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bunsho369
ドローンの課長 #毎週ショートショートnote
蜂屋稔は中小零細企業、荒屋田食品の経理課長である。
今年で42歳中堅社員。ポストの少ない中小企業にあっては順調に出世をしてきたと言える。
蜂屋の特技は「監視」だ。
最小限の人員で業務を行う環境の中で、時間や資源を無駄にする余裕などない。残業も極力させず、如何に効率的で生産性の高い業務を行うか。そして売上を作る事業部の負担を軽く出来るか。そんなことばかり考えていた。
しかしながら、常に課内をウロウロし、業務を監視されている部下はたまらない。
「課長って人間ドローンだよね」
狭い社内である。そんな噂をされているのは蜂屋本人も知っていた。若手とのコミュニケーションは不得手で、女子社員との距離感には特に苦慮していたが、悩んだ結果一つの案を行動に移した。
ダンボールで作成した手作り感満載のドローンに、マジックでドローン課長とモロに書いた。それを頭にかぶり、課内をウロつくのだ。
冷めたい視線も感じたが、笑顔で話し掛けてくれる女子社員もいた。
新しい扉を開けた蜂屋は概ね満足だった。