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mikitanishi3
迷宮入り #毎週ショートショートnote「鋭利なチクワ」
「死因は失血死だそうです」
俺は先輩と二人、殺人現場に向かっていた。
「失血死か」
「はい。現場は血まみれだと連絡が」
「そうか。凶器は見つかってるのか」
「はい。鋭利な…」
「刃物か。マル害の家だったな。包丁か、ホシがナイフを持ち込んだってとこか」
「いえ」
「なんだ違うのか」
「鋭利な…」
「鋭利な?」
「チクワだそうです」
「お前ふざけてる場合じゃねぇだろう」
「それは俺に言われても。俺も報告受けた時はふざけるなって言いましたよ」
微妙な空気の中、俺たちは現場に着いた。部屋には心臓をチクワで一突きされた被害者が横たわり、辺りには大量の血が飛び散っていた。
「チクワ…だな」
「チクワ…ですね」
あまりにもシュールな光景だが、受け入れざるを得ない。
「凍らせたチクワの先端を削ったらしい」
鑑識がそう言った。
「チクワを?」
「えぇ。チクワを。鑑識人生で初めてだ、こんな屈辱的な凶器は」
「穴があったら入りたいってとこか」
「…。」
現場に冷たい風が吹いた。