年次総会(通称ダボス会議)2022 - Day 2 & 3
年次総会2日目・3日目も、地政学情勢、環境、経済など多くのセッションが開催されました。ここではあまり報道されないテクノロジー関係や日本関連のセッションについて、その一部をご紹介します。
Day1の紹介はこちら↓
A Conversation with Satya Nadella, CEO of Microsoft
法規制との関係について聞かれたNadella氏は「当然、想定して対応するが、大事なのは"by design"で適応することだ」と述べ、テクノロジーがスケールする前の開発段階から規制対応を織り込んでいくという意向を示しました。またテクノロジーや企業に対するトラスト(信頼)については「Social Purpose(社会的目的)をもとに"by design"すること」とし、セキュリティ、AIのバイアス修正、ガバナンスとプライバシーなども企業の社会的目的に照らし合わせて設計することが重要であり、このSocial Purposeを「事業を行うためのライセンス」「社会との契約」と位置付けました。
Strategic Outlook on Japan
日本社会と経済は比較的安定した状況にあるーー 冒頭、竹中平蔵教授は3.2%の経済成長予想、60%の政権支持率、2.5%の失業率などをあげながら日本の状況を説明し、岸田政権の掲げる「新しい資本主義」の中核は今夏の参議院選挙以降で明らかになるとの見解を示しました。日本の置かれた地政学的な緊張については「米国や西欧の同盟国でありつつ、戦略的に重要な中国に対してはAmbiguity(あいまい) Policyだ」という言葉でその立ち位置を表現しました。
登壇者からはロボットやAIといったテクノロジー分野での競争力と文化社会的な包容力、またサイバー、AI、ドローンなど防衛テクノロジーがもたらす潜在力などを日本の成長分野とする指摘があり、変革と成長への期待が表明されました。大和証券グループの田代桂子副社長は「なかなか変化できない日本において、もっとも潜在力があるのはダイバーシティとインクルージョンだ」と述べ、若い世代からの意識改革への支持と期待を表明しました。
First Movers Coalition Announce Expansion
COP26で米国のバイデン大統領と世界経済フォーラムが立ち上げた「ファースト・ムーバーズ・コアリション」が、日本政府を含むメンバーの拡大を発表しました。重工業から長距離輸送までゼロ・カーボン技術の実用化に向けたこの官民パートナーシップは、企業メンバー55社、米国など合計9つの主要政府をメンバーとし、世界のGDPの40%超をカバーしています。
Shaping a Shared Future: Making the Metaverse
インターネットで起こったことを教訓に、メタバースでサイバー社会を再創造(Reinvent)できる ーー 広告モデル依存からの脱却、プライバシーのコントロール、相互接続性、強力なアップスキリングや教育ツールとしての可能性、移動における選択肢の広がり、フィルターバブル対応、デジタルデバイドなど、会場の聴講者を含めて多くの論点について意見交換がなされました。また同日、 世界経済フォーラムからは「Defining and Building the Metaverse」という新たなイニシアティブの設立が発表されました。
Serving Up Digital Services
パンデミックを経て世界中で大きく伸長した「デジタルサービス」。その現在地を探る同セッションで特に注目を集めたのは、先週発表されたインド太平洋経済枠組み(IPEF)を含めた国境を越えたデジタルサービスの動向でした。
登壇したJETRO(日本貿易振興機構)の佐々木伸彦理事長は、2019年に日本が提唱したDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)など国境を越えたデータ流通の促進のために日本がとってきたイニシアティブを紹介。そのうえでデジタル貿易について先進的な枠組みとなるとみられるIPEFや、WTOにおけるeCommerceの議論など、データやデジタルサービスに関するさまざまな国際的な取り組みは「トライ&エラー」の段階にあるとの見解を示しました。
そのほか登壇者からはプライバシー、セキュリティ、透明性といった基本要件に対する国際標準化や枠組み整備の必要性に加えて、各国におけるデータ人材の育成、データローカリゼーション要件の見直しなどについても指摘がありました。また経済を武器のように扱う国際情勢に対し、ブロックを形成して対立を激化させることに対する懸念が表明されました。
本日はいよいよ、最終日です。プログラムはこちらからご覧ください。
5/27 追記:第四日目のご紹介はこちら