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革小物に対する考え方
これは考え方。
これはあくまで個人の見解。
革財布なら、堅牢であってほしい。
革財布なら、丈夫で長く使えるほうが良い。
せっかく「皮革」という、丈夫で長く使うための素材を使用しているのだから、その素材を活かした堅牢なもので、少なくとも3年以上は使えることが、プロダクトの前提にあってほしい。
革財布の「耐久性」という部分に焦点を当てて、そこに求めるものを考えてみた。
革財布を購入する上で見るべきポイントでもあるので、誰かの参考になればと思う。
(自分もそうだけど普段お尻のポケットに入れて使用する人とかは特に)
【素材自体の厚みがしっかりしているもの、またはテンションや摩擦の発生する箇所が薄くて柔らかくないもの】
たとえば、日本の職人さんが作る財布は細部まで丁寧な作りで凝っているので、その見た目はとても美しい。しかしながら、果たしてそれに強度があって長期間使えるものなのかというと、それはまた別の話になってくる。
折り財布の外装を薄い革で仕立てる時に使う「菊寄せ」の技術は本当に素晴らしいのだけど、使ってるとだいたい菊寄せの部分から擦れてダメになっていくケースが多い。
千切れたりとかはしないけど、糊で留めてある部分の革がめくれたりして、ペラペラになったものを見かける事がよくある。
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そもそもどうしてあんなに薄く漉いた革をわざわざ中敷みたいなのに被せて財布を作るのかが疑問なところではあるけど、界隈ではそれが美徳とされていたり、伝統的な工法だったりするのかもしれない。
実体験として、isolaさんの財布に使われているカリオカレザーの革質がとても好きで二つ折り財布を使ってた時期があるのだけど、半年くらい経って菊寄せの角が擦れて中の板?みたいなのが出てきてとても萎えた記憶がある。よく見てみると折り紙くらい薄く漉いた革が貼られていた。
それ以外の箇所はまだまだ健全で、革のエイジングもとても綺麗だっただけにショックは大きかった。
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もし薄い革を財布に取り入れたいのであれば、薄くしても硬さや強度がキープされている皮革が好ましい。もしくはテンションのかかりやすい折り目や、摩耗が予想される角の部分には、薄くて柔らかい革を使うのは避けるべきであると考える。
せめて外装に使う革だけでも厚みは確保しているものが良いと思う。
【ステッチは無駄の少ないものがいい】
ミシン縫いの財布あるあるかもしれないけど、製作のプロセスで淵をぐるっと全体的に縫われている財布をよく見かける(特に廉価で買える普遍的な二つ折り財布や長財布など)
劣化しやすい箇所として多いのが、外装のステッチ。これが摩擦で千切れて劣化が広がっていくというのが財布の劣化としてよく見られるケース。
特に折り目になるような部分は、極力ステッチは少ないのが好ましい。(デザインの都合上仕方がないものもあるけど)
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【必要な箇所に必要な厚みがある】
被せの部分なんて特に毎回引っ張られる箇所になるので、僕自身が製作するデザインの場合は、2枚の革を貼り合わせて被せが伸びてしまわないようにしている(但し厚みのある皮革素材を使用する場合は例外とする)
必要であれば被せ以外の全体を2枚貼りにしたデザインも最近は製作している。
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【ボタン金具はバネホックよりもプリムホック派】
先に伝えておくと、おそらく財布のボタン金具がバネホックでもプリムホックでも耐久性はほとんど変わりはないはず。ただこれはあくまで個人の見解だと思ってもらえるとありがたい。
20代前半の頃、雑誌で見たマスターピースのキーケースがとてもカッコよくて、わざわざ知り合いの鞄屋さんにお願いして発注してもらい買った事がある。
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このキーケースに使われていたのがバネホックで、なんと購入初日にバネホックが外れてしまい衝撃だったのを今でも覚えている。
その時はアロンアルファで無理矢理くっつけたけど「また外れてしまうかもしれない」という懸念が常に伴うようになった。
それに加えて、革細工を始めたての頃はバネホックしか知らなかった。必然的に製作する革小物に使うのはバネホックになるのだが、これが外れることがしばしばあった(これは後で知ったのだけど、打ち具で叩いて取り付ける時の力の入れ具合が絶妙に難しいらしい)
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あとは微妙な差になるけどプリムホックよりバネホックの方が摩耗が早くてボタンが緩くなりやすいような気がする。なんとなく。
なので余程必要にならない場合はプリムホックを使用している。
基本的には以上の条件を満たしているものは、革の種類はどうあれ、ある程度堅牢な財布として該当するものになるはずだと思っている。
毎年財布を買い換える人も居るだろうし「長持ち」の基準は人それぞれではある。
しかしながら革財布の魅力はやはり経年変化なので、長く使えば使うほど愛着が湧いてくることを前提に選ぶべきだと考える。