試験でも問われる非侵襲的血圧測定:NIBP
循環モニタリングと聞いてはじめに思い浮かぶのはおそらくいかの2つではないでしょうか?
血圧(非侵襲的・観血的)
心電図
どこでも血圧測定
糖尿病と並んで万病の元の一つである高血圧.血圧測定は血糖測定よりも非侵襲的で簡便であるため,今や家庭・外来・病棟・手術室・果ては色んなお店の休憩スペースなど,どこでも見かける血圧測定器を見かけますよね!
ここでは血圧測定の基本,非侵襲的血圧測定(non-invasive blood pressure:NIBP)について周術期管理チーム試験に問われている内容を元に簡単に説明してきます.
観血的動脈圧測定(俗に言うAライン)は別の記事で取り上げたいと思います.
試験においては主に”測定に影響を与える要因について"が問われます.
血圧測定今昔
昔(今の50〜60歳くらいの先生が若手麻酔科医だった頃かな)は自動血圧計なんてものはほとんどなく、麻酔科医はマンシェットの間に聴診器を挟み込んで、数分おきにシュコシュコと手動で血圧を測っていたのです・・!今では想像もできないかもしれませんが・・😱
もちろん今みたいなデジタルの自動麻酔記録装置なんてない時代ですから(自動で鉛筆が動くアナログな自動記録装置はありましたが・・・見たことあります・・?笑),記録も手動です.
昔の麻酔科医の先生は今とは違う大変さがあったのです!(私はそのような話を聞きながら育った世代です🤗.初期は麻酔記録は手書きしてましたが).
エピソードとして語るのはいいのですが,それをことさら強調するようになると「老害、懐古厨」などと陰で揶揄されるのでほどほどにしましょう(私も気がつくと昔の話をしてしまいがちで気をつけています).
聴診法(コロトコフ法)
閑話休題.
上記の麻酔科医や看護師さんがシュコシュコと聴診器を使いながらする測定方法は「聴診法(コロトコフ法)」と呼ばれる一般的な方法です.これはカフを膨らませてその圧で血流を止めたあと空気を少しずつ抜き,血流が流れ出した時の音(これがコロトコフ音)と音が消失した時の圧を水銀柱(古い?)や,メーターを見ながら測定する方法です.
ただし,慣れてない人と熟練した人では測定値に誤差が出やすいです。特にカフの脱気が早すぎると収縮期血圧は低めに測定されてしまいます(タイミングを逸してしまうため).
しかし,現在では水銀を使用しない装置(アネロイド型や電子型)が主流です.(水銀式は2021年より製造・輸出入が禁止).
オシロメトリ法
オシロメトリ法とは主に自動血圧計で用いられます.カフを膨らませ血流を止め,徐々に圧迫を解除していくところまでは聴診法の手順と同じです.
オシロメトリ法では動脈の拍動に伴って発生する血管壁の振動の変化(圧脈波)をセンサで捉えることで血圧を測定します(へぇ).
その振幅が急激に大きくなる部分が最高(収縮期)血圧,振幅が最大になる部分が平均血圧,急激に小さくなった部分が最低(拡張期)血圧とします.
平均血圧は最大振幅なのではっきりしていますが,最高と最低は平均血圧を元に推定されます(機種ごとに異なるアルゴリズがあるようです).昔はセンサの性能が不十分であったため聴診法と比較しても誤差が大きかったようですが、最近ではほとんど差がないようです。
また、聴診法と違ってマンシェットを巻くことができる部位で,その部位で動脈の拍動がセンサで感知できる部位であればどこでも測定できるという利点があります.
正しいマンシェット幅の選択や巻き方
マンシェットの幅は、巻く部位の直径の1.2〜1.5倍程度が適正(サイズに関しては教科書によってもネット記事によっても微妙に違います).別の表現としては,腕の周囲長の40%.
巻く強さは、指が1〜2本くらい入るくらい(曖昧ですがね)
この数字は覚えておいてください!そしてそれらが適切でないと以下のことが生じます.
幅が巻く部位に対して狭すぎると血圧が高く測定される.
幅が巻く部位に対して広すぎると低く測定される.
狭いと測定血圧が高くなるのは,短い距離で動脈を圧迫して血流遮断しなければならなくなるので,遮断に必要な圧が本来必要な圧以上になるためです.
と言っても,成人で通常の範囲内の体格であれば13cmの幅が選択されているのではないでしょうか(小児や小柄な人だと10cm、7cm、5cm・・・と小さくなっていきます)。
巻く強さがゆるゆるだと血圧が高く測定される.
巻く強さがキツキツだと血圧が低く測定されます
ゆるいと中の膨らむゴムの袋が測定部位との隙間に余裕がある分外に膨らんでしまい,動脈を圧迫する部位での力が弱くなってしまいます.そのため余分にカフを膨らませなければならず,見かけ上測定値が高くなってしまいます。
でも、肥満患者で上腕の形がワイングラスみたいな形状になっている人とか,はっきり言って困る笑!
その他の知識・注意点
収縮期血圧と拡張期血圧の差を「脈圧」と呼ぶ.色々な疾患や病態で脈圧は大きくなったり小さくなったりしますが,詳細は別投稿で取り上げます.
測定間隔は基本的に最低5分おき.(安全な麻酔のためのモニター指針にも記載されている).あんまり頻回に測定すると末梢神経障害の原因になりうる.
透析患者のシャント側に巻いちゃだめ.潰してしまう可能性あり.
おすすめ教科書
それぞれについてはまた取り上げるかもしれませんが,簡単に紹介しておきます.
全看護師・研修医必読!
鉄板の讃岐先生の本です.
麻酔科専門医研修にはこれ
神経・呼吸・循環・筋弛緩・体温のモニタリングについてきれいにまとめられています。カラーで見やすく、内容もわかりやすく書かれているため、かなりおススメではあるのですが・・・ちょっと高い!