【ショートショート】猫と親父
本当にあった話。
猫は父の最後の友達だった。
一人暮らしの父の話し相手になり、一緒にテレビを見て、夜は同じ布団で寝た。
ある時。父を訪ねた私が帰り際に猫へ「父ちゃんを頼むぞ」と話しかけていたら、父にそれを見られていた。
「俺のことを猫に頼むやつがあるか。馬鹿野郎、この」
と、苦笑まじりに怒られたっけ。
やがて病気が悪化した父は施設に入所し、猫は妹一家に引き取られた。
愛くるしくて性格のよい猫は皆に可愛がられた。
数年後の深夜。
猫が狂ったように大騒ぎして、寝ていた妹家族を起こしてまわった。そんなことは一度もしたことがなかったのに。
すると、電話が鳴った。施設からだった。たった今、父が亡くなったと。
父が猫へ知らせたらしい。
それを聞いて思ったこと。
親父、子供より猫が先かよ。
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