これで解決,ガンマ計算(μg/kg/分)!【one-pointシリーズ】
持続投与量計算の呼び名
ドパミンやノルアドレナリンなど持続投与が基本となる薬物の投与量の単位に『μg/kg/分』があります.「マイクログラムパーキログラムパーフン or ミニット」というのは長いので,通常「γ(ガンマ)」と呼ばれます(ただし,日本だけ・・).
このガンマ計算,意外とわかっていない人が多い印象です.計算がややこしいと感じるからか,1667を使用する簡易計算法や,シリンジのパッケージに印刷されてる計算表やスマホアプリなどでで済ましている感じです.⬇️
とりあえず仕組みを理解しよう
いや,いいんです.人間は計算間違いや勘違いする生き物なので.ガイドラインの薬物投与量やチェック項目なども表を貼っておいて,確認の意味で見ますし.しかし,仕組みやなぜそうなっているかを確認せずに用いるのはあまりよくないと思うのです(略語も).別にスマートフォンやパソコンなどの先端技術の仕組みや物質の成り立ちから理解しろといってるわけではないので.
ガンマの計算手順
計算は思っているよりも簡単です.
その人にとっての「1ガンマ」の量を計算する.
その流量を薬物の濃度で割って流量を出す.
①まずはその人にとっての「1ガンマ」がどれくらいかを計算する.
計算しやすいので体重50kgの人に5ガンマ(μg/kg/分)で投与することにしましょう.この単位は1分あたりの量です.「シリンジポンプの設定はmL/時」なのでとりあえず1時間(60分)の投与量に直しましょう.
1(μg/kg/分)× 50(kg)× 60(分)= 3,000(μg/時)
3,000μg = 3mgなので,この人に対する1ガンマは3mg/時になりました.
この薬を5ガンマ投与したいので5を掛けると15mg/時になります.
もちろん1ガンマ = 体重(㎏)× 0.06 ㎎/時 として覚えてもよいですが,もし忘れてもきちんと計算ができる前提です.
②あとは溶液の濃度で割るだけ.
たとえばドパミンは3mg/mLの溶液であることが多いので,
15(mg/時)÷ 3(mg/mL) = 5(mL/時)
となり,シリンジポンプの設定は時間当たり5mLの速度で投与すればよいことになりました.表で見てもそうなってますよね笑?
練習問題①: 体重60kgの患者に3mg/mLの薬物を4μg/kg/分で投与するときの流量は?
まずは先ほどと同様に「この人にとっての1ガンマ」を計算しましょう.
1(μg/kg/分)× 60(kg)× 60(分)= 3,600(μg/時)= 3.6(mg/時)
溶液の濃度は3mg/mLなので,これで割ると 1.2(mL/時)
4ガンマでの投与なので,これに4を掛けると 4.8(mL/時)
できました!
練習問題②:体重70kgの患者に0.1mg/mLの薬物を0.25μg/kg/分で投与するときの量は?
同様に計算していきます.
1(μg/kg/分)× 70(kg)× 60(分)= 4,200(μg/時)= 4.2(mg/時)
溶液の濃度は0.1mg/mLなので,これで割ると 42(mL/時)
0.25ガンマでの投与なので,42 × 0.25 = 10.5(mL/時)
気付いた人も多いと思いますが,これはレミフェンタニルでよく投与する量ですよね.
溶解しなければいけない粉末薬の場合は・・・
練習問題②のように粉末の場合は溶液の濃度は決まっていませんので,自分で決める必要があります.レミフェンタニルは原則として0.1mg/mLとなるように溶解するように推奨されていますが,ノルアドレナリンやアドレナリン,PGE1阻害薬,ランジオロールなどは色々な人が色々な溶解をすることがあるので,きちんと計算できないと間違うおそれがあります.そのため,病院や部署で統一されているところも多いと思います.
1mL/時が1ガンマになる溶解・希釈方法もあるけれど・・・
流量が即ガンマになるようにする溶解・希釈方法もあり,簡易計算法もあります.全然こちらでもよいと思います,
が,一度上記のようにきちんと計算がわかってる人が使用しましょう.