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【講座メモ】体のあり方・声の大小・キャラクターの感情量

池袋コミュニティ・カレッジにて開催しております講座
「西村俊彦の朗読トレーニング」

中島敦の『名人伝』をテキストにしたシーズンの3回目は、
・体のあり方
・声の大小
・キャラクターの感情量などについて考えました。

・体のあり方

講座のはじめに、立つ/座るのエクササイズ。
勇敢に、怯えて、堂々と、など形容詞を添えて動きを行うことで動きには自然と質感が生まれます。
そこに声をつけていくと、自然とその「形容詞」の雰囲気を持った音色になるのでは…。

そこから一歩進み、「崖の上で弓を射る」といった、実際の物語中に人物が体験する動作・光景を想像し、そこに寄り添う声の出し方を探します。
「脚下は文字通りの壁立千仞」という地の文だったとしても、そこに
・恐れを感じているか
・爽快感を感じているか
で奏でられる言葉の質感は大分違うものになってくるはず。こういった感覚・感触・感情を地の文に盛り込んでいくと、より作品がクリアになってくるのではないでしょうか。
そのためにも、動きを想像する事は大きな助けになるはずです。

・声の大小

「しかし、弓はどうなさる、弓は」
という台詞を題材に、極めて機械的にテクニックの効果を実感しましょう。
しかし/弓はどうなさる/弓は
と3ブロックに分け、
小/小/小
小/大/小
大/小/大
など、声のボリュームを変化させて読んでみます。

フォントで表すとこんな感じ

ボリュームを機械的に変えるだけでも、全体に違った意味合いになってくるのではないでしょうか?
・呆然としている
・小さな疑問→大きな疑問→呆然
・驚愕→思考→異議をとなえる
など、ボリュームの大小に合わせて、流れる感情の変化のバリエーションが生まれてくるように聴こえるのではないでしょうか?
「もしこんな状況ならどんな声が出る?どんな気持ちになる?」
ロシアの有名な演出家・スタニスラフスキーが唱えた「マジック・イフ」
は、語りにも十二分に効果を発揮するテクニックです。

・キャラクターの感情量

弟子から暗殺されそうになり、別の師を紹介する事で弟子を自分から遠ざける師の飛衛。
その台詞を読む際に、彼の感情がどのような物だったかを考えます。

100%、弟子の成長を願ってのことでしょうか?
極度に弟子を恐れてのことでしょうか?
どちらか100に振り切れる事はなくても、少なくともこの2つの感情が微妙にブレンドされていることは、作品の流れの上で間違い無いことだと思います。
まずはどちらか100%に振り切って声を出してみましょう。やり過ぎる事で自分の表現の天井はどんどん高くなります。
そこからいい塩梅を探していく作業はなかなかに楽しい物です。
文章から読み取れる範囲、作者の描いた物と矛盾しない範囲で想像を膨らませつつ、
「あなたが弟子に暗殺されかけたらどう感じるか」という事も並行して考えます。
あなたの朗読には、あなたの血の通った飛衛がいた方が、きっと楽しいはずです。


というような事をやりました。

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