杏は祈願上手 #毎週ショートショートnote
「杏も最後の七五三だねぇ」
母が言うと、
「うん!」
杏は元気に返事をした。
今年七歳になる杏は、赤い着物を着て、ママとパパと一緒に神社にお参りに来ていた。
「杏は赤が似合うなぁ」
父が言うと、
「パパありがとー」
杏は笑顔を返した。
あちこちで何枚も写真を撮られ、祈祷というよくわからない儀式に参加する。
そんな時間を過ごす中で杏の楽しみはと言えば、千歳飴と出店だけだ。
「せっかくだから神様にお願いしようか」
母が言うと、
「うん」
杏は元気に返事をした。
お賽銭を入れ、両親の真似をして神様にお願いをする。
「何をお願いしたの」
父が聞くと、
「うんとねぇ、みんなずっと仲良しが良いって言ったよー」
杏はそう返し、両親は喜んだ。
すっかりご機嫌な両親にわたあめやりんご飴を買ってもらい、杏もご機嫌だ。
本当は杏がお願いしたのは「おいしい物が食べたい」だった。
「祈願上手だね」
神様が言うと、
「うん!」
杏は返事をし、両親はニコニコしながら杏の頭を撫でた。