県全体の高校魅力化や、コーディネート人材の育成などに取り組む田中りえさん。高校魅力化のためには、学校と地域が連携して行う「コンソーシアム」の構築が大切であり、そのモデルづくりを進めています。後編では、地域・教育魅力化プラットフォーム(以下、PF)でのお仕事をさらに詳しくお聞きしました。「答えがない仕事だからこそ面白い」と話す、田中さんの思うPFの魅力とは?

【この記事の〈前編〉はこちら

▼コーディネーターの繋がりを生んでいく

ーPFのお仕事の一つに「高校魅力化コーディネーター(以下、CN)の人材育成」とありましたが、詳しく教えてください。

PFに参画したときの想いのひとつに「コーディネーター配置、育成」に関わりたいと考えていました。2014年頃、高校魅力化に関わるCNは島根県で20人ほど。全国においても高校に関わるコーディネーターは、珍しい存在でした。

隠岐島前高校の魅力化プロジェクトの牽引役であった岩本悠さんらの活躍もあり、高校魅力化を推進する鍵としてCNの存在は重要だと考えていました。ただ、財源や処遇の問題、育成システムもない中、コーディネーターの配置が一過性のもので終わってしまうのか、将来的にも仕事として成り立つものなのか、私自身も横田高校でコーディネーターをしながら、「この仕事の価値とはなにか」ともがいていました。
その後、PFに参画した2018年からは、CNの全国調査やヒアリング、また文部科学省の研究会等に事務局として関わらせていただきました。研究会の議論を経て「コーディネーター人材の配置」から、「コーディネーター機能の充実」という結論に至りました。

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変化に必要なのはコーディネートする「機能」

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そして2020年度から、コーディネート機能の充実に向けた育成プログラムの開発に関わっています。
具体的には、島根県内を対象に、コーディネート機能の充実に向けた育成プログラムの開発や研修の実施、学び合いの機会を目的とした「メンター制度」の開発を行っています。例えば、3、4年間勤める先輩CNが相談役のメンターとなり、新しく入ったCNと面談できる機会をつくりました。今年は新型コロナウイルス感染の影響で年度当初教育現場も混乱の中にありました。配置されたばかりの1年目のCNは特に不安や悩みを抱えやすかったように思います。メンターは、新任コーディネーターの悩みや課題に耳を傾け、毎月の面談を実施しています。面談を通じて、自身を振り返る機会になったり、メンター自身の成長実感につながったりしたようです。

このような育成の議論は、現場で実践するCNや、島根県教育委員会の人材育成チーム、大学関係者や人材育成領域の民間企業の方など様々な方にアドバイスを頂きながら検討し、実践しています。
また、島根大学地域教育魅力化センターが主催の地域教育コーディネーター育成プログラムコースにも4期のサポーターとして関わらせていただきました。島根県だけでなく、全国においてもCNの育成のニーズは高いと感じています。

島根大学「地域教育魅力化センター」

以前横田高校でコーディネーターとして働いていたときは、各学校の同士で声をかけあって、島根県全体のネットワークをつくっていました。今は、このような動きを島根県教育委員会と協働して行っています。まだまだ手探りな部分も多いですが、地域を超えて繋がり、情報や悩みを共有するのはCN育成にとって、すごく大切なことだと感じています。

▼地域と共に歩む高校魅力化

ー「コンソーシアム」とは具体的にどのような取り組みなのでしょうか。

魅力ある高校づくりのために、多様な主体が参画して取り組む協働体制のことを「コンソーシアム」と言います。生徒がこんなふうに育って欲しいという目標のためには、学校と地域が連携していく仕組みづくりが重要です。例えば、モデル校のひとつである県立津和野高校は、生徒の成長に向けて、高校の先生だけでなく役場や地域の人やCN、さらには卒業生した大学生など多様な人が関わっています。

コンソーシアムの形や目指すところは地域の実情によって異なります。各地域でどんなビジョンを描くのかが重要ですが、もちろん議論には時間がかかります。コンソーシアムのモデル構築や研修の場を通じて、コンソーシアムの在り方について各高校や県教育委員会と議論を重ねています。

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ー事務局ではどのような役割を担っていますか?

