財布の厚みの話
2020年4月。
レザープロダクトを始めた当初は
自分が作りたいデザインに必要な、薄くて丈夫な皮革素材をひたすら探していた。
浅草橋やら蔵前の皮革卸屋を回っては、それに該当してて且つ安い革を買い漁っていた。
漉き加工を施して、外装の革でも1.0〜1.3㎜くらいの厚みに設定してた。
革細工を始めてから初めてまともに完成したデザイン「cw-1」は
被せの形も何の変哲もない三角で
Eメールのアイコンみたいな見た目をしていた。
シンプルだけど、僕はこれが好きだった。
コンパクト財布であるcw-1は、コロナ禍で仕事が無くなった僕の生活を救ってくれる程度には売れたし、今でも使っている人がいるくらいには長持ちするようだ。
それから約3年の月日が流れて
より長くつかえるようにと皮革素材にこだわるあまり
「コンパクトさ」や「ミニマル」といったものから
少しづつ、かけ離れていったデザインが形成されていった。
昨年に製作したファスナーを使用したコンパクト財布「sfw」がいい例で
これがシンプルなデザインで、型紙の段階でのサイズ感は
cw-1と殆ど変わらない大きさだったものの
いざ試作してみると
「なんかデカいな・・・」という感想が生まれた。
2022年に制作したファスナー財布「sfw」
理由はシンプルに「両面革張りだから」であり
見た目の良さと堅牢さ、機能性はあるものの(財布としてはかなり合格)
結論普遍的な財布の厚みと化してしまった。
しかしながら、サンプルを使用してもらっていた知人や友人からは好評だった
(なんならそのまま今でも使ってる人もいる)ので、このまま製作を
進めることにした。
この財布も
外装→1.5mm
内装、マチ、ポケット→1.0mm
コインパース→1.5mm
と、ひとつひとつのパーツを見るとそこまでの厚みでは無いのだが
やはり貼り合わせて重なるプロセスでどうしても存在感が出来てしまい、
当初のミニマリズムとはかけ離れた出来栄えになってしまった。
そして皮肉なことに
このファスナータイプのsfwは
僕のプロダクト史上、一番売れた財布となっていて
(なぜか主婦層からめっちゃ人気)
嗚呼、売りたいものと売れるものはやはり違うのだと
身をもって学ぶ良い機会となった。
いや、でもこれはこれで…
なんて
ぼてっとした財布なんて好きじゃなかったから
自分で作り始めたのにこの始末
結論からいうと
売りたいものが売れたら勝ちだとも考えている
sfwのデザインは手縫いにしては工程が多くて大変になるし
(早くミシン買えばいいだけやけど)
兎にも角にも「機能性×コンパクト×堅牢」
を今後も追求できたらいいなと思う
やっぱちょっと初心に帰らないと