【読書・朗読】大事な事は恋と革命。太宰治『斜陽』感想とあらすじ
『斜陽』
著:太宰治
1947年
【感想】
上流階級の家庭が、戦後崩壊・没落していく様を描く。
お母さま、娘のかず子、弟の直治、直治が傾倒する作家の上原の人間関係が主軸。
かず子の視点からの物語ではあるけれど、
この四人の存在感が凄い。
戦争から帰還して人が変わってしまった直治、
高貴さをまとったまま病没する母、
輝いて見えた上原に再会した時の残念さ、
などなど、人が変化していく様子が面白い。
途中挿入される直治の日記には、
『人間失格』系の、太宰治の鬱々とした側面が色濃く流れてる気がする。
自分の、おぼっちゃん気質の身の上が嫌で、
不良めいた行動をするも、
不良の中でも「あいつはおぼっちゃんだ」と線を引かれる。
かといってもう、今の自分はおぼっちゃん世界に戻るには汚れすぎている。
どちらにも染まれず、漂う身の上の心情が吐露される迫力ある文章。
色々な変化がある中でも特に変わっていくのが、
メインキャラクターのかず子。
この人の変わりようが半端ない。
立派な家柄のお嬢様から始まって、
恋をきっかけにメキメキ人が変わり、
たくましくなっていく様が、活力に満ちていて
「おー!」
となる。
恋と革命。
そのために全力で動き回るかず子のエネルギー感。
絶望から立ち上がって、泥臭く生きていく感が、
発表当時の読者の心を打ったのやもしれない。
ロシアの作家・チェーホフをモチーフにした箇所が度々でて来るのが、
ああ、好きだったんだなぁ、
と面白い。
【本で読むならこれ】
『斜陽』新潮文庫
『斜陽』青空文庫
【全編朗読してます】
【ネタバレあらすじメモ】
1
華族のお母さますごい!
蛇の卵を燃やしたバチが当たるのでは?
お金なくなり田舎に引っ越した。
お母さまは直治に会いたい。
何か不穏な予感がする。
2
火事騒ぎ。
戦争中の思い出、地下足袋。
直治がアヘン中毒で帰ってくるらしい。
そのため、働きに出てほしいと言われ、
お母さまと喧嘩。お母さま、考え直す。
着物などを売って生きていけば良い。仲直り。
結婚後、細田さんとひめごとがあった事。
3
弟の日記読む。
弟の友人・上原との秘め事の話。
細田への憧れ、夫との確執。
「不良とは、優しさの事ではないかしら」
4
かず子から上原への、「愛人にしてくれ」
という旨の手紙何通も。返事はない。
M.C.へ、マイチェーホフ、マイチャイルド。
こわい。
5
大事なことは恋と革命。夢は革命家。
お母様、逝く。主役が一人退場。
6
戦闘開始。
かず子は上原さんを訪ねる。
病気を患ってすっかり見た目も変わったが、
上原さんと一夜を共にする。
迎えた朝、弟は自殺した。
7
「皆同じ人間」この言葉に恐怖し、苦悩した弟の手記。
彼は画家の妻に恋していた。
8
上原さんへの手紙。
子供が出来た。
直治の思い人に抱かせて
「直治と或る女の間に出来た子」
と言いたい。
強く生きていく。何世代も何世代も。
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