気管挿管後の確認,どうしてる?
毎日の気管挿管
毎日数多く行われている気管挿管.病棟で行う場合は急変時であることが多く,慣れていないスタッフがいる場合や,夜間で人員が少ない場合はバタバタとしているイメージがあると思います.
それとは逆に,手術室での気管挿管は予定されていることであり,落ち着いた環境で行われ,研修医が気管挿管するときもバタバタすることはほぼありませんね(ですよね?笑).
恐ろしい食道挿管
のどの奥には管が2本あり,1つは気管,1つは食道です.気管のほうが体の前面にあり,食道は気管の後ろ側に位置しています.もちろん挿管チューブは気管に挿入されなければいけません.じゃないと呼吸できませんしね!食道にいれるのはNGチューブ(naso-gastric tube).気管チューブを食道に入れるのはNGです・・スミマセン.
問題になるのはその気管チューブを食道に挿入してしまうことで,「食道挿管」と呼ばれますよね.本来呼吸のために必要な管を消化管に入れてしまうと体に必要な酸素が供給されず,放置すると死に至ってしまう恐ろしい合併症です.
麻酔科がいない単科病院の手術室で,主治医が挿管して手術を行う際,食道挿管をしているのに誰も気がつかず,患者が死亡してしまったり重篤な後遺症が生じてしまうという痛ましい事件を聞いたことのある人もいると思います.絶対に避けるべき事態です.
食道挿管自体は別にしてもいい・・・ただしその判断が迅速に出来るのであれば
気管挿管をしたことのある医師で,「食道挿管をしたことがない!」という人はほとんどいないのではないでしょうか🤔? 私はそんな人には出会ったことがありません.それくらい食道挿管自体は生じるものです(おそらく減少しているはずですが).
施行医師の技術的なものも含め,気管挿管が難しい場合は多々あるものなのです(言い訳じゃないですよ(^.^;)).ちゃんと見てれば大丈夫だろ!と知らない人は言うのですが,ちゃんと見えないことがあるんです(^.^;).
それではなぜ問題になることがほとんどないのでしょうか?そう,もちろん「すぐに気付いているから」です.何事にもミスやうまくいかないことはあるものの,それにすぐに気がつき,別の手段をとれるのであれば問題ありません.それはどの仕事,どんな分野でも同じでしょう.
◎ 気管挿管の確認方法
麻酔や救急医療の教科書やマニュアルをひも解けば,気管挿管の確認方法についていくつかの方法が書かれており,手術室の挿管時にも麻酔科医が研修医や看護師さんに説明しているのを聞いたことがあるでしょう.
メジャーなものを下に上げます.
胸郭の動きを確認する
まぁ簡便ですし,わかりやすくはあります.特に痩せている患者さんでは胸郭自体が動いているのもよくわかりますし,胸の上下もわかりやすいです.
ただし,肥満患者さんではわかりにくい場合も多く,確実な方法とは言えません.
聴診で確認する
病棟でも手術室でもどこでも聴診器はありますので,聴きますよね. 5点聴診といってみぞおちの部分も聴きますね?食道挿管していると「ゲップしているような音」が聞こえます.
でも,呼吸音は意外とわかりにくなと思ったことありませんか笑?.これも太っている人ではわかりにくいんです.周りがうるさいと特にです(静かにしろー😡).
食道挿管したまま気付いていないときも聴診してるはずなんです.結局確実な方法とは言えないですよね.
気管チューブの曇りを確認する
きちんと挿管されていると,戻ってきた呼気は加湿されているのでチューブの内側が曇ります.ガラスに息を吹きかけて曇るのと同じです.小さい頃はよく窓に落書きしましたよね(え?してない?).
手術室ではまぁわかりやすいのですが,夜中の病棟ではなかなか見にくく,これもあまり当てになる方法ではありません.
食道挿管検知器を使用する
見たことない人もいると思いますが,こんなやつです.今まで見たことがない人は,おそらくこれからも見ることはないでしょう笑.
気管チューブに接続して「ぷにっ」と押すと,気管に入っていると空気が戻ってくるので「挿管成功!」,食道に入っているとつぶれたままになって「食道挿管だ!」となる,シンプルな検査なのですが・・・
挿管されているのに挿管されていないと判断してしまったり,食道挿管になっているのに気管挿管成功と判断してしまったりすることもある検査で,やはりあまり当てにならない検査法とされています.
🌟最も確実!カプノグラムの波形を確認する.
手術室には必ずあるカプノメータ.見たことありますよね.別の記事でも取り上げましたが,呼気の二酸化炭素分圧を検知してモニターに表示するものです.おそらくモニターの下の方にこんなの出てますよね⬇️
これが出ていればまず確実に気管挿管できていることになります.
ただし!手術室には必ずありますが,病棟や集中治療室,カテーテル治療室,ERにはまだまだ普及しているとは言えない状況です.大きな病院では大丈夫だと思いますが・・.
🌟救世主,ビデオ喉頭鏡✨
というわけで,モニターとして一番確実なのはカプノグラムの確認なのですが・・,どこにでもないという現状を鑑みると一番手っ取り早く確実性が高いのは「ビデオ喉頭鏡」でしょうね!
15年ほど前から普及し始め(エアウェイスコープが始まりかな?),今は各社からいろいろ発売されていますよね.みなさんの病院でもMcGRATHなど置いてると思います.
エアウェイスコープは発売当初は高価(100万円くらいした覚えが)でしたが,最近のビデオ喉頭鏡は20万円前後で購入できることが多く,フリーの麻酔科医の先生たちは自前で購入していることも多いです(私もMy McGRATH持ってます).
ビデオ喉頭鏡の登場で,今まで喉頭鏡では難渋していた患者さんでも驚くほど簡単に挿管できるようになりました.かつ,気管に入っていくのが恥ずかしいくらいよく見え,しかも複数の人間で挿管を確認できます.
当初はどこにでもあるわけではなかったので喉頭鏡もしばらくは必要でしたが,今ではいっぱしの病院であれば救急外来や病棟でもどこでも置いています.使われなさすぎて電池切れを起こしていることもあるので,今一度チェックを.
ビデオ喉頭鏡はもし電池や充電が切れても通常の喉頭鏡として使用できるのも利点ですよね.
麻酔科医としては通常の喉頭鏡で挿管できることも必要かと思いますが,そうでなければリスク軽減のためビデオ喉頭鏡一択でしょう.私もここ10年近く,ほとんどビデオ喉頭鏡を使用しています.研修医にも使用させていますが,食道挿管はほとんど起きないですね.経験として喉頭鏡を使用させることもありますが,神経使います笑.
◎ まとめ
とういわけで,まとめです.
食道挿管は恐ろしいが,適切に判断できれば大丈夫.
気管挿管の確認方法はたくさんあるが,多くは確実性に劣る.最も確実なのはカプノグラムの確認.
ビデオ喉頭鏡は,挿管困難への対応や食道挿管を避ける意味でも超優秀.もしあなたの部署に無ければぜひ購入を!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?