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仲間を信じろ「ラブライブ!スーパースター!!」肯定論:その3

2期の物語 #3

第2話で、優勝を目指す先輩を目標にしたきな子。
入部を決めた彼女が、Liella!としてステージに立つことができるのかが、第3話の焦点の一つです。
それと並行して、前回の最後に姿を見せた謎の少女こと、ウィーン・マルガレーテがLiella!の前に立ちはだかります。
かのんとマルガレーテの対決も2期の見どころになっていきますが、前半ではあまり表面化しません。
それよりも、Liella!に新入生を加入させることと、優勝を目指すことの問題の方が前半では大きく扱われます。

※ウィーン・マルガレーテをどう呼ぶかについての問題ですが、公式サイト等では当然名前呼びの「ウィーン」と呼ばれています。
しかし、本編中では彼女のことを「ウィーン」ではなく「マルガレーテ」と呼ぶことが多かったで、ここでも「マルガレーテ」とあえて書きます。

1年前、かのんと可可が出場した「YOYOGI School Idol Festival」にLiella!は招待されました。それも出番は最後ということで、大トリを任せられたということであり、主催者側からも大きく期待されていたのでした。
前回優勝したSunny Passionが最後の学園祭ライブに向けて準備をしているので、彼女たちが出場していないのも理由の一つです。
ここでSunny PassionがLiella!と対決する展開にしなかったということは、
2期ではSunny PassionはLiella!の倒すべきライバルであると考えていないことが分かります。
これがどういうことはかは、話が進んでからまた考えを述べたいです。
(多分、第9話あたり)
フェスのトリということで、千砂都はLiella!がラブライブ!の優勝候補として見られていることを口にしますが、かのんはその言葉に反応してしまいます。まだLiella!が大会で勝ったことがなく、結果を残していないことを気にしているのです。
その晩、かのんはSunny PassionにどうしてLiella!が「一番心踊るグループ」だとインタビューで答えたのかを聞きます。Sunny Passionはスクールアイドルを始めたばかりのことや、結果が出ていないことは関係なく、単純に素晴らしかったからと答えます。
それを聞いて嬉しくなるかのんですが、

悠奈
「ただ・・・。私たちは、それでも負けないけどね」
摩央
「私たちね、もう一度、優勝したいって思ってるの」
悠奈
「知ってる?ラブライブ!の歴史上、連覇を成し遂げた学校は1つもない」
摩央
「もし成し遂げれば、Sunny Passionの名前は、ラブライブ!の歴史に深く残っていく。学校の名前も、島の名前も」
悠奈
「もちろん、とても高い壁だというのは分かってるけどね」
かのん
「そんなすごいことを目標にしていたんですね・・・」
摩央
「えっ?」
かのん
「私、応援します!」
悠奈
「それはとっても嬉しいけど、いいの?」
摩央
「私たちが連覇するってことは、あなたたちが負けるってことになるけど・・・」
かのん
「うえ・・・」
摩央
「ラブライブ!でまた会いましょう」
悠奈
「待ってるよ!」

「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第3話

Liella!のことを褒めたと思ったら、自分たちも負けないと強く意気込むSunny Passion。優勝を目指す彼女たちの覚悟を見て、少し怖気ついてしまうかのんの様子を見ると、かのんには、まだ優勝を目指すことへの迷いや抵抗があることが分かります。逆に言えば、それだけSunny Passionの学校や島にかける想いも強いということです。
Sunny Passionから刺激を受けたかのんは、練習にまた熱を入れます。
そして、きな子も朝や夜の練習を継続して行なっており、クラスの子から「スクールアイドルってステキだね」って言われたことをかのんに伝えます。かのんはそのことをすごく嬉しく感じ、「一生懸命やっていれば、その姿はちゃんと伝わる」ことに、きな子と一緒に喜びます。
第2話のきな子の情熱は間違いではなかったのです。
放課後、ダンスの基礎がばっちりになったきな子を見送ると、かのんは千砂都に胸の内を明かします。

