見出し画像

だいぶ前に頼んだ白(FFP),まだ溶けてないの・・!?

 現場では「白」の相性で親しまれている新鮮凍結血漿:FFP.FFPはFresh Frozen Plasmの頭文字をとったものです.心臓外科手術等に関わる人は毎日のように見ていると思います.

【参考】日本赤十字社 血漿製剤

https://www.jrc.or.jp/mr/blood_product/about/plasma/

新鮮凍結血漿:FFPって?

小さな製剤(1袋1単位)から大きな製剤(1袋5単位)までありますが,一番使われているのは中くらい(1袋2単位)の製剤ではないでしょうか.1袋2単位の製剤は供血400ml由来で容量は約240mlです。薬価は2単位制剤で17000円程度!
 リンク先の写真のように薄い黄色をしています。−20℃以下で凍結保存され、その有効期限は約1年間と結構長いです。凍結している理由は、血漿の中には凝固因子を分解する酵素が含まれていて、十分に冷やされていないとその酵素が無駄に活性化して,最終的に活性が失われてしまうからです。
 溶解するのは30〜37℃のぬるま湯の中でゆっくりと溶かします(20〜30分程度かかります)。溶かしたあとは3時間以内に使用しなければいけません。これは時間経過とともに活性を失う凝固因子があるからです。

FFPは何のために使う?

 さて、それではどのような時にFFPを投与するのでしょうか
 一言で言うと「凝固因子の補充」のためです.何らかの理由で患者さんの凝固能、つまり出血を止める能力が低下している場合です.それを一般的には「凝固能低下」と呼びます。それではどういう時に凝固能は低下するのでしょうか?

凝固能が低下するのはどんなとき?

血液性疾患

 まずは先天性や後天性の血液性疾患があげられます(詳細は割愛)。

肝機能障害

 次に,肝機能障害が挙げられます.凝固因子は肝臓で合成されるため、肝炎や肝不全などにより肝機能に障害を受けると凝固能は低下します。肝機能障害では血小板合成も障害を受けるためさらに出血傾向が助長されます。

抗凝固薬の影響

ワルファリンやヘパリンに代表される抗凝固薬(俗に言う血をサラサラにする薬)でも文字通り凝固能は低下します。

実際の使い方

 凝固能がどれくらい低下しているかを確認するために用いられる血液検査があり、それがPT(PT-INR)、APTT、血清フィブリノゲン値などです。心臓に機械弁が入っていたり、脳梗塞や心房細動の患者さんたちは、これらの値を定期的に測ってカラダの中に血栓(血のかたまり)ができないように厳密にコントロールされます。

 ではそれらを踏まえてどのような時、どの程度凝固能が低下しているときにFFPを投与するのでしょうか?
 具体的な検査値としては以下の基準があります。

  • 血清フィブリノゲン濃度が100mg/dl以下

  • PT-INRが2.0以上(PTは基準値の1.5倍)

  • APTT延長が基準値の2倍以上  

 周術期では、心臓手術や肝臓の手術などで微少出血がだらだらと持続する、DIC(別掲載します)などで出血傾向にある、肝移植などの肝臓疾患患者の手術、循環血液量に匹敵あるいはそれ以上の大量出血(何リットルもの出血)がある場合などです。また、ワーファリンを内服している患者さんが緊急手術が必要になった場合に、急速にその効果を打ち消すためにも用いられます。

補足

 補足ですが、凝固因子の活性が通常時の20〜30%程度にまで落ちない限り、臨床的な出血傾向は生じないと言われています。循環血液量に匹敵するほどの出血があったとしてもその活性は30〜40%程度残存するといわれているため、あわててFFPを投与しなければならない理由はありません・・が、そんな出血がある場合には止血の目処が立っていないことが多いので、オーダーは早めにしないと間に合いません!!(溶かさないといけないし).
 急ぐ時ほどなかなか溶けないんですよこれが!!!!😡💢💢
 ちなみに体重60kg程度のヒトでFFPを6〜7単位投与すると凝固因子の活性は30%程度、血清フィブリノゲン値は30mg/dl程度上昇します。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?