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電車ごっこは「スィー」?~ロングレール化のお話し~(後編)


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今回は、技術士試験も念頭に前回のお話しを深掘りしたいと思います。

■ロングレール化のメリット

ロングレール化のメリットとしては、主に以下が挙げられます。

ロングレール化のメリット
①騒音の低減
②乗り心地の向上
③保守作業量の減少

前回のお話では特に①について説明しましたが、他にも②や③のメリットがあります。

レール継目と車輪

②は、継目部に車輪が接した時の衝撃がもたらす車両の揺れ(動揺)が低減されるため、期待される効果です。

また、③は保守サイドからのメリットです。継目部を車両が通過すると、レールや継目板、道床バラストなど軌道材料に大きな衝撃が加わります。この衝撃により軌道材料が劣化するので「継目部は弱点」と言われます。ロングレール化によりこの衝撃は多少解消され、保守コストを低減させることができるのです。

特に③は、近年の労働人口減少に対する保守作業効率化の手段として挙げられることが多いです。ぜひ覚えておきましょう!

■ロングレール化の課題

併せて、ロングレール化の課題を押さえておきましょう。

ロングレール化の課題
①溶接の職人や専用の工具が必要
②溶接部のメンテナンスが必要
③後のレール交換工事は少し手間になる
④急カーブなど、ロングレール化できない箇所がある

①溶接の職人や専用の工具が必要
レールの溶接は日本では主に4種類あるのですが、種類によっては熟練した職人や専用の大掛かりな工具が必要となります。特に、職人である溶接工は近年労働環境の悪さから若者離れ、高齢化が進んでおり人材確保が大きな課題となっています。「計画は立てたけど、やってくれる人がいない」という状況もあり得るのです。(もちろん、業界全体で努力はされています。)

②溶接部のメンテナンスが必要

レール継目3

溶接が終わったらそのまま放置でいいかというと、そうではありません。溶接を実施した箇所は、前後のレールと比べて「硬さ」が変わっていることがあります(溶接時の熱の影響など)。

レールの上を車輪が走るとレールは摩耗しますが、硬さが変わるとその部分だけ摩耗が早く進行し凹むことがあります。凹んだ溶接部は継目と同じで、車輪の衝撃で音、振動が発生します。定期的に溶接部は検査し、メンテナンスする必要があるのです。そういったコストが増える認識が必要です。

③後のレール交換工事は少し手間になる
継目部がないと、レールを後で交換する際に切断や再度溶接が必要になり、工事のコストも増大します。実際、摩耗が激しく頻繁にレールを交換する箇所では、コスト面でロングレール化を見送っている場所もあります。

④急カーブなど、ロングレール化できない箇所がある
レールの温度変化の関係で、ロングレール化できない箇所があります。例えば橋梁、分岐器周辺、急カーブなどが挙げられます。すこし専門的になりますが、ざっくり言えば・・・
橋梁・急カーブ:ロングレールの温度上昇により、レールが変形するため
分岐器:レールの温度変化により、精密部である分岐器に狂いが生じるため


詳しい理論は割愛しますが、他の課題と比べ安全面に大きく関わる部分なので把握しておいてください。また、これらの課題を克服する技術も開発が進んでいます。

■メリットとデメリットを比べ方針を決定する

実際に現場でロングレール化を検討する場合は、上で述べたメリットやデメリットを勘案して決定します(もちろん、ここでは述べられていないこともありますが。)

技術士試験でも、メリットやデメリットに偏った議論ではなく、それぞれの強み弱みを認めた上での最善策を検討するようにしてください。




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