かのん
「ねぇ、勝てるかな。私たち」
千砂都
「不安?」
かのん
「ちょっと・・・。やっぱりSunny Passionさんや、学校のみんなの話を聞いてると、結果出したいなって。期待に応えたいなって・・・。」
千砂都
「分かるよ」
かのん
「私ね、ラブライブ!のステージは、本当にステキだったと思うんだ。全員で1つのステージを作り上げることができた」
「でも、終わったあとにあったのは、もう少しだったとか、残念だけどしかたないとか・・・。そういう思いばっかりで・・・」
「だから、みんなで喜ぶには勝つしかないんだって」
千砂都
「そう考えると大変だよね。ラブライブ!って」
かのん
「でも、そうやって、いろんなグループと競い合って、1つのものを目指して高め合っていくのは楽しい。すごくワクワクする」
千砂都
「ふふっ。それでこそ、かのんちゃんだ」

「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第3話

ここで注目したいのは、対かのん用ヒューマノイド型カウンセラー機体CHISATOの活躍ではなく、かのんの心情です。
第2話のきな子との会話では、1年生にスクールアイドルの楽しさを知ってほしいといって、優勝を目指すことと同じぐらい大事だと語ります。この千砂都との会話シーンでは1期第12話で経験したことを言葉にしています。
あの時「みんなで喜ぶには勝つしかない」と思ったかのんですが、1つのものを目指して頑張ることは楽しいし、ワクワクすることだとも感じています。
この2つの気持ちで、かのんの心は揺れ動いていることが、この場面からも分かります。
フェス当日は結ヶ丘の生徒も入れなかった子がたくさんいるぐらい人気でした。緊張するかのんですが、自分たちのやってきたことを信じてステージに臨みます。
しかし、圧倒的な歌声を響かせたマルガレーテが優勝を飾り、Liella!は特別賞を受賞するにとどまりました。自分のせいだとまた責任を感じるきな子を、かのんと可可とすみれは励まします。優しい。
元気を出したきな子の陰で、かのんは学校のみんなにまた気を使わせてしまったことと感じます。
そして、かのんの元にマルガレーテが現れ、Liella!が優勝候補のラブライブ!は大した大会ではないと言い放ちます。かのんもラブライブ!のことはすごい大会と言い張りますが、自分たちのことは優勝候補ではないと弱気です。
打倒マルガレーテに向けて気合を入れる他の面々と違って、かのんはLiella!が優勝を目指すことに疑問を持つようになりました。学校のみんなの期待を背負いながら、優勝候補として負けることの辛さに耐えきれなくなります。
しかし、そこに学校のみんながやってきて、

ナナミ
「かのんちゃんたちは、自分たちのことをまだまだって思ってるかもしれないけど」
ココノ
「この学校の生徒にとっては、誇りなんだよ、自慢なんだよ」
ヤエ
「Liella!は、この学校の・・・スーパースターなんだよ」
かのん
「私たちが・・・」
きな子
「スーパースター」
ココノ
「このことは忘れないでほしい」
ナナミ
「私たちは、いつも誇りに思ってる」
ヤエ
「いつか、一番輝くって信じてる」
ナナミ
「だから・・・これからも優勝を目指してほしい!」

「ライブしましょう!」
かのん
「えっ?」

「場所は決まり!ですよね」
かのん
「うん!」

「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第3話

Liella!が結ヶ丘のスクールアイドルであること、それ自体がスーパースターであることをみんなで確認します。そして、そんなスクールアイドルの原点に戻るために(ついでにフェスに来れなかった人のために)
「Liella!ありがとうLive!!」を開催することを決めます。
かのんはこのライブでは、センターを無しにして、結ヶ丘の生徒や学校全部がステキになことをその気持ちに込めます。
ライブの演出も、正面が存在しないセンター上のステージをカメラが回ることで、そのことを表現しています。物語の内容と曲の内容だけでなくライブの演出を一致させることも、1期から続いて「ラブライブ!スーパースター!!」を評価できる点だと思います。
生徒の歓声に包まれてライブが成功に終わると、きな子は楽しそうな笑顔をかのんに向けます。なんとも微笑ましいシーンですが、この先の物語にとって大事な場面だと思います。
かのんを救ったのは確かに学校のみんなからの想いですが、個人的にはこのきな子の笑顔はそれ以上だったと思います。かのんにとって、1年生と一緒に楽しくスクールアイドルを行いたいと思っていました。
でも、そのためにきな子に大変な練習を強いることになってしまいました。
練習を一生懸命にこなして、周りからの理解を得ることに成功しましたが、
フェスで結果をまた残すことができなかったことで、きな子にはさらに辛い思いをさせていました。そのきな子がライブを通して、笑顔になれたことはかのんにとって、決して小さくない意味を持ちます。
自分たちがラブライブ!の優勝を目指すことだけがLiella!が歌う意味の全てではなく、学校のみんなで作り上げることの大切さとその意味をかのんは改めて実感しました。
そして、スクールアイドルを知らなかった1年生の少女と一緒に楽しいステージを作れたことは、かのんがこの第3話以降、積極的に1年生を勧誘することと無関係ではないと思います。きな子が笑顔になれたことによって、目指すスクールアイドルの形にかのんは自信を持てるようになったのです。
Lilla!は優勝を目指すことは今までと変わりませんが、結ヶ丘のみんなを笑顔にすることをより意識するようになり、優勝のプレッシャーから一時的ですが解放されます。

