泉宮糾一

物書きです。

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  • かつて小説が好きだった、普通の人のエッセイ

    普通のエッセイです。

  • 身辺雑記

    書きたいときに書くエッセイです。

  • 読書中はお静かに

    オリジナルの学園ミステリ小説です。 全三話中、noteでは第一話全てと第二話の推理パートを無料公開、解決パートを有料記事にします。

  • 左手よりも短い右手

  • ポケモン剣 2.5次元レポート

最近の記事

障害物の間を縫って進むくらいなら

 2月の中頃から一気に花粉症が悪化した。  まずコンタクトはしていられず、眼鏡に切り替えると帰る頃にはレンズが黄色い粉をふいていた。鞄に忍ばせていたポケットティッシュは文字通り紙屑でしかなく、ボックス型のを詰め込むとそれも一日で半分を使い切るありさまだった。  例年は目のかゆみにだけ眼科で目薬を処方してもらっていた。それも余るくらいの症状だったのだが、今年のは格が違う。鼻の方は市販薬で対処していたが、全くと言っていいほど効かなかった。  仕方なく仕事を休んで平日の昼間の耳

    • 無責任な年の瀬のふわふわした感じ

      前回の記事から今日までの一週間のうちにUnityのC#言語の入門的な本を読んだ。 「スラスラ読める Unity C#ふりがなプログラミング」という本で、一応ゲーム作りも含まれているけれど、その前段階のC#言語を日本語として読み下す方法から教えてくれる。 網羅的に教えてくれるわけではないが、言語の並び方や基本的な単語を理解するのを助けてくれた。 このように書くとまるで英語の文法書を紹介するときのような感じになりますね。 いい具合に興味が湧いてきているので、少し早いけどゲーム制

      • 今って別に区切りのいい時期じゃないな

        数日前にアスファルトの上で派手に転びまして両手とか両膝とかが傷だらけになった。 そんな身体を覆っていたスーツの方も無事では済まずに千切れていった。 たまたま新しいの買おうかなと思っていたところだったから平常心でいられているだけだと思う。 傷の痛みはかなりマシになったけど一週間足らずでは消え去らない。絆創膏を剥がすとえぐれた表皮の内側にピンク色の肉が見えている。痛みはないけどあまりそのままにもしていたくなくてついまた新しい絆創膏で覆いたくなる。 一番ダメージが大きい膝にはキズパ

        • ひもなしバンジーだったのかよ

           11月末にNintendo Switch Onlineで『ゴールデンアイ 007』が配信された。1997年にニンテンドー64で発売されたFPSだ。といってもその頃FPSなんて言葉は聞かなかったが。  小学生になって間もない頃の僕は家に友達を招いてこのゲームでよく遊んでいた。当時は007という小説も映画も知らなかった。ソ連の秘密計画を暴くストーリーの断片すら理解できず、そのためストーリーモードに目もくれなかった。  主にやっていたのは4:3のブラウン管テレビを四分割して行われ

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        記事

          わからないことはわからないままでいい

           今年になってクレジットカードを使うのに抵抗がなくなった。初夏に突発的に引っ越しを決めて、入用として活用していたのが、そのまま普段使いとしても定着し始めている。  今まで使わなかったのは使いこなす自信がなかったからだ。その日使った分が未来に引き落とされる、そのときに手持ちのお金が足らなかったらと思うと怖かった。電車に乗るときに網棚にものを載せたくないのと同じ心理だ。どんなに邪魔でも手に持っていたい。お金なら、現金なら怖くない。いくら財布がまんまるに膨らんでも、そのふくらみの分

          わからないことはわからないままでいい

          いずれ仲間を増やすかもしれない

           夏の終わりの頃にハイドロカルチャーのテーブルヤシを買った。  テーブルに置くための椰子。ハイドロカルチャーとは土の代わりに炭や焼き石などを詰めて、少量の水で育てる観葉植物のことだ。水耕栽培という言葉だけは聞いたことがあった。  このテーブルヤシをこの前うっかり肘で突いて、床に落としてしまったのだが、焼き石がいくらか散らばるだけで済んだ。  中身がさらけ出されて、本当に土が使われていない様を凝視した。空気にさらされた根は絡まって、パッと見ると土にも似ており、触れると少しだけ

          いずれ仲間を増やすかもしれない

          皇居の電線は俺が張ったんだ、と祖父は語った

           祖父が亡くなったのは2年前の年明け間もないときだった。  唐突な報せだったが、年の瀬にあいさつした際に随分苦しそうに呼吸をしていたので、予感はあった。コロナ禍の最中だったので、病院に搬送されてからすぐに隔離されてしまった。そのせいで死に目に会えなかったと、未だ健在な祖母がたまに恨み言をする。  息を引き取った祖父の寝姿はとても安らかだった。その様子を見て、もう何年、何十何年も祖父の穏やかな顔を見ていなかったことに気づいた。祖父の印象には、厳めしい顔で苦しそうに咳き込んでいる

          皇居の電線は俺が張ったんだ、と祖父は語った

          僕は地図を見ていなかった

           その日近所の中学校で、バスケットボールの練習試合が行われようとしていた。  僕が中学生のときにバスケ部だったことを憶えている人は今やほとんどいないだろう。僕自身でさえ疑わしいと思っている。運動にはおよそ縁がない人生のはずなのに、なぜおよそ休むことを許されずコート内を走り回るあのスポーツに足を突っ込んでいたのかわからない。スラムダンク世代でもなかったのに。  僕は自転車で目的地の中学校へ向かっていた。他の部員を一人だけ連れていた。どうして僕が彼を連れていくことになったのか、い

          僕は地図を見ていなかった

          楽しいって、もしかしてそういう意味ですか?

