霧中の先 #シロクマ文芸部「霧の朝」
霧の朝、目を細め、
一歩一歩足下を確かめながら、
歩を進める。
進む程に霧は濃くなり、
やがて足下も見えなくなった。
私は今、自分が何処にいるのかわからない。
手を伸ばし、何か触れる場所は無いかと
探ってみるが、どうやらそれも叶わない。
その手は、ただただ空を切るばかりだ。
しかし、歩みを止めるわけにはいかない。
一歩ずつ、前に進むことしかできない。
そこに選択肢は存在しないのだ。
歩く、ただひたすらに。
どれほど歩いただろうか。
真っ直ぐに歩けているのかいないのか、
それすらもわからない。
途中、小さな出っ張りに足を取られそうになったが、なんとかバランスを保った。大きな壁もあったが、必死の思いで乗り越えた。
その都度、大なり小なり達成感は得られたが、それも長くは続かない。瞬間的、刹那的な喜びだ。
私は歩く、ただひたすらに。
辛くても、苦しくても、前に進むことしか許されない。
この先に何が待ち受けているのか、
何処へ向かって歩いているのか。
辿り着くまで、きっとわからないのだろう。