ここまでを自分は2期の序盤と考えていて、第4話以降からは雰囲気も序盤と比べて柔らかくなり物語として安定した中盤に入ります。
第3話まではかのんと同じぐらいの頻度で登場してきたきな子も、物語が一旦落ち着いたことで出番自体はやや減ります。
「ラブライブ!スーパースター!!」の主人公はやはり澁谷かのんなのです。

2期の物語 #4

4話はメイと四季がLiella!に加入するエピソードです。
それだけ見ればメイと四季にスポットライトを当てた、いわゆる担当回ですが千砂都が部長になったりするシーンもあって、それだけではありません。
メイと四季以外のキャラクターや要素についてもここでは考えてみたいです。

ライブを成功させたことで、感銘を受けた新入生の中にはLiella!に興味を持つ人も出てきました。まだLiella!は部員を募集しているようです。ですが、メイはスクールアイドルが大好きなのに、なかなか素直になれず入部しようとしません。
一方、部活動が増えたことで部長会が開かれることを受けて、誰を部長にするかを話し合うLiella!のメンバー。かのんは周りから部長を勧められますが、かのん自身はあまり乗り気ではありません。
それを遠くから覗いているメイに四季はなぜスクールアイドル部に入らないのかと尋ねますが、メイは自分は入るつもりはなく四季のことも心配しているからと答えます。
そして、新しくなろうとしているLiella!の部長が誰が良いのかについて、話し合っているかのんと千砂都の元に、四季がやってきます。

四季はスクールアイドル部に体験入部して、その様子をメイに見せつけることにしたのです。きな子以来の新入生とあって嬉しくなるLiella!を見ると、新入生を加入させることの迷いはもうないようです。
Liella!と一緒に練習する四季を見て慌てたメイは急いで屋上に向かいますが、そのことがバレると怒って帰ってしまいます。四季が自分のためにスクールアイドルに興味もないのに練習に参加したことをメイは気にしてしまったのです。
そんなメイを理解してもらいたくて、四季はLiella!のメンバーをメイの家まで案内します。メイがスクールアイドルが大好きなこと、メイの目つきが悪いことが誤解されていることを説明しますが、四季はメイのことを友達かどうかはっきりと答えることができません。
メイとの出会いを四季が語る中で、メイが結ヶ丘に入学した理由はスクールアイドルをやってみたかったから、Liella!がいたからと伝えます。千砂都に体験入部をした理由がメイだけのためなのかと聞かれると、四季はここでも上手く答えられません。メイがスクールアイドルに入部しない理由の一つに、科学部にいる四季を一人にしたくないからと指摘されても四季は納得いきません。

そして、帰り道に待っていたメイが四季にどうするつもりなのかと聞くと、四季はメイに素直になれば良いと言います。お互いが相手のことを気にしていますが、肝心の自分の気持ちには正直にはなれない二人。
素直になれないメイに怒って、四季は科学部に来ないでほしいとつい言ってしまいます。
そんな二人を見ていた千砂都は「向いてない」というメイの言葉に反応して、かのんに昔励まされた経験を思い起こします。自分にできないと決めつけるのは良くないと、千砂都はスクールアイドル部の部長になることを決めます。
勇気を出した千砂都の姿を見たからか、かのんもメイを励まそうとします。
メイと四季が似た関係なように、かのんと千砂都も昔からお互いを刺激しあう関係なのです。かのんは二人が恥ずかしがり屋で寂しがり屋で似たもの同士だと指摘して、メイと四季がお互いに好きなこと、そして四季もメイと同じようにスクールアイドルが好きなはずだと伝えます。
(遠回しに四季も誘ってこい)

