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頼んでた赤(赤血球輸血)🩸まだ来ないの!?
世間一般でいわゆる「輸血」と言ったらほとんどの人が思い浮かべるのはこの赤血球輸血のことだと思います.
何のためにRCCを輸血するの?
ではなぜ赤血球を輸血するのでしょうか?
「出血してるから!」「貧血があるから!」.そんな声が聞こえてきそうですが,ではなぜ出血したり貧血があると赤血球を輸血するのでしょうか.
ポイントは赤血球の中にあるヘモグロビンです.ヘモグロビンの主な役割は「酸素を運ぶ」ことです.血中にヘモグロビンが少なくなってしまうと色々な組織に十分な酸素を運ぶことができなくなってしまいます.
つまり,赤血球輸血をする一番の目的は「組織の酸素不足にならないように,ヘモグロビンを補充すること」だと言えます(もちろん循環血液量を補充するという目的もあります).
赤血球輸血製剤の基礎知識
RCCはRed Cell Concentratesの略で1単位は140ml(200ml供血由来)。1pac2単位で保存されています。つまり1袋は400mlの血液由来で約280mlです。薬価は2単位製剤で約17000円!高いのやら安いのやら(^_^;)
保存は2〜6℃の低温で行い、その有効期限は採血後21日間です。
RCCには保存液も含まれており、そのヘマトクリット値(血球成分の割合)は約60%です(健常者のヘマトクリット値は40%程度)。ただし保存中にじわじわと溶血してしまい、3週間後にはおよそ50%になってしまいます。肝心のヘモグロビンは1単位あたりおよそ26.5g含まれており、1袋で53gです。
RCC2単位入れたらどのくらいHbは上がるの?
この53gを覚えておけば、おおよその輸血後の上昇ヘモグロビン量を予測できますよね(ただし,現在進行形の出血がない前提ですが)。
循環血液量(ml)は予測量はおおよそ体重(kg)に70をかけた程度なので、体重50kgの人であればおよそ3500ml(=35dL)。血中のヘモグロビン濃度の単位はg/dLです.概算では35dL分の血液中に53gのヘモグロビンが増えるので,その増加量は53/35≒1.5ですね.
現場では体格によりますが,普通の体格であれば1〜2程度上がるんだろなぁ,と覚えておきましょう.
RCCの開始基準は?
RCCの開始基準は「ヘモグロビンの量がこの数値を下回ったら」という絶対的な基準はありません。通常は7.0〜8.0g/dL程度で開始することが多く、6.0g/dLを切ったら必須としている教科書が多いです。
ただし、高齢者や心臓弁膜症、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)患者や透析を受けている患者さんには早めに投与されることが多いです(9.0〜10.0g/dL程度で)。ただし,早めに始めることによる有効性についてはエビデンスはないようです.
赤血球輸血投与による電解質変化
輸血共通の副作用や重篤な副作用については別記事で取り上げます. RCC投与では血清カリウム値とカルシウム値が影響を受けます。
血清カリウム濃度の上昇
赤血球製剤の中には赤血球が大量にあるわけですが,時間とともに溶血が生じ,製剤中のカリウム値が上昇します.そのため赤血球輸血を行うと血中のカリウムの濃度が上昇します.通常の量の輸血を合併症のない患者さんに行う場合,ほとんど問題になることはありませんが,特に透析患者や、術中に大量輸血をする際には危険な高カリウム血症になる場合があるため,適宜採決を行なって血清カリウム濃度のモニタリングを行う必要があります。
血清カルシウム濃度の低下
輸血製剤には抗凝固薬のクエン酸化合物が含まれており,それが投与後に血中のカルシウムと結合するため、血清カルシウム値は低下します(クエン酸中毒)。
ただし、こちらもよほど大量に急速輸血を行わない限り,通常一過性の低下で、投与されたクエン酸が肝臓や腎臓で代謝されれば自然に改善します。
一昔前は輸血時のカルシウムの補充を行うことが多かった印象ですが,最近は一般的ではありません.
ただし、腎不全や肝不全のある患者では低カルシウム血症が持続する可能性があるためモニタリングが必要です.