地獄の沙汰も… #毎週ショートショートnote『友情の総重量』
「次の方どうぞ」
案内係に呼ばれ、ドアを開けるとそこには閻魔大王が座っていた。想像していた鬼のような容姿とは違い、痩せていて髪はオールバック、リムレス眼鏡をかけた神経質そうな男性。
「薄井幸男さんですね」
「はい」
「キミ、友達少ないね」
何を薮から棒に。
「そっ、そんなことは…」
「私に嘘がバレないと思ってます?」
相手が悪かった。実際友達はほとんどいない。
「そうやってすぐに嘘ばかりつくからですよ」
「えぇ」
「キミの友情の総重量はね…」
「…。」
僕は思わず生唾を飲み込む。
「5グラムです」
カルテのような物を見ながら閻魔が言った。
「5グラム…ですか」
「そう。日本人の平均は100〜200グラムなのでね、かなり低い」
そう言われてもピンと来ないが。
「まぁ結論、誰からも信頼もされてないし誰も悲しまないので、キミは地獄行きです」
閻魔が淡々と言った。
そして僕は抵抗虚しく両脇を抱えられ、地獄への扉に連れて行かれ…
という夢を見たので、今日からは友達を大切にしようと思います。