お人好しのビジネスモデル
ビジネスには、ときとして「したたかさ」や「損得勘定」が求められるもの。
しかし、そうした性格が苦手な人も少なくありません。
むしろ、人の役に立ちたい、困っている人を助けたい…そんな「お人好し」な性格の持ち主のほうが多いのかもしれません。
今回は、「お人好し」な性格を活かしたビジネスの可能性について、ビジネスモデル鑑定士の古賀さんと、シニア層支援のNPOを運営する島田さんとの対話を通じて考えてみましょう。
「弱点」と思われがちな性格が、実は大きな「強み」になりうることに、2人は気づいていきます。
古賀さん「島田さん、この前のしわビジネスの調子はどうですか？あの日のカフェでの話し合いから、もう3ヶ月になりますね」
（あの日のカフェでの話し合い）
島田さん「ああ、古賀さん。相談があってメールを出そうと思っていたところなんです。色々と進展はあるんですが…ちょっと困ってまして」
古賀さん「どんな進展がありました？」
島田さん「シニアの方々の経験を活かしたコンサルティングは、予想以上に好評なんです。特に若手起業家の方々から相談が殺到していて」
古賀さん「良かったじゃないですか。私も期待していましたが、やはり『しわ』の価値は本物だったんですね」
島田さん「はい。でも、そこで問題が…私、お人好し過ぎて、ついつい無料相談を受けすぎてしまうんです。『お金がなくて困っています』って言われると、つい『じゃあ、今回は特別に…』って」
古賀さん「ああ、なるほど。収益化に苦労されているわけですね」
島田さん「そうなんです。NPOとしての活動は順調なんですが、ビジネスとしては全然ダメで。私って、こういうの向いてないのかな」
古賀さん「いえいえ、むしろそのお人好しな性格は、重要な資産になり得ますよ」
島田さん「本当ですか？ビジネスって、もっとしたたかじゃないといけないんじゃ…」
古賀さん「ちょっと説明が長くなるかもしれませんが、いいですか？ついつい教えたがりの私が出てしまいそうですが」
島田さん「ぜひお願いします。古賀さんの『教えたがり』なところ、私は好きですよ」
古賀さん「ははは、ありがとうございます。では、島田さんの無料相談は、マーケティングだと考えてみましょう。それも、とても効果的な」
島田さん「マーケティング…ですか」
古賀さん「はい。島田さんのお人好しな対応で、相談者との間に信頼関係が生まれていますよね？それが最大の資産です。ビジネスの基本は信頼関係ですから」
島田さん「確かに、一度相談に来られた方は、継続的に連絡をくださることが多いです」
古賀さん「そうですよね。で、ここからが大事なんです。基本的な相談は無料のまま続けつつ、より専門的なサービスを有料化するんです」
島田さん「具体的には、どんな感じでしょうか？」
古賀さん「たとえば、初回無料相談で信頼関係を築き、その後の継続的なコンサルティングは有料にする。または、グループセッションは無料で、個別相談は有料にするとか」
島田さん「なるほど。でも、お金の話を切り出すのが、なんだか申し訳なくて」
古賀さん「その気持ち、分かります。私も同じなんです。さっきの『教えたがり』も、つまるところ人の役に立ちたいという気持ちからきているんですよね」
島田さん「古賀さんもそうだったんですね」
古賀さん「ええ。ただ、これも大切なことなんですが、継続的に人の役に立つためには、事業として成り立つ必要があるんです。NPO活動と収益事業は、相反するものではありません」
島田さん「そうですよね。むしろ、収益がないと活動も続けられない」
古賀さん「そうなんです。それに、適切な対価をいただくことで、相手も『真剣にサービスを受けよう』という気持ちになります。それが結果的に、より良い支援につながるんです」
島田さん「お金をいただくことは、ある意味では相手のためにもなる」
古賀さん「ただし、ここで1つアドバイスを。値付けは最初から高額にせず、段階的に設定することをお勧めします。島田さんのお人好しな性格を活かしつつ、サービスの価値も守れます」
島田さん「具体的にはどんな感じでしょうか？」
古賀さん「例えば、初回無料相談、お試しプラン、レギュラープラン、プレミアムプランといった具合です。相談者の状況に応じて、適切なプランを選んでもらう」
島田さん「それなら、私も案内しやすそうです。相手の状況に合わせて提案できますもんね」
古賀さん「そうそう、まさにそれです。お人好しな性格は、相手の状況を察する能力の高さでもあるんです。それを活かさない手はありません」
島田さん「私の性格が、強みになるかもしれないんですね」
古賀さん「人を思いやる気持ちは、ビジネスでも大切な要素です。それを損得勘定だけで片付けてしまうのは、もったいない」
島田さん「ありがとうございます。今日は来て良かった…」
古賀さん「こうやって相談に乗れるのも、私の人徳ですな」
島田さん「自分で言った…」
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