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アナフィラキシーにはなぜアドレナリン?【one-pointシリーズ】

 看護師さんたちからもらった質問にシンプルに答えるシリーズᕦ(ò_óˇ)ᕤ!(細かなまとめは別投稿で改めて)

答え

  • アドレナリンは下記の作用を併せ持ち,アナフィラキシーの症状に拮抗するため.

  • 循環の補助(心収縮力増強+末梢血管収縮):α1作用,β1作用

  • 気管支拡張作用:β2作用

  • 各種ケミカルメディエーター放出抑制:β2作用


アナフィラキシーにはアドレナリン(ボスミン®)! ・・・なぜ?

 アナフィラキシーにはアドレナリンを投与する!,というのは研修医や看護師さんはもちろんのこと,学生さんでも知っていることなのですが,「なんでアドレナリン?」と聞くと意外と答えられないことが多いんですよね.どの教科書にも書いてるんだけど!

 アドレナリンはα1,α2,β1,β2,β3全てのアドレナリン受容体に作用します(名前の通りなんですが.β3についてはここではあまり覚えなくてよいです).
 アナフィラキシーの主な症状である,ショック,気管支攣縮,粘膜浮腫等に対して,上記の受容体を刺激することでその症状に拮抗することができます.
 ケミカルメディエーター(化学伝達物質)放出抑制というのがややわかりにくいかも知れませんが,アナフィラキシーを生じると,肥満細胞などからさまざまな炎症性の化学伝達物質が放出されます.これらの作用により血管透過性の亢進(浮腫を起こす)野,末梢血管の拡張(血圧が低下する),気管支平滑筋の収縮などが生じます.アドレナリンはこのケミカルメディエーターの放出を抑制することで症状の悪化を防ぎます.

ちなみに投与方法は筋注,場合によって静注も考慮.

 投与は基本的に筋注です.0.3〜0.5mgを大腿外側部の深部(大腿外側広筋や臀部)に打ちます(小児の場合は0.01mg/kg).これらの筋肉は大きくアドレナリンの吸収が早くなるためです.
 筋注の場合は最高血中濃度に達するまでの時間は8分前後ですが、皮下注になると30分以上かかってしまいます.肥満患者では要注意です(少し長めの針が必要).

 血圧低下が高度の場合や、すでに静脈ラインが確保できている場合には静注も考慮します.麻酔科学会の「アナフィラキシーに対する対応 プラクティカルガイド」においても低血圧や循環虚脱時の静注が記載されています.
 静注の場合は微量投与になるため,適宜10倍希釈等を行います.

  • 低血圧時:0.2μg/kg静注

  • 循環虚脱時:0.05〜0.3mg静注

 静注の場合の心血管イベントの発生率は筋注と比べて高いので、高用量の急速静注は避けた方が無難でしょう(希釈して緩徐に静注や点滴静注)。




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