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輸血製剤表面のラベル表記の意味知ってますか?

 医療従事者,特に大病院や救急病院の医師や看護師さんであれば毎日目にする輸血製剤.そのパッケージにはシールが貼られており,色々と製剤番号などが書かれています.ただ,その細かな表記の意味は意外と知られていないことが多く,これを機会に一旦整理しておきましょう😃

赤血球輸血のラベル

A型(D Rho 陽性)とか認証用バーコード,RBCはいいとして,注目していただきたいのは右の中央あたりにある「Ir」と「LR」という文字です.

ラベル表記の意味

Ir:irradiated:放射線照射済

 Irは放射線照射済という意味です.放射線関連の記事でも取り上げましたが,放射線単位はGy(グレイ)です.いつ何Gyの照射を行ったかのラベルもしっかりと貼っています.見てなかったでしょ?笑
 放射線照射を行う理由はGVHD(移植片対宿主病)の予防です。GVHDに関しては改めて別記事でお話ししますが,供血者(輸血を提供した人)の血液中のリンパ球が投与された患者さんの血液中で増殖して,患者さんの組織を攻撃してしまう疾患です.
 恐ろしい疾患ではありますが,事前に血液製剤に放射線を当てることで予防できます.この処置はリンパ球を含む全血製剤,赤血球製剤,血小板製剤に対して行われます.ただし,新鮮凍結血漿(FFP)にはリンパ球は含まれていませんので照射の必要はありません.
  放射線照射による予防処置を始めてから、輸血によるGVHDは平成12年以降発生していないようです(^^)

LR:Leukocytes Reduced:保存前白血球除去済

  白血球の除去は今ではすべての血液製剤に対して血液センターで行われています。この理由はいろいろな輸血の副作用を抑えるためです。
 白血球除去により抑えられる副作用としては、発熱反応や白血球抗体産生に伴なう血小板輸血不応状態、サイトメガロウイルス(CMV)感染の予防、原因のよくわかっていない免疫抑制の予防などがあります。
 発熱は輸血製剤に含まれるヒト白血球抗原(HLA)に対する抗体が産生されることによる抗原抗体反応や、輸血製剤内で保存中に蓄積される炎症性サイトカインにより起こります。保存前に白血球の除去を行うことでこれらの副作用を減らすことができます。

ヒューマンエラーを無くすために

 血液製剤のラベルにはバーコードが印刷されており,そのバーコードと患者のリストバンドのバーコードをPC端末に繋がっているバーコード読み取り機で「ピッ」とすると,自動的に称号が行われ,血液型不適合輸血や患者間違い等が起こらないようなシステムが構築されています.
 そこそこ昔はほぼほぼ全て人間が読み合わせやカルテ記載の血液型等をチェックして行っていたため,ヒューマンエラーが生じて不幸な事故が起こっていました.ヒューマンエラーは人が人である限り”絶対に”防ぐことができませんので,”事故を起こしたくても起こせない”ようなシステム構築が重要になります.
 アクセルとブレーキの踏み間違え防止機構がついた車もその一環ですね.

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