匂いと共通のイメージ

匂いは見えないしさわれないし、実体のないものだけど確実にわたしの感覚に訴えかけてくる。

わたしには好きな匂いがたくさんあって、それは名前がついているものもあれば名前がよくわからないものもある。涼しい風の中で感じる草の匂いとか海の匂い、花の匂い、クロエのラブストーリーの香り、ムスクの香り、オレンジの香り、とかとかね。

なんという香りなのかはわからないけれど、わたしには感傷的になる香水の匂いがある。結構キツめでちょっとチャラチャラしたタイプのひとがつけているイメージなんだけど、その匂いにはなにか思い入れがあるわけでもないのに鼻の奥から肺に入ってわたしの呼吸を一瞬、止める。

夏の匂いといえばなんだろうか。スイカの匂い?草の匂い?蚊取り線香の匂い?プールの匂い?きっとどれも夏の匂いとして納得できるものなんじゃないかと思う。蚊取り線香の匂いが漂ってきて「夏だね〜。」って言うの。みんなの共通の夏の匂い。

蚊取り線香の匂いで夏を感じるのと同じように、特定の香りで共通のイメージが浮かぶものって他にもあると思っていて、最近みつけたのが「彼氏の匂い」というものだった。

なんでも友人のハンカチの匂いが彼氏の匂いだとか元彼の匂いだとか言われているらしく、わたしはそれを嗅いだことがないからあまりイメージが湧かなかったんだけど友人の使っている洗剤を知って「なるほどね〜」と納得してしまった。わたしにはとある洗剤で選択された服を見分けることができるのだけど、彼が使っていた洗剤はまさしくそれだったのだ。それは以前わたしが付き合っていた人が使っていた洗剤でもあった。

なぜそれが彼氏の匂いなのか、きっとその洗剤を使っているひとが多いから誰もが経験したことのある匂いだったのでは?という話をしていたのだけど実際のところはどうなんだろう。
蚊取り線香の匂いで夏が思い浮かぶように、その洗剤の匂いで彼氏を思い出す。その友人のハンカチの匂いは知らないけれど彼氏の匂いといわれてイメージができる。清潔で切なくて安心感のある匂い。

匂いの鼻から直接脳に届いてくらくらするかんじが好きでもあり苦手でもある。不意打ちで入ってきた匂いに心を揺さぶられるのがこわい。だけど大好きなひとの匂いはめいっぱい吸い込んで安心と幸せで満たされたい。

わたしはいま香水が欲しいなと思っていて、それはわたしの匂いっていうのをつくってみたいから。この匂いはあの子だ、みたいな。なかなかしっくりくる香水がなくてシャンプーやヘアオイルやボディミルクや普段使っているもののかすかな匂いが混ざり合った匂いがいまのわたしの匂い。それも悪くはないけれどもう少しだけ、はっきりとしたわたしの匂いがほしい。その匂いでわたしをイメージしてほしい、なんてね。

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