その酸素ボンベ残量,大丈夫ですか?
救急外来や手術室で仕事をしていると見ない日はないであろう,酸素ボンベ.あの真っ黒いやつ.
ちなみに酸素ボンベの外側の色は『黒』と決められています.ホースの色は『緑』で,ボンベが『緑』なのは二酸化炭素とちょっとややこしい.つなぎ間違いよる事故も起こったりしています.
ボンベにはメーターがついてますよね?ちゃんと見てますか?
酸素ボンベの圧力メーターです.矢印は0を指していて栓が閉まっている状態です.よくこの状態で右のダイヤルを回して酸素が流れてない,なんてことがありますので要注意.
⬇️これが開いた状態.少ないですけど・・見にくいですが8Mpaくらいのところに矢印があります.
それではこのボンベ,5L/分で流したときに何分くらいもつでしょうか?
どれくらいもちますかね?5分?10分?それとも1時間?.そんなこと考えたこともない人も結構いらっしゃるようで・・.
そりゃあんた,知らないところで業者さんとか担当の人がちゃんとチェックして新しいのに入れ替えたりしてくれてるからですよ!
というわけで,この際どれくらい使用可能な時間が残っているのかを計算できるようにしておきましょう.これ,試験にも出たりするので.
酸素ボンベの残量の計算方法
一般的な酸素ボンベが満タンの場合は・・・
満タンの場合は500L(0.5m3)です.これは覚えておいてもよいと思います.満タンだったら5L/分だと理想的には空になるまで100分ありますから十分ですよね.でも普段は満タンじゃないので圧力計を見る必要があります.
ちなみに満タン時の圧力は14.7MPaです(ボンベにも書いてあります.みたことなかったでしょ?笑).メーターにはまだ上の数値がかかれていますが,それ以上に入れることは通常ありません(ボンベの最大耐圧と臨床使用の満タンの圧は異なります)
ボンベ内酸素残量の計算式はこれ
酸素残量(L)= ボンベ容積(3.5L)× 圧力(MPa)× 10
ボンベ容積が3.5L,圧力が満タンの14.7MPaの場合,3.5×14.7×10=514.ということでおよそ500Lということになります.
という事で,写真のおよそ8MPaを指しているボンベの残量を計算してみましょう.
酸素残量(L)= 3.5 × 8 × 10 = 280
つまり,術後などに5L/分で流すと1時間弱くらいはもつかなーという感じです.
ただし,実際の使用時間は理想値よりも短くなるため,安全のために0.8という係数をかけて余裕を持たせています.このように,酸素ボンベが完全に空になる前に交換が行えるよう配慮しています.
先ほどのボンベの計算であれば280×0.8≒ 220となるので,5L/分だと40分強くらいの使用可能時間ということになります.
まぁこの計算しなくても,およそ15MPaで満タンで80〜100分もつなら,その半分くらいの圧だから40程度じゃないの?と思う人もいるかもしれません.はい,その通りです.きちんと知っていれば割合計算でもかまいませんよ.ちゃんとわかってて計算してるなら(圧)笑.
気になっているであろうMpa(メガパスカル)と気圧の関係. あと,その”10”は何だ?
え?気にならない?笑 気にしてくださいそういうところ☝️
あの計算は,『1気圧の環境下でどのくらいの酸素がありますか?』ということを知りたいための計算です.酸素ボンベには高圧でつめこまれているので.
ボンベの圧力計の単位は『MPa』と書かれていますね?このMPaを1気圧に変換する必要があります.もう嫌になりましたね笑.
パスカル(Pa)は台風などの気圧でもよく聞きますよね?ヘクトパスカルのパスカルで,圧力の基本単位です(パスカルさんの名前をとってます).
まず,1気圧は101,3kPaです.細かな数字はうっとうしいのでおよそ100kPaにします.『メガ』は『キロ』の1,000倍です(みなさんが月末になると気にする『ギガ』は『メガ』の1,000倍です).
ということは100『キロ』パスカルは0.1『メガ』パルカルですね.1気圧は0.1MPaでした.つまり,1Mpaは10気圧.このMpaを気圧に直すための『10』だったのですね!まとめましょう.
1気圧 = 101,3kPa ≒ 100kPa
100kPa = 0.1Mpa
1Mpa = 1000kPa = 10気圧(1気圧=0.1Mpa)
最後にもう1回☝️
今,ボンベの圧力メーターは8Mpaを指しています.これを普通の大気の圧力である1気圧での量に直さなくてはいけません.1Mpaは10気圧だったので,8MPaは80気圧です.この80気圧は,80倍の空気を詰め込んでいる状態です.もし,80Lの酸素があったとしたら,それが1L分に圧縮されていると考えてください.80×3.5=280Lになりました.
単位変換はめんどくさく,初めから1気圧での量で記載してくれよとか言いたくなりますが,それぞれの単位にはそれぞれの分野での色々な歴史がありますので,興味がない人がほとんどだと思いますが笑,まぁ調べてみてください👍