隊長職変死の椅子 ♯毎週ショートショートnote裏お題
「バーバ、この汚ない椅子なーに?」
3歳の孫、ロンが祖母メイに言った。
「昔ね、この国の王様が使っていた椅子なのよ。お祖父様の大事な形見なの」
メイは微笑みながら言ったが、形見の意味がわからないロンはポカンと口を開けていた。
今から40年前、東の山岳地帯に位置する王国ドグルと、メイ達の住む南の海辺の王国マグリは、3年におよぶ戦争を繰り広げていた。
劣勢のマグリは起死回生の策として、ドグル最強の戦士エドを罠にかけた。
エドがマグリの王室に辿り着いた時、その椅子に座っていたのは王に扮したメイの夫であり、騎士隊長のキウだった。
勇猛果敢にエドに挑んだキウだったが、エドの豪剣に屈し、王の椅子の上で息絶えた。
だが、罠にかかったエドはマグリ軍に生け捕られ、戦況は逆転。その勢いに乗じ、ドグルを攻め込み勝利した。
終戦後、マグリ王はその栄誉を讃え、王の椅子をキウの息子サクに与えた。
「ニャーオッ」
王の椅子も、今では飼い猫ポーの恰好の寝床となっているそうだ。
↓こちらに参加。