科学室でお互いの気持ちを確認しあった(変な意味ではないです)
メイと四季は、二人ともスクールアイドル部に入部することになりました。
屋上でライブ前の掛け声(千砂都いわくおまじない)をメイと四季も加えて行うことで、このエピソードは終了します。第2話の最後でもこの掛け声行いましたが、ここでもしっかりと行うことで、Liella!の一体感を感じます。
また、第2話ではラブライブ!優勝を謳っていましたが、ここでは

かのん
「結ヶ丘女子スクールアイドル部Liella!」
「これからも、もっともっとたくさんの人に歌を届けよう!」

「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第4話

と少し変化しています。
この違いから、第3話を経たかのんの心境やLiella!の現状が、優勝よりもみんなのために歌うことにより重きを置いていることが見て取れます。

2期の物語 #5

第5話では最後の新規メンバーである夏美がLiella!に接触をはかってきます。
また1年生が3人に増えたことで、2年生との関係性もここでは再度描かれていきます。

部室も拡大し練習にも変化が出てきたLiella!。
四季はダンスが得意で、メイはピアノの経験があり、きな子は歌詞をノートに書き留めており、1年生がそれぞれの分野で長所があることが明かされますが、3人は2年生との差を感じており自信を持てませんでした。
少しづつ頑張れば良いと励ます2年生ですが、1年生には焦りがありました。
そこへLiella!の人気をかぎつけた夏美が現れます。
1年生への人気が出たことを喜び、9人目のメンバーかと思われましたが、夏美の目的は入部希望ではありませんでした。夏美は自身の動画配信を用いて、Liella!を宣伝・プロデュースしたいと相談しに来たのでした。

夏美に宣伝を任せれば練習に集中できると、話は前向きに進みます。
すみれは契約の内容に疑問を持ちますが、かのんは自分たちはお金儲けが目的ではないからと、夏美の提案をあっさりOKしました。
早速、動画作成のために可可の家でLiella!のメンバーが遊んでいる様子を撮影することになりました。大富豪で楽しく遊べると思いきや、どうやらが人数が多くてあまり盛り上がりません。
そんな中、恋がゲーム機を見つけて興味を持ちます。
そして恋、きな子、千砂都、メイの4人はゲームを楽しむのでした。
ゲームが1年生と2年生の仲を近づけるアイテムとして、ここでは描かれています。Liella!がゲームで遊ぶ展開は第7話でも再び登場しますが、ゲームはネガティブな側面だけでなく、ポジティブな側面も主張されていることは忘れてはいけないと思います。

普段は知らない2年生の普通の姿を見たことで、親近感が湧く1年生の3人ですが、それでも練習はキツく、その差が大きいことには変わりありません。
また夏休み明けには地区予選が始まるので、練習もより力が入ってきます。
前回優勝のSunny Passionが今年も出場するので、それに勝つために厳しい練習を夏休みの間は毎日行うことを計画します。
しかし、地区予選の前には学園祭もあるので、もう一曲分の練習をしなければならず、1年生には負担が大きくなることを危惧して、2年生だけで学園祭のライブを行うことも考えますが、かのんはLiella!全員で歌うことにこだわります。

かのん
「それはダメだと思う」
きな子
「かのん先輩・・・」
かのん
「だって、この8人でLiella!になったんでしょう。学校のみんなの前で歌うんでしょう。みんな、それをを楽しみにしてると思うんだ」
千砂都
「私もかのんちゃんに賛成かな。できる範囲でいいから、頑張ってやってみない?」
かのん
「完璧じゃなくても、いいと思うの。大切なのは8人で学校のみんなに歌を届けるってことだと思うから」