コーディネーターやコンソーシアムなどの事業を推進するとき、PFの立場はいわゆる中間支援的な「事務局」です。
業務としては、各事業に関する企画立案、全体調整や設計、体制議論からスタートし、その後の運用では目標に対する計画立てや、現場の状況を把握する役割があります。もちろん会議の運営、進捗状況の管理、プロジェクトの作業報告など、事務的な仕事も多くあります。また、先生やCNが困っている課題に対し、一緒に何ができるか考えたり、必要であれば地域と県などを繋げたりします。PFは縁の下の力持ちのような感じですね。

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ー私(インタビュアー山根)の高校では、CNさんと先生たちが一緒に働いていました。先生たちとは主に勉強の話をしていましたが、CNさんとは将来のキャリアや地域課題など違った話ができ、面白いと感じていました。

高校生にそのように感じて貰えるのが嬉しいです。生徒にとって先生とは違う、ナナメの関係といえる存在かもしれません。また、学校と外部を繋げるのもCNの仕事のひとつです。地域連携や県外生徒募集など、これまで取り組めなかったことに挑戦するなど、学校に異文化を持ち込む存在とも言えるかもしれません。
今は若い年代の魅力化CNが多く、1~2年目の人でも活躍の場が沢山あります。新しく入ったCNにも、この仕事を楽しんで欲しいなと思いますし、学びの機会を提供することも私の役割です。

▼答が出ない仕事、だから面白い。

ー田中さんが思う、PFの価値はなんですか。

PFは島根を拠点に活動していますが、全国の地域の高校に入学する「地域みらい留学」事業を通して、全国の学校や自治体と関わる機会が多くあります。また、松江で働くメンバーは10人程度ですが、マーケティング、広報、システム設計、ファンドレイズ戦略など教育に関わらず、様々な専門性をもつ外部パートナーが全国に約70人もいます。ビジョンの実現に向けて、様々な人たちの応援を受け仕事ができることは、とてもありがたいと感じています。

PFの仕事は、私にとって経験したことがない仕事の連続です。今年の地域みらい留学フェスタや、研修のオンライン化への全面切り替えもその象徴でした。
恐らく、他のメンバーも「答えがない」と感じながらも、果敢に挑戦していたはずです。だからこそ、みんなで知恵を絞り、どうしたら上手くいくのだろうと考えます。その姿勢が、PFの価値だと思うんです。困ったときに頼ってもらえる組織になるためには、やったことがないことに果敢に向かうしかないんだと思います。

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ーPFでのこれからの目標を教えてください。

PFで働く人たちは、同じ方向を向きつつ、それぞれが専門性をもっていて、持ち味が違います。そしてPFだけでなく、地域で生きるみんながそれぞれの持ち味を磨いていけるような社会をつくっていきたいです。そのためには、困ったときにもっと周りを頼るというのは大事かもしれません。
高校魅力化は1、2年で完結することはありません。長期戦です。ただ、答えがみえない仕事が多いからこそ、面白いとも感じます。高校魅力化に関わって7年。良くも悪くも、「ここまでいけたら達成したかな」という境界がなく、それを求め続けていくのが、私がここにいる意味な気がします。

田中りえ
大学卒業後、岡山の企業に就職した後、島根県へUターン。2017年からPFで事務局や魅力化CNの育成、コンソーシアムのモデル構築に取り組む。現在は「NPO法人てごねっと石見」の理事と、自身の会社である「株式会社MYTURN」の代表も務める。
インタビュアー/山根若菜
島根県雲南市出身、大学1年生。県外の大学へ進学後、島根の大学生コミュニティや運営に関わるようになる。現在、ルーツしまねの「しまね大学生スタートアップゼミ」で自分のプロジェクトを作成中。好きなことは文章を書くこと、映画を見ること。

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