鉄道工事の機械化における2つの課題(技術士向け)
コロナの影響で収入減に苦しむ鉄道会社ですが、人材不足にも悩まされています。対策の一つとして、終電繰り上げで深夜時間帯の作業時間を確保し人材減に対応するというニュースは、最近話題となりました。
その他にも、各鉄道会社は鉄道工事関連の施策として工事の機械化を挙げています。
JR西日本は、この機械化を通して「省力化・省人化にチャレンジ」すると紹介しています。確かに、「きつい、汚い、危険」の3Kと言われている鉄道工事を機械で効率化するという理論は、分かり易いです。
しかし、すぐに効果が出るかというとそう単純ではありません。
ここでは、機械化を進める上での課題とその対応策の例を2つ紹介します。
課題1.機械を扱える人材の確保
工事の機械化は、作業の工程や仕組みそのものを変えてしまうこともあり作業効率を何倍もアップさせます。しかし、その分新しい機械の操作方法やセットアップを学び、故障時の対応をしなければなりません。
機械を扱うためには専門性を持つ人材が必要ですが、これまでにない仕事であるため一から育てる必要があります。そのための教官や教育時間など様々な見通しを立てたうえで機械化を初めて検討できますが、そもそも人材不足という問題がある中で負担となります。
課題2.機械故障のリスク
機械が深夜に故障をしてしまい線路上に取り残されてしまうと、列車が走れなくなりお客様に迷惑が掛かります。実際、数年に1度は工事車両の故障で列車の運休が発生しています。
人力施工の場合、失敗した場合でも最悪線路を元の状態に戻せれば列車は走行できます。しかし、機械施工の場合、機械は簡単に撤去できません。
課題への対応例
人材育成への対応については、社内の技術者だけでなく機械メーカーなどへの支援を要請し効率的に教育することなどが考えられます。ただし、外部人材を登用する場合でも、鉄道工事には安全の確保から特殊なルールがあるため鉄道工事に関わる最低限の知識は身に着けてもらう必要はあります。
機械故障への対応については、工事前の入念なメンテナンスはもちろん、あらゆるケースを想定した対応を施工前から検討し準備しておく必要があります。最悪機械を線路外へ搬出する際の非常ルートの確保や人材配置、またシミュレーションなどを念入りに行う必要があります。
鉄道工事の機械化の成否はこれから決まる
この投稿では、鉄道会社が取り組む鉄道工事の機械化における課題について紹介しました。機械化というと聞こえはいいのですが、鉄道工事はこれまで人力に多く頼っていたため、まだ見えていない問題も多いと考えられます。その点で、JR西日本が言う「チャレンジ」はとても的を得ていると思います。
言うまでもなく、鉄道工事に最も大切なのは「人」です。今後、人材不足に悩まされる鉄道工事の環境が少しでも改善するかどうか、そうならない場合の問題点が何か、自分も技術士としてしっかりと追いたいと思います。