13. 歩みのリズム
歩幅を大きく ずんずん歩くのが好きだ。
向かっている方向へ、あまり何も考えずに一歩一歩 進む。
歩きながら よく歩数を数える。一足ごとに増えていく数に小さく喜んでいると 興味をひく何かが膨らんだ数をさらってゆく。
散歩する人と犬のやさしい雰囲気
打ち捨てられた空きカン
真夏の日差しがつくる影の形
イラストの配置で紫陽花にいるカタツムリ
蜘蛛の糸が空中に留める木の葉
強い風に散らされた花や葉の絨毯
人間の気配にあわてて隠れるキジの親子
倒木にできた白キクラゲ
グラデーションに並べて干された洋服
心のこもった手入れに応える薔薇のお庭
気持ちが歩みに戻って、また歩数を数える。それが何度目になっても、100をこえてしばらくすると
今度は 歩くことだけに集中できてしまいすぎて、数は薄れて消えてしまう。
ずんずん ・ . ・ . てくてく * * * * たったっ * * * * * * * * ・ . ・ . ・ . ・ .
足を地面に降ろしては蹴る 繰り返しのリズムだけが満ちてくる。
よく知っているリズム . . .
何の . . .
お、心臓が脈打つリズム・ . ・ . ・ . ・ .
自分の胸に耳はあてられないけれど、
生まれる前から休まず全身に響き続けている自分だけの音楽。
すごい発見をした気になって、歩くことがより一層好きになる。
歩数を数えて 何かを見つめて 少し考えて また数えて 見つめて 何かを思って 身体の内の音と一緒に 一歩一歩。
流れにまかせて繰り返していると、歩き始めた時には見えてさえいなかった目的地に到着。
自分の身体だけでどこかへ行ける 魔法みたいだな と真剣に感動する。
このリズム、走ったら脈ははやくなって その時の足音に添ってくれるんだろうな と想い描くと、頼もしく
軽やかに走り出せそうな、明るい気持ちになれた。