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カスミの切り絵 #秋ピリカグランプリ2024応募

チョキチョキチョッキン、
チョキチョキチョッキン。

カスミが紙を切ると、
紙が生きてるみたいに動き出す。

チョキチョキチョッキン、
チョキチョキチョッキン。

人の形に切ればユラユラ踊り、
蝶の形に切ればヒラヒラと空を舞う。

チョキチョキチョッキン、
チョキチョキチョッキン。

魚の形に切れば宙を泳ぎだし、
ゾウの形に切れば長いお鼻を大きく揺らす。

すぐに動かなくなるけれど、
みんなカスミの大切なお友達なんだ。

チョキチョキチョッキン、
チョキチョキチョッキン。

「あら、また紙をこんなに切り刻んで。カスミは悪い子だね」

カスミが紙を切ると、ママはプンプン怒る。
それでカスミの大切なお友達を、
全部捨てちゃうの。

「バカなんだから。こんなのやめて勉強しなさい」

エーンエーンと泣いて、カスミは謝る。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

でも、カスミが謝っているのは、
本当はママにじゃなくて、
ゴミ箱のお友達たちになんだ。

チョキチョキチョッキン、
チョキチョキチョッキン。

ママはカスミが嫌いだから、
いつも怒ってばかり。
だからカスミもママが大嫌い。
パパがどこかにいなくなってから、
ママは怒ると、
カスミを叩くようになったの。

ポカポカポカリ、
エーンエーン。

「痛いよ、やめて」
カスミが言うと、
「カスミが悪い子だからママは叩くの」
ママは悲しい顔をする。

本当は外で遊びたいのに、
外は危ないからって出してもらえない。
お友達だっていたのに、
外で遊ばせてもらえないんだ。

それで泣きながら紙を切っていたら、
切った子たちが動くようになって、
それからは、その子たちがお友達になったの。

チョキチョキチョッキン、
チョキチョキチョッキン。

でもママは、カスミが紙を切ると怒るから、
カスミもママに怒ることにしたんだ。

チョキチョキチョッキン、ライオンさん。
チョキチョキチョッキン、オオカミさん。

「痛いよ、やめて」
今度は痛いのママの番。
「ママがイジワルするから、カスミはお友達に助けてもらうの」
カスミは笑って言う。

チョキチョキチョッキン、ゴリラさん。
チョキチョキチョッキン、恐竜さん。

チョキチョキチョッキン、ヘビさんに、
チョキチョキチョッキン、クマさんも。

チョキチョキチョッキン、痛いよやめて。
チョキチョキチョッキン、痛いよ痛い。

あれれ、お母さん動かなくなっちゃった。

チョキチョキチョッキン、どうしよう。
トゥルルルルルル、電話をしよう。

ピーポーピーポー、お巡りさん。
ピーポーピーポー、救急車。

「誰か怖い人が来たの?」
お巡りさんに聞かれても、
「うんうん、カスミは知らないよ」
ってカスミは言うんだ。
だって悪いのはカスミじゃないもん。

ママはいなくなっちゃった。
でもね、カスミにはお友達がいるから大丈夫。

チョキチョキチョッキン、お友達。
チョキチョキチョッキン、あれ動かない。

チョキチョキチョッキン、なんでだろう。
チョキチョキチョッキン、一人はやだよ。

チョキチョキチョッキン、
チョキチョキチョッキン。

(本文1,199文字)

お納めくださいm(_ _)m


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