過去の災害を知る《7》ラジオで実況された火災〜昭和新潟大火(10月1日)~
家でのんびりしていると、スマホに突然近くで火災の知らせが…その時、あなたはどうしますか?どうせ小さな火災だって?いやいや、侮ってはいけません。
本日は、市街地で発生した大規模火災についてまとめます。
昭和新潟大火の概要
発生日時:1955年10月1日午前2時50分頃
延焼面積:78,000坪
被害 :負傷者 235人
焼失 1,235棟
被害額 46億円
1,000棟以上の建物を焼く市街地での大火
日本では、令和元年の1年間に37,538件、1日あたり約103件の火災が発生しています(消防統計より)。その規模は大小ありますが、大規模な市街地火災となると数百~数千棟が焼失することがあります。
最近だと、2016年の新潟県糸魚川市での大規模火災が記憶に新しいかと思います。
この昭和新潟大火でも、多くの建物が焼けて被害額が膨大となりました。しかし、幸いにも死者が出ませんでした。夜中の2時に発生したにもかかわらず、です。
今日は、その一つの理由かもしれない「ラジオでの火災実況」について紹介します。
ラジオ実況された火災
火災が発生した当時、新潟市は台風通過直後で吹き返しの風が強い状況でした。そのため、新潟の百貨店「大和」に入っていたラジオ局が台風情報を伝えるために一晩中詰めていました。
火災の発生を聞いたラジオ局は、市内を見渡せる百貨店の屋上から火災が広がる状況を生放送したのです。
強風の中、金網に身体をくくりつけてまで火の手が向かう方向を実況したそうです。最後はアナウンサーも避難したそうですが、実況自体は別の箇所からも実施し続けたそうです。
ラジオ実況が市民の避難判断の助けとなった可能性
テレビが普及していない当時、住民は映像などでリアルタイムに状況を把握することができませんでした。しかも夜中に発生した火災となると、避難は困難です。
そういった悪条件の中で、死者を一人も出さなかったことはやはり特筆すべき点だと思います。もちろん、台風に対し警戒態勢を引いていたなども考えられますが、ラジオ実況は、多くの方が逃げるための判断材料の一つとなった可能性があるのです。
災害情報にあふれる現代、どう行動に移すか
翻って現代は、ヘリコプターの映像や街に設置されたカメラから視覚的にも情報を得ることができます。昭和新潟大火の当時に比べると、情報に恵まれていると言えるでしょう。
しかし、問題はその情報を得た際に行動するかどうかです。
火災ではありませんが、平成30年西日本豪雨では、避難指示が伝わっていたにも関わらず逃げないことが問題になりました。
災害に関する情報が伝わったとしても、行動に移すかどうか。これが、現在直面している課題なのです。
国をはじめ、様々な自治体が、避難訓練の実施や災害の啓発活動などを通してこの課題に挑んでいます。しかし、課題解決にはまだまだ途上であると言えます。
さあ、今あなたのスマホに火災情報が入りました。どうしますか?
この記事を読んでいただく前と後で、少しでも情報に対する視点が変わっていたら幸いです。