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こゆびくんと赤い糸

こゆびくんのご主人は、
とっても怖いおじさんでした。

ある日おじさんは仕事を失敗して、
おやぶんにこゆびを切られました。

ドンッ
コロコロコロコロ

こゆびはコロコロころがって、
手足が生えて、
こゆびくんになりました。

おじさんはこゆびくんをおいかけたけど、
こゆびくんは怖くてにげました。

たどりついたのは、おじさんがうまれたおうち。
でも、もうそこはあきちでした。

こゆびくんは泣きました。
うまれたおうちは、もうありません。

こゆびくんはおじさんと
ずっといっしょに大きくなりました。

パパとママはいつもけんかばかり。
パパはときどきママをぶって、
ママは泣いていました。

そのうちパパはどこかに出かけて、
そのまま帰ってこなくなりました。

ママは仕事がいそがしくて、
ひとりぼっちの日がふえました。

おじさんは良いことと悪いことが
わからないまま大きくなって、
ともだちをぶったりけったり
するようになりました。

でも、知らなかったのです。
自分が悪いことをしてるって。
だってパパがやってたし、
ママも教えてくれなかったから。

いろんな悪いことをしているうちに、
ともだちも悪い人ばかりになりました。

ナイフにピストル、くすりやたくさんのおかね。
おまわりさんにもつかまりました。

そんなおじさんにも
好きな子ができました。

名前はみきちゃん。
みんなはおじさんを怖がるけど
みきちゃんは怖がりません。
話を聞いてケタケタ笑う顔がかわいくて、
おじさんはみきちゃんを好きになりました。

おじさんはみきちゃんに
好きだと言いました。
みきちゃんはおじさんに
悪いことをやめてほしいと言いました。

おじさんはそれではじめて
自分が悪いことをしてるって知りました。
悪いことをやめたいと思いました。

でも、おやぶんからは
また悪いことをするように言われました。

悪いことをやめたいのに、
みきちゃんが好きなのに、
どうしたらいいんだろう。

そしておじさんはわざと仕事を失敗しました。
それでこゆびを切られたのです。

おじさんは泣いていました。

こゆびくんも泣きながら、
おじさんを思いだしました。

その時こゆびくんは、自分のからだに
赤い糸がまきついていることに
気がつきました。

糸はどこかにつながっています。

こゆびくんはおじさんを探しました。
走って走って
泣いているおじさんを見つけました。

おじさんはこゆびくんを見つけると、
泣きながら笑ってよろこびました。
すぐにお医者さんに行って、
こゆびくんをくっつけてもらいました。

おじさんは嬉しくて
またたくさん泣きました。
その涙が赤い糸にたれると
糸がピカピカと光りはじめました。

おじさんは糸がつながってる方に走りました。
走って走って
やっとつながっているところがわかりました。

そこにいたのはみきちゃんです。

おじさんはみきちゃんに
泣きながら好きだと言いました。
みきちゃんも泣きながらにっこり笑って、
うんと言いました。

おじさんはまじめに働いて、
みきちゃんとしあわせに
すごしましたとさ。


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