第十三回誤字送信審査委員会 #毎週ショートショートnote「誤字審査」
都内某所、株式会社アルバトロスの会議室では、第十三回誤字送信審査会が行われていた。その年の誤字送信の中から、最も優秀な物を表彰するのである。
「最優秀賞に選出したのはこちら、営業部有馬係長の『至急ご変身ください』です。この『ご変身』自体は珍しくないのですが、これを受けて鹿野部長が「ウチにウルトラマンはいねーぞ」ととんちの利いた返信をしたと。元は得意先からのクレームに焦った有馬が鹿野に送ったメールでしたが、こちらも誤ってccに入っていた得意先の担当がこのメールを見て、「面白かったからもういいや」とミスを許していただけたと。その一連の流れまでセットで選出しています」
審査員である総務部の白石部長が説明する。
「ミスが2つも重なっていて褒められた物ではないが、結果としてそれを挽回したというストーリーも含めて秀逸だな」
審査委員長の坂田社長が言った。
そして有馬と鹿野には賞状が送られたが、2人とも素直に喜ぶことはできなかったという。