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確定的影響と確率的影響って何なん?


放射線防護について読んでいると必ず目にする言葉,確率的影響と確定的影響.何となく想像はつくようできちんと説明しろと言われれば曖昧で,試験の問題はとりあえず解けるようになったけど,という人をよく見かけます😅
この記事では以下の用語について簡単に説明していきます.

  1. 確定的影響(1度のダメージ量がポイント)

  2. 確率的影響(一定期間の累積のダメージ量がポイント)

  3. 実効線量(確率的影響:癌化リスクの指標)

  4. 等価線量(確率的影響:癌化リスクの指標)

確定的影響(少々なら低リスク)

人体が放射線にさらされると細胞の奥深くのDNAが傷つけられてしまいます.でもさすが人体,少々の傷であればすぐに修復するか,傷んだ細胞を廃棄します(細胞死プログラムが働きます.アポトーシスと呼ばれます).
でも少々でなく強い一撃が加わると修復が追いつかず,多くの細胞が死んでしまい、組織の損傷や臓器の障害が発生する可能性があります。例えば生殖器が障害を受ければ不妊の原因になりますし,水晶体であれば白内障の原因になり得ます.
この許容範囲とそれを超える範囲の境界を『閾値(いきち,または,しきいち)』と呼びます。閾値を超えた場合にはその臓器に応じた障害が出ることが判明しているため,『確定的影響』と呼びます.
また,その組織にどれだけの放射線が吸収されたかにより障害が生じるため,吸収線量の単位であるGyを用います.

最後に例えると,子どもに何度叩かれてもダメージはほとんどありませんが,ボクサーの強力なパンチを1発でも受けると大ダメージ,という感じでしょうか.

確率的影響(累積でリスク上昇)

先ほど、DNAが傷つけられても修復する機能があるとお話ししましたが、修復過程で時折部分的に失敗し、突然変異が生じることがあります。この突然変異が、将来的に癌の原因となったり、子孫への遺伝的な影響として現れる可能性があります.
不完全な修復があったからといって、それがすぐに癌になるわけではありませんが、被曝線量が累積することでそのリスクが増加するため、これを『確率的影響(発症するかどうかは確率によるため)』と呼びます。
つまり,確率的影響=癌化のリスクと把握しましょう.

例えるなら、黒髭危機一髪のようなゲームで、ゲームが進むほど黒髭船長が飛び出す確率が上昇していくイメージです。しばらくは何事も起こらないかもしれませんが、ゲームが進むにつれて飛び出すリスクが高まるように、被曝が累積するほど癌になるリスクも高まっていきます

等価線量と実効線量(単位はSv)

等価線量と実効線量は上記の『確率的影響』を推定するために用いられます.一度に受けた量がどれくらいかではなく,ある期間にどれだけの放射線被曝があったかを加算していき,リスクを評価します(被曝量が増加していくとリスクも上がっていくのでしたね).

まずは単純に,等価線量は「各臓器・組織」,実効線量は「全身」と把握しましょう.各臓器の被曝量(等価線量)に,組織ごとに定められた組織荷重係数(名前は難しいですが"放射線による組織の損傷リスク"と考えましょう)を掛け算してそれを全部足したものが実効線量です(全ての係数を加算すると1.0になるように設定されています).

なぜ組織ごとに係数が異なっているのかというと,組織により放射線の影響を受けやすい組織とそうでない組織があるからです.例えば皮膚は放射線の影響を受けにくいですが,骨髄などは受けやすい組織です.

職業被曝においては別記事でも述べたように等価線量と実効線量ともに線量限度が設定されており,適切にモニタリングすることで,将来の癌化や遺伝的影響のリスクを低減させることができます.


もっと知りたい人は・・🤔



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