不思議な記事を見つけた。

https://note.com/denkousekka1/n/n864d39abfe92

一応軍事という分野を話のネタにしている(あくまでネタであり専門としている訳ではない=詳しくない事は理解してもらいたい。)筆者としてはちょっと引っかかる部分がいくつかありました。

今回はそれについて関連ワードの解説と共に色々書いていきます。


実際ロシアの北海道侵攻は「現時点で現実的とは言えない」

ロシアの北海道侵攻というのは今日明日に始まる物ではありません。
ウクライナ侵攻のようにそれなりの用意があって始まる物です。
ですがロシアが極東の兵力までもウクライナに投入している時点で北海道侵攻はしばらく難しいと筆者は考えます。

太平洋艦隊が保有する揚陸艦の数も足りているとは言い難いです。
これらが自衛隊の対艦ミサイルなどを掻い潜り無傷で上陸できる可能性は低いですし、仮にできたとしても陸上自衛隊の北部方面隊などを相手にしなければならず、それを実現するまでのハードルはかなり高いです。

太平洋艦隊の揚陸戦力は上陸用舟艇2隻ではない。

流石にこれは嘘をつきすぎです。
ロシア太平洋艦隊が運用するのはロプーチャ級揚陸艦3隻、タピール級揚陸艦1隻、その他上陸用舟艇が数隻だと筆者は記憶しております。

上陸用舟艇2隻というのは何かの間違いではないでしょうか?

ロシア太平洋艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ペレスヴェレート」

HGVは「迎撃不可能」ではない

加えて新型兵器として、ALBM「キンジャル」(空対艦 超音速弾道ミサイル)、迎撃不可能な極超音速滑空兵器 HGVアヴァンガルド(マッハ20)、海上発射型の極超音速巡航ミサイル HCMツィルコン(マッハ9)の実戦配備も把握している。

HGV(極超音速滑空体)は迎撃不可能ではありません。
終末段階という弾頭が目標へ向けて降下した時での迎撃自体は可能です。

ですがそれが簡単という訳ではない上、それでは広域防空が難しいのでHGV迎撃用のミサイルの開発を各国が行ってます。

HGV、HCMの配備がその地域になされていない=攻めてこない」とはならない

では北方周辺にこれらのミサイル兵器が配備されているのかについて、また
自衛隊によるこれらミサイルへの対処能力の記述が一切認められないのだ。

それでいてロシアが攻めてくるなどと恐怖を煽るマスメディアの論調は、
自国防衛を真剣に考えない愚か者としか言いようがない。

まるで「HGV(極超音速滑空体)やHCM(極超音速巡航ミサイル)が配備されていない=攻めてこない」という内容ですがそうではありません。

ウクライナ侵攻以前にHGV「アバンガルド」がロシア南部のオレンブルク州に配備されていましたが、ウクライナとはかなり離れた地域にありました。

そもそもHGVが弾道ミサイルの延長線上に存在する兵器であり、そこまで敵陣に近づける必要もないため、距離よりは射程で考えるべきでしょう。

(島嶼防衛用高速滑空弾が長射程であり、脅威圏の外から対処するスタンド・オフ防衛能力の切り札として位置付けられているように、この種類の兵器は敵と近い所にいなければならない訳ではないのです。)

日本によるHGV対処等の取り組み

GPI(滑空段階迎撃用誘導弾)

HGVに対処する為の取り組みで有名なのはGPIでしょう。
GPIは日米が共同開発を予定している極超音速兵器迎撃ミサイルです。
2030年代の実用化が目指されています。

03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上

国産の03式中距離地対空誘導弾(改善型)をベースにHGVなどの迎撃に対応させる計画です。
「早期研究開発分」と新規研究開発分」が存在し、前者はソフトウェアの改修による対応を予定しています。

運用イメージ図

HGV対処用誘導弾

GPIなどとは別に日本が独自で開発するのがHGV対処用誘導弾です。
イメージ図などを見る限りでは地上発射型が想定されており、発射機なども大型の物になるのではと筆者は考えます。

運用イメージ図

日米共同訓練の意味について誤解している

カタカナ語のオンパレード。直感的にヤバさが伝わってくる。

これをカッコいいなどと思う諸氏がいれば、貴方は洗脳されていると思ったほうがいい。

どのようにヤバいかは、日米共同で訓練しているのは、日本防衛がメインの内容になっていないということだ。
もちろん基礎訓練が行われておりそれが防衛訓練の一部であることは事実だが、ロシアや中国、北朝鮮の第一の脅威はミサイルであり、次に爆撃機、そして核攻撃であろう。これが訓練されていない日米共同演習を、日本防衛のためと安易に読み替える危険性を理解してほしい。

例えば例に出されている「オリエント・シールド」はその名の通り、東洋で想定される脅威に日米が盾として機能するべく連携を強化する訓練です。
その為、過去には共同対艦戦闘訓練が行われた事もあります。
要は防衛メインの内容で固められているのです。

