「20代では技術士になれない」は、幻想である
よく「20代で技術士資格に挑戦するのは早すぎる」という声を聞きます。
しかし私は、決してそうではないと考えます。
私は、29歳で技術士試験に合格しました。業務への心がけ次第で、20代でも十分に技術士としての能力を備えることができると考えています。
ここでは、自身の経験やデータをもとにその詳細を書きたいと思います。
1. 全年代に占める20代の合格者の割合は少ない
統計上では、20代の技術士は確かに少ないです。技術士第二次試験の統計データを見ると、20代の合格者は全年代の5%程度であることが分かります。合格者の平均年齢は、43歳程度です。
年代別試験結果 合格者数(全合格者に占める割合)
20代 147人(5.2%)
30代 884人(31.4%)
・・・
平均年齢 43.3歳
(出典:令和元年度技術士第二次試験統計)
2. 20代の「合格率」は低くない
しかし、統計データを読み進めると「20代は経験不足だから合格しにくい」というイメージは事実と異なることが分かります。
年代別試験結果 同年代の受験者数に対する合格率
20代 10.2% (受験者1,437人中147人合格)
30代 13.6% (受験者6,480人中884人合格)
・・・
平均合格率 11.6% (受験者24,326人中2,819人合格)
(出典:令和元年度技術士第二次試験統計)
20代の受験者に対する合格者率は、全受験者に対する合格率と遜色ないことが統計データから分かります。20代だから技術士に受かりにくい、ということは決してないのです。ただ、受験者数が少ないだけです。
では、なぜ受験者数が少ないのでしょうか。
3. 実務経験が心理的なハードルに
技術士の受験資格には一定期間の実務経験が設けられており、技術士の受験資格を得るのは最短で20代後半です。20代にとって門戸が狭く感じるのは事実ですが、私は20代の受験者数が少ない理由は制度より心理面が大きいと考えます。
第二次試験では、技術士に求められる『科学技術に関する専門的応用能力(以下、応用能力といいます)』の有無を確かめるため実務経験の詳細について問われます。この「実務経験」が、心理的なハードルとなっていると感じています。
活躍されている技術士を見ると、多くの経験を積まれた立派な方ばかりです。その中では、「若手だからまだ経験不足だし・・・」と考えがちです(※その意識は、正しいと思います)。私の周りには、受験資格を有していてもまだ経験不足だと思うから受けないという20代の技術者が大勢いました。
でも、それは非常にもったいない!
技術士としての応用能力を備えている若手技術者は、多くいると考えるからです。
4. 経験の質が応用能力を高める
確かに、若手とベテランの経験年数からくる差は想像を絶するほど大きいです。能力が経験年数に比例するなら、太刀打ちできないでしょう。しかし、私は経験年数だけではなく実務経験の「質」が応用能力を高めると考えます。
質という言葉はあいまいですが、自分なりに表現すると例えば業務に関係する社会的背景や技術に対する視点の「豊富さ」です。
私の周りで若くして技術士になられた方の一人は、「携わったプロジェクトを俯瞰することが大切だ」と仰られていました。確かに、1つのプロジェクトにも、計画や設計、分析、評価など多くの業務がありますね。
若手だとその一部分だけを任されることになると思いますが、質問などで積極的に関わることも可能です。1つのプロジェクトでも、俯瞰し様々な業務に携わることで、実務経験の質を高めることができるのです。
そういった真面目な方は、特に最近の若手に増えていると感じます。「若手で受験しないのはもったいない!」と考える理由はここにあります。
皆さん、十分に受験する資格を有しているのですよ!
5. それでも不安だと思う若手技術者へ
私も「20代で試験を受ける資格があるのか?」と最初は不安でした。しかし、日々の業務に積極的に携わり研鑽を積むに従い、その不安はどんどん解消されました。
若手はこれから実務に携わる経験がどんどん増えます。経験不足は、否が応でも解消されます。それよりも、社会が求めているのは応用能力を持った技術者です。そして、応用能力は経験の量だけではなく「質」に大きく依存します。20代でも、その心がけ次第で十分に応用能力を備えている方は多くいるのです。
ぜひ、一歩踏み出して挑戦してみてください!