過去の災害を知る《3》突風による列車の横転〜日豊線南延岡駅構内列車脱線事故(9月17日)~
サラリーマンや学生の皆さんは最近、台風接近前の列車の「計画運休」に悩まされているのではないでしょうか。しかし、風を侮るなかれ。列車が強風によって脱線してしまう事故は、過去に何度も発生しています。
本日は、その中でも14年前に発生した鉄道の脱線事故についてまとめます。
日豊線南延岡駅構内列車脱線事故の概要
発生日時 :2006年9月17日14時4分ごろ
発生列車 :にちりん5号 南延岡行
発生場所 :宮崎県延岡市 日豊本線南延岡駅構内
被害 :5両のうち前から1、2両目が脱線横転、3両目が脱線
乗客乗員35名のうち7名が軽傷
台風に伴う竜巻が原因とみられる
この事故は、台風に伴う竜巻が原因の突風で列車が横転しました。
竜巻が発生した当時、九州地方でも宮崎県とは逆側の九州西岸を台風が通過していました。台風の中心から延岡市は約300kmも離れていましたが、不安定な気象状況で竜巻が発生しました。のちの調査より、この竜巻は風速50~69m/sレベルであったとみられています。
この竜巻で、延岡市内では家屋の被災が相次ぎ、3人の方が無くなられています。それほど強い竜巻が、日豊線を横切る際ににちりん5号を直撃したのです。
慎重に運転していたが脱線してしまった
脱線したにちりん5号は、25km/hの徐行速度で延岡駅から南延岡駅へ走行していました。事故調査報告書によると、目の前に障害物が見えたため停止し、その直後に脱線したとのことです。
もし所定速度で走行していたら、事故の規模はもっと大きかったかもしれません。竜巻に遭ったこと自体は不運としか言いようがありませんが、事故で死者を出さなかったのは不幸中の幸いでした。
列車はどのくらいの風で脱線してしまうのか
そもそも、列車はどの程度の風で倒れてしまうのでしょうか。曲線区間や乗車率など多くの変動要因があるため一概には言えませんが、鉄道会社は風速20~25m/sで運転休止を決める場合が多いようです。
鉄道会社は沿線に一定間隔で風速計を設置しており、その数値を参考に対応を決定します。
まず、風が強くなった段階で徐行規制がかかります。その理由として、障害物があればすぐに止まれること、また万一の脱線時の被害が抑えられることが挙げられます。
その後、さらに風が強まれば運転中止になります。そして運転再開前には、障害物がないか見回りを行うことで安全を担保しているのです。
今後の気候変動リスク
最近は気候変動により、台風の中でも最強クラスである「スーパー台風」が日本に襲来する頻度が高まると予想されています。
今後日本で発生する風はこれまでにないほど強くなり、また延岡のような竜巻なども合わせて発生する可能性もありますが、まだ予見できない点も多くあります。
予見できない事態に備え、前もって運休を決めてしまう「計画運休」は大いに有効な手段だと思います。
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