過去を振り返るからこそ、僕らは未来へ進むことができる
リーダーがげきを飛ばし、くじけそうな仲間たちを勇気づけ、前へと引っ張っていく。そんなシーンをジャ○プの熱血少年マンガで見たことのある方も多いのではないでしょうか。
でも、私たちの住む現実世界には、友情・努力・勝利の他にも忘れてはならない要素があります。
それが「振り返り」です。
今回は、SmartHRさんの「年末調整振り返り会議」に潜入取材を行った際の、こぼれ話をご紹介します。
※取材記事の本編はこちら👇
年末調整とは「一大プロジェクト」である
「会社のホームページをリニューアルする」
「創立記念のイベントを開催する」
「会社へ新しいシステムを導入する」
世の中にはさまざまなプロジェクトがありますが、「年末調整」もまた、これらに匹敵する一大プロジェクトです。
年末調整はおおむね10月下旬ごろからスタートし、翌年1月末に税務署へ法定調書を提出するまで、3か月以上をかけておこなわれます。
「3か月以上」と聞くとどこか余裕があるようにも思えてしまいますが、年末は人事評価や賞与の計算など、年末調整以外にも労務関係の重要な業務が発生する時期です。
それらと並行して作業を進めつつ、SmartHRさんの場合は12月の給与で還付/徴収を行って、源泉徴収票の配布まで行わねばなりませんでした。
しかも、従業員の給与に影響するものですので、ミスや失敗は許されない……限られた期間内で、社内から集まってくる大量の書類を、漏れなく・ミスなくチェックし処理する必要があります。
このように、歴戦のプロジェクト・マネージャーでも一瞬たじろいでしまうような一大プロジェクト。 それが、年末調整なのです。
プロジェクトにおける「振り返り」の重要性
年末調整に限ったことではありませんが、
ということは、意外と多く起こります。
特に年末調整の場合、プロジェクトリーダーの役割は持ち回りで行われることが多く、毎年同じ人ではないため前回の経験が生かしにくい、という事情もあります。
年末調整が始まってから、「あぁ、これは前の年にも苦労したんだった」と思い出し、でも同じようにやるしかないと、残業を増やしてがんばる……そんな苦労を繰り返さないために大切なものこそが
振り返り
です。一般的なプロジェクトでは、プロジェクトが終了した際に『ポストプロジェクトレビュー(PPR)』と呼ばれるものが実施されます。これは、単なる“反省会”的な意味合いを越えて
プロジェクトから得られた「学ぶべき内容」を確認し、将来のプロジェクトへの知識継承や、社内への還元を行う
ことを目的に行われます。プロジェクトが終わった後に「振り返り」を行うかどうかで、次のプロジェクトの成功確率が左右される、とも言われています。
来年の自分たちを少しでも楽にするために、振り返りはとても大切なのです。
※参考資料:『解説:プロジェクトマネジメントにおける知識継承』 内平直志|北陸先端科学技術大学院大学
振り返りで実現した大きな二つの「意思決定」
今回、SmartHRさんで行われた「年末調整振り返り会議」では、翌年に向けて二つの大きな意思決定を行うことができました。
※しつこいですが取材記事の本編はこちら👇
意思決定(1) 「前職の源泉徴収票は、入社時に回収しよう」
SmartHRさんではこれまで、「前職の源泉徴収票の情報」を年末調整時に従業員本人に入力してもらっていました。
しかし、年末調整が差し迫ってから前職の会社に依頼をしても、源泉徴収票を出してもらうまでに時間がかかることも多く、入力が期限に間に合わないケースが発生していました。
「年末調整より前にあらかじめ回収しておく」という選択肢もありましたが、そうなると今度は「給与システムへ入力する」という作業が増えるため、「あらかじめ回収しておこう」という意思決定には、なかなか至っていませんでした。
しかし今回、振り返り会議を行ったことにより、メンバーの中にある“共通の想い”があることが分かったのです。
—— 従業員にも、相手の会社にも、負担をかけたくない
年末調整のタイミングで前職の会社に源泉徴収票を依頼するとなると、退職したタイミングによっては何か月も間が空いてしまうことになります。
従業員にとっては、辞めてからしばらくたった会社に