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口紅の不思議
化粧が好きな女性は決まって、口紅をたくさん買い揃える。
口紅は奥が深い。どんな色で、どんなテクスチャーで、どのくらい発色するものがいいのか。女にはその時々に、それぞれのこだわりがある。
口紅=赤 ではないのだ。
この世界にはたくさんの種類の口紅があるにも関わらず、理想の口紅を見つけることはなかなか難しい。
それでも、彼女たちはありとあらゆるブランドの、ライン全ての色を1つ1つ試していく。そしてそれらが理想的であっても理想的でなくても、この色のここがいいとか、これがもう少しこうだったら、と好き、嫌いを超えて丁寧にコメントしていく。
必ずしも理想のものが見つからなくても、決して諦めはしない。むしろ、その回り道が何よりも楽しいのだ。
口紅一本の色味についてどうしてあんなに盛り上がることができるのか、自分でも不思議だ。
それでも、化粧品売り場に赴き、有名ブランドの看板の下で、口紅の色の比較やテクスチャーの良し悪しの品定めをするあの時間はとてつもなく贅沢で、人生の醍醐味だとさえ私は思う。
化粧は、自己実現の手段の1つだと言われる。
私たちは、自分のなりたいイメージに向けて今自分が手にしているものと向き合い、そこから足したり引いたりする。
そうして、理想の姿に近づいていく。
向き合うのには多少の勇気がいる。わたしに似合わない色、なりたいけどなれない姿を諦めなければならないからだ。
そうして女は、自分を一番よく見せる色と出会うことができるのだ。
なりたいイメージは刻一刻と変わっていくし、各ブランドが売る商品も日々変わっていく。
こうして、理想のリップ探しの旅はどこまでも続く。終わりのない旅だからこそ、女は幸せなのだ。