「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第5話

かのんと千砂都の考えを聞いて、1年生の3人は学園祭のライブも目指して練習することを決めます。1年生と2年生の関係性をこの場面から把握した夏美ですが、すみれは彼女のことを警戒していました。
そして、夏美にLiella!を利用して動画の収入を得たいだけなのではないかと、すみれは詰め寄ります。四季もすみれに加勢したことで、周りのメンバーも一気に夏美に不信感を持つようになります。
立場が危うくなった夏美は耐えきれずにその場から走り去ってしまいます。
そのことを後から知ったかのんですが、夏美を見限るのはまだ早いとすみれを説得します。
1年生も夏美のことは決して嫌いとは思っていません。
夏美にさっきの件は気にしていないことを伝えますが、メイたち3人は動画の公開が続くことで、動画を見たファンが2年生と1年生で実力に差があることを分かってしまうのでは、と不安になります。
夏美も3人を心配する目で少し見ますが、そんな1年生と自分のために夏美はあることを思いつきます。

そして、3人は2年生に夏休み中は別行動をしたいと言い出します。
2年生に原因があることを気にしてめちゃくちゃ心配になるかのんに、1年生は2年生に迷惑をかけずに自分たちを見つめ直したいと説明します。
いつもはかのんに同意することが多い千砂都ですが、ここでは珍しくかのんに反対して1年生の肩を持ったことで、めでたく1年生は別行動の許可を得ることに成功します。
屋上でLiella!の分断に成功したと上機嫌に喜ぶ夏美を最後に映して、このエピソードは終了します。(なお次回で開幕から否定され失敗します)

こうして第5話を振り返ると、夏美がLiella!を掻き回す話ではありますがそれだけではなく、1年生と2年生の実力の差にも焦点が当てられ、その関係性が再度問われている話でもあることが分かります。

余談:細かい演出

今回はこの辺りで終わります。
疲れたので、少し余談をしたいと思います。
こうして各話をじっくり振り返ると、今まで見えてこなかった点も新しく分かるようになりました。特に「ラブライブ!スーパースター!!」独特のテンポ感や流れるようなシーン展開についてです。
「ラブライブ!シリーズ」でよく見られる、特徴的なカットのつなぎ(トランジション)がその一因だと自分は以前から考えていました。
例えば、葉っぱや花びらが画面全体を覆ったり、登場人物がカメラの前を横切ったりといったトランジションの方法などです。他にも特徴的なものとして、画面を横に高速でスライドさせるといった方法も毎回のようにあります。
今回気づいたのは、カット間で見られる画面の動きや処理ではなく、話や言葉の流れに関するものです。感じたのは、全体的にシーン終わりの余白がない、もしくは極端に少ないことです。もう少し説明しようと頑張れば、あるシーンの始まりが前のシーンの終わりに配置されていることです。

メイ
「私たちが思ってるだけで、そんなに差は」
「やっぱり、ある・・・」

「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第5話

上の場面は、自販機の前でのメイの言葉を受けて、学校の屋上で1年生が練習終わりに倒れるといったシーンに繋がります。全てのシーンが上のような言葉の繋ぎだけでシーンが変わるわけではないので、例としては少し極端かもしれませんが、これによって、場面展開がスムーズになり、いちいちキャラクターが移動したことやシーンが変わったこと関する説明を極力しなくて済むようになっていると思います。
そして、第5話を場面ごとに列挙しますと、以下のようになります
(左はシーンの場所、右はシーン終わりの出来事です)

01 前回のラブライブ
02 1年生のクラス:夏美がLiella!の人気に気づく
03 OP
04 部室:千砂都、練習メニューをリニューアル
05 屋上:メイの特技について
06 音楽室:2年生が1年生を励ます
07 街中:夏美、Liella!に近づくことを決める
08 部室:夏美、契約書を見せる
09 可可の自宅:メイ、2年生と差がないかも?
10 屋上:かのん、1年生を心配
11 夏美の部屋:夏美、腰を痛める
12 アイキャッチ
13 屋上:千砂都、夏休みの練習予定を持ってくる
14 部室:すみれ、夏美を警戒
15 公園:かのん、夏美が走り去るのを目撃
16 学校:すみれ、かのんの考えを断らず
17 街中:夏美、メイを脅かす
18 街中:夏美、3人に提案
19 部室:夏美、中の様子を覗き見
20 屋上:夏美、雄叫び
21 ED

