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風が吹けば桶屋が儲かる #毎週ショートショートnote『風を治すクスリ』

「最近全く売れやしねえや、まいっちまうな」
桶屋が愚痴をこぼす。

実際このところ、何事かあったかのように桶が売れない。しかし理由もわからず、桶屋は愚痴ることしかできないのである。

「ヘーックシュッ!」
他方天上界では、風を司る神シナツヒコが体調を崩し、ここしばらく床に臥せていた。
「これじゃあ風を吹かすこともできねえや、下界の民が困っちまうな」

見かねた妻のシナトベが、薬屋を探して下界に降り、改源を買って来た。
「これ、アンタの絵が書いてあるよ。きっと効くに違いないね」
実際飲んだらあっという間に風神全快だ。景気付けにブーンブーンと風を吹かせた。

すると下界にゃ砂ぼこりが立ち、その砂で目を傷める人が増えた。目の不自由な人は三味線を弾くから、三味線に張る猫の皮が不足する。猫が不足すればネズミが増えて、結果あちこちの桶がかじられた。

「なんだか急に桶が売れるようになったな」
桶屋は目を丸くした。

「風が吹けば桶屋が儲かる」の語源である(嘘)。


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