          「あー、楽しかった」  隣の席から声が聞こえてきた。お年を召した女性と、その人より少し若いもう一人の女性が、帰り支度を始めていた。  娘と母か、義母か。そう推し量ったのは、若い方が「お父さん」のことを話題にしているのが細切れに聞こえてきていたからだった。「お父さんすっかり耳が遠くなって」という具合に。お父さんはお義父さんかもしれないとは思った。でも全然違う、思いもよらない関係かもしれない。  いずれにしても、愚痴交じりに話していたのは若い女性の方だった。老婦人は聞き役に徹して

          楽しいって、もしかしてそういう意味ですか?

          【感想文】『君たちはどう生きるか』を観ました【ネタバレあり】

          はじめに スタジオジブリ・宮崎駿最新作『君たちはどう生きるか』が7月14日に公開された。 宣伝をしないという宣伝について、考えたことを前回述べた。 今回はネタバレありの感想文として、内容に触れていきたいと思う。 なお、公式サイト上では作品の概要や登場人物などの設定が未だ載せられていない。情報を統制したいという公式の意図をくみ取って、あらすじの説明は最低限のものに抑えたい。 また、公式サイト上はもちろんパンフレットもないため、内容の理解に誤りがありうる。あまりに大きい誤りであ

          【感想文】『君たちはどう生きるか』を観ました【ネタバレあり】

          【感想文ではない】『君たちはどう生きるか』を観ます【ネタバレでもない】

          スタジオジブリ・宮崎駿最新作『君たちはどう生きるか』が7月14日に公開された。 曰く「まっさらな状態で映画を観て欲しいという思い」から、事前情報はタイトルと青い鳥の帽子?を被ったようなポスターのみしかない。主題歌や出演者に対する憶測は飛び交っていたし、多少は目に入ったが、せっかく公式が配慮してくれているのだからと、ネタバレを食らわないように必死だった。 公開初日の朝までにSNSを見るのを止めて、ネットニュースも避ける。それでも現代社会は広告や記事が氾濫しており、検索画面の端

          【感想文ではない】『君たちはどう生きるか』を観ます【ネタバレでもない】

          均衡

          新居の契約を交わす際に、不動産屋から公共料金の一括申し込みサービスのようなことをしてくれる民間業者を教えられたのだが、ものすごくつらそうに話すものだから全部自分でやると伝えて済ませた。一度その業者から電話が掛かってきたのだが無視をした。どうして僕の電話番号を知っているのか追及するまでもない。 民営化している電気もガスもインターネットから申し込めたのだが、割安と謳うサービスが細々紹介されていて、内容云々よりもまず目にうるさかった。その点水道は市役所の担当課に直接連絡する必要が

          近況報告

          前回までのあらすじ(書いてない) 酒浸りのまま返答のしようのない言葉を投げかけ続ける父親、ろくに会話することもなく何を考えているかすらわからない弟、ときどき自分が某国の暗殺者に命を狙われていると真顔で告げる母親と一緒の空間にいることに精神的に疲れ果てた折、ひどい頭痛に襲われて職場を早退している間にスイッチが入り、家族に懇願して実家からの転出を決意した。 自分の収入や資産を考慮しつつ今よりマシな環境を求めて新居を探す。いい暮らしをしようという欲が湧いてきた翌日にはいやだいぶ生活

          記録

          八年くらい続けていた読了記録を、つけなくなって3ヶ月近く経った。 意識して始めたものではなかった。たまたま手元にスマホがなかったとか、そんなことがきっかけだったと思う。 かといって読書自体は相変わらず続いている。 記録をしなくてもいいと思うと、読了への意欲も薄れ、気ままに渡り歩くように読むようになった。 小説もすっかり縁遠くなった。これは二年ほどの間に進んでいたもので、始まった当初の危機感もすっかり薄れている。 とか書きつつ、『街とその不確かな壁』はしっかり買った。 読めな

          コンタクト

          二月の末に、急にコンタクトを買いたくなった。 眼科で諸々の検査があり、緑内障になりやすい目だなどと脅されて、怖がっているうちに看護師の手でレンズが嵌め込まれた。 当然、視界はクリアになる。 鏡には知らない人が映っていた。 遥か昔に見た幼稚園の卒園アルバムに載っていた自分の顔によく似ていた。つまりそれは僕の顔だった。 眼鏡のない自分の顔をクリアに見るのはおそらく十五年ぶりだ。忘却するには十分すぎる長さだった。 大丈夫ですかと看護師に声を掛けられる。その人の眼球の左目だけが充血し

          コンタクト

          【感想文】ゼノブレイド3【ネタバレあり】

          はじめに  横になって目を閉じる。暗闇と静寂に親しみ、寝間着の毛羽立ちも気にならなくなり、意識は落ちる。自分の与り知らぬところで、副交感神経が最小限の電気信号により呼吸を維持し、血液を循環させている。循環の方法が自然であるか人工であるかの差に今はひとまず目をつぶる。眠ることと死ぬことの違いはここにある。あるいは、ここにしかない。  死ぬことを考えるのは怖い。そこには自分の意識は届かない。自分ではどうにもできないのに、決定的に自分を終わらせてしまう。死を遠ざけたいと思うのは当

          【感想文】ゼノブレイド3【ネタバレあり】