全体を見ても次のシーンに行く前に、そのシーン終わりで次のシーンの始まりに繋がる言葉を紡ぐ場面が多いです。この場合ですと、04→05→06→07→08→09→10、13→14、14→15→16→17→18→19→20です。
少し特殊なのは14→15です。
ここでは学校の部室から屋外の公園に場面が移り変わりますが、既に走っている9人の絵を見せながら、
可可「では、ランニング行きましょう」
かのん「夏美ちゃんはどうする?」
夏美「あー、撮影しながらついていきますの」
とセリフを同時に被せることで、シーンの連続性を保っています。
こうした何気ない演出によって、テンポよく話が進められていることが分かりました。

これらとはまた少し話が変わりますが、
他にも「ラブライブ!スーパースター!!」を見て気づいたこととして、人物の画面の左右の立ち位置です。いわゆる上手と下手の概念ですが、これが当てはまっているのではないかと2期を見てから感じていました。
(舞台では右側を上手、左側を下手というそうです。)
思い出してほしいのですが、かのんときな子が二人が横に並んで映っている場面が序盤から頻繁に登場しますよね。さて、かのんときな子は左右のどちらに配置されていることが多いでしょうか?
よく覚えてない人は、逆にどっちだったか考えてみてほしいです。
正解は左にきな子、右にかのんです。
実はほとんどの場面でこの構図になっています。自分は実際に確かめたので間違いありません。これは単なる偶然ではなく、キャラクターの関係と画面の左右の位置関係には、ある決まりや規則があることを裏付けています。
富野由悠季 監督の著書「映像の原則」では映像の特性として画面の上下左右を次のように説明されています。

「フレームの右から入ってきた人物が強い人物で、左から出てきた人物は弱い人。けれど、左から入った人物は、いつかはガンバル人かもしれない。」(P51)

「当たり前の上下感覚でいえば、上に見えるものは大きいし、”上位のもの”と感じることもできます。上から(見えてくる)ものは”強いもの”とも感じられます。
 下からのものは、その逆の印象づけをしてくれます。
 それと同じようなことで、右と左ではどちらが”上か下か?”という問題も、先に書いたように、右に見えるものが上位で、左に見えるものが下位となります。」
(P55)

「映像の原則」富野由悠季

つまり明言されていないので自分の完全な推測になりますが、かのんは先輩だから上手の右側に、逆にきな子は後輩だから下手の左側に配置されていると考えています。
先輩後輩の関係がそのまま画面左右の力関係と連動していると思います。
この構図が意図的に繰り返されることで、見ている人の中にかのんときな子の関係が画面としても違和感なく感じられる結果になったと思います。
左側にきな子、右側にかのんを置くことで、かのんの先輩としての立場を強調し、それを目指して追いかけるきな子をより印象的に描くことに繋がったと勝手に感じました。
左右の関係とは違って、同じような例にかのんとマルガレーテの上下関係もあると思います。かのんは地面なのに対して、マルガレーテはそれよりも高い場所に立つというものです。
かのんの家近くの場面でしたら上下の関係も違和感なく描かれていましたが、初めて対峙した第3話ではわざわざ遊具の上に立って、かのんを威圧するマルガレーテの構図には驚きや納得感と同時に、なぜそんなところに立つのかといったおかしさや面白さもあったように思います。
第3話のフェスの前までは、かのんは右側でマルガレーテは左側といった、かのんの優位性も若干主張されていましたが、フェスの優勝をLiella!が逃した後の対話シーンでは、上下の関係は変わらなくても、かのんは左側にマルガレーテは右側といった変化がありました。
これは謎の少女だったマルガレーテの強さが、フェスの結果を受けて画面上でもはっきりと現れたことを示していると思います。


余談が少し長くなりましたが、物語を追うだけでなく、見ていて気づいたことも忘れずに残しておこうと思います。
簡単にできるかなと思いましたが、意外と長くかかりそうです。
FIFAワールドカップも始まってしまったので、次がいつになるか自分にも分かりません。

次は第6話から第9話まで、できたら良いなと思います。

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