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機能的残気量,なにが”機能的”-【one-pointシリーズ】

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◎機能的残気量

 機能的残気量(FRC:Functional Residual Capacity).全身麻酔や体位,呼吸機能検査などについて,少しでもまともに教科書を読んだことがある人であれば(笑),一度は聞いたことがあると思います.

 ファミコン世代としては,”ザンキ”と聞くとシューティングゲームなどでの”残機”を思い浮かべてしまうのですが・・笑.

曰く,

  • 全身麻酔では機能的残気量が低下します.

  • 肥満患者や妊婦さんでは機能的残気量が低下します.

  • 仰臥位では機能的残気量が低下します. 

  • そのため無気肺を形成しやすくなり,低酸素状態に陥りやすくなります.

などなど.

 ”機能的”という接頭語がつくくらいですから,もともとの”残気量”というものがあって,その中でなにか”機能的”なものが”機能的残気量”というのだろうなということはわかるとおもうのですが,きちんと説明できますでしょうか?
 それでは,今日もポイントを絞って説明していきます.


◎そもそも残気量とは

 読んで字のごとく,残気量(RV:Residual Volume)は肺の中に「残った気体」のことです.具体的には”これ以上自分では吐ききれないところまで吐いた後に残っている気体の量”のことです.吐ききっても真空になるわけではないので笑.
 別の言い方をすると,肺がぺちゃんこにならないようにするための空気の量が残気量ですね.


◎機能的残気量と残気量の違い

 残気量については上記の通り.
 機能的残気量は,”安静呼気”の終わりに肺に残る空気の量を指します.安静呼気とは普通に呼吸した時の呼気の終わりのことです.一度やってみてください.もう一段階吐けると思います.その終わりが残気量です.
 つまり,機能的残気量とは,残気量と,さらに吐き出せる呼気量(予備呼気量)とを加えたものです.
 この両者とも,下のグラフを見てもらえればわかると思いますが,スパイロメトリでは直接測定が出来ません.測定には特殊な検査(ヘリウム希釈法や体プレチスモグラフィーなど)が必要になります.

機能的残気量(スパイログラム)


◎どれくらいの量がある?

 標準的な機能的残気量は,健康な成人で約2,500 mL程度です(30〜40mL/kgとされている).この数値は年齢や体格によって異なりますが,体重と関連しています(ただし,肥満だからといって体重に比例して増えるわけではない).
 吐いたと思っても結構入ってるもんですね.


◎結局,何が「機能的」?

 普段呼吸をしていて,急に止めてもすぐに息苦しくはなりませんよね?これは血中にある酸素(動脈血酸素含量)に加えて,肺内に残っている酸素を使用できるからです.この「使える」,つまりいわゆる予備の酸素ボンベとしての機能があるので,機能的残気量と呼びます
 つまり,この数値が大きければそれだけ低酸素状態に強いと言うこともできます.
 全身麻酔や仰臥位,肥満などではこの機能的残気量が減少するため,低酸素状態になりやすくなります.そのため臨床的には重要な数値となります.


まとめ

  • 機能的残気量=残気量+予備呼気量

  • つまり,普通に吐いた時に残っている空気の量.成人でだいたい2〜2.5L程度.

  • 体内にある予備の酸素ボンベとして役立つので「機能的」.

  • 麻酔や肥満で減少する.減少すると無気肺を形成しやすくなるなど,低酸素状態に陥るリスクあり.






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