米海兵隊との実働訓練「レゾリュート・ドラゴン」が島嶼防衛(島への侵攻に備えて常に警戒監視を行い、もし侵攻されたらこれを守ったり奪い返す事)を主眼に置いてある事などを踏まえると、日本防衛がメインになっていないという主張には無理があります。

領域横断作戦について誤解している

「陸上自衛隊と米海兵隊が個々に領域横断作戦と機動展開前進基地作戦EABOに必要な能力を向上させる」
領域とはどこを指すのか、具体的な説明がない。これが日本防衛につながる論旨を説明する必要があるだろう。

領域横断作戦の「領域」とは一言で言えば「陸海空+宇サ電」です。
と言っても「宇サ電」と言っても分からない人が多いでしょう。

現在の戦闘様相は従来の「陸・海・空」に加え、「宙・イバー・磁波」といった新たな領域を組み合わせた物となっています。

このような時代に敵に効果的な対応をするには従来の領域と新領域を有機的に融合する事が必要となります。

領域横断作戦はその相乗効果で全体の能力を増幅させ、個々の領域における能力が劣勢である場合でも全体で優位になり、日本の防衛が遂行できるのです。

イメージ図。

イメージ図にあるように、これからは全部の領域が一体となって敵と戦うと言えば分かりやすいでしょう。
説明がないというのは間違いです。

これらの説明は防衛省のサイトなどで確認できるのでそちらもおすすめです。

EABOについて誤解している

「宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を踏まえた領域横断作戦の能力向上が、米海兵隊では、機動展開前進基地作戦(EABO)構想に基づく、作戦実施要領の具体化及び能力向上が喫緊な課題」
前半部分は理解できるが、後段の前進基地作戦構想とは何だ?
日本列島が前進基地なのか、それとも侵攻した先での前進基地なのか?
定義がはっきりしないが、考えただけでヤバさを理解できなければならない。

EABO(機動展開前進基地作戦)は中国のA2/AD(接近阻止/領域拒否)と呼ばれる戦略に対抗するための作戦であり、そもそも後者はあり得ません。
前者に関しても実は間違っています。
前進基地は「戦域内の島」です。

また、「前進基地」と言っても大掛かりな施設などがある「基地」とは異なる物です。

そもそもなぜ定義も何もはっきりしないのにヤバさだけがはっきり理解できるというのは少しマズい気がします。

陸上自衛隊の共同訓練だけ注目してはいけない

日本の、対ロ、対中、対北への具体的な連携がなされているとは全く考えられない共同演習、共同訓練内容であることを指摘しておかねばならない。

もう一点懸念することは、これらの訓練の目的が何か?である。日本防衛を中心に行っていないとすると、どこかへ出かけて行ってする戦闘訓練ではないのか?という疑念さえも生じかねない。ソ連軍が戦車などを伴う陸上部隊で侵攻することはないと述べたが、であれば対戦車ミサイルであるジャベリンを訓練することにどのような意味があるのだろうか?これらを政治家および自衛隊が説明できていないことは非常に憂慮すべきことと言わざるを得ない。

仮に我が国の周辺に存在する敵国のいずれかが侵攻してきた場合、まず主戦場になるのは海と空です。
海上自衛隊、航空自衛隊の日米共同訓練などを見ればよく分かるでしょう。

では陸上自衛隊はいらないかと言えばそうではありません。
島嶼防衛や着上陸侵攻対処などを考えると必要な存在です。
だからこそ日米の相互連携、共同対処能力の向上は必要となってきます。

ちなみにジャベリンなどの対戦車誘導弾の訓練は敵装甲車両等の撃破を考えると不要とは言えません。
05式水陸両用戦車などを相手にすると考えれば必要でしょう。

これらに関しては自衛隊のサイトかYouTubeで詳細は理解できると思われます。

在日米軍=米海兵隊ではない。

在日占領米軍は沖縄を中心に、家族の帰国を進めているとも聞く。そして在日米軍もグアムまで主力を引くことを検討しているとも聞く。
日米演習をみれば、在日米軍が日本本土防衛を目的に存在しているのではない、という疑念しか浮かばないが、読者の見解を聞きたいと思う。

「在日米海兵隊」の一部を移転する計画は進められていますが「在日米軍」の主力を移転する話はされてもいませんし計画されてもいません。
それに在日米海兵隊も主力が移転するという訳ではありません。

そもそも前提が間違っている以上、そこから正しい考えが導き出せる事はほとんどないので色々疑問に思う点があるのは仕方ないのかもしれません。

最後に

リクエストか何かあればこの記事の派生という形で「分かりやすい島嶼防衛」とか「分かりやすい弾道ミサイル防衛」とか書くかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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鹿島響(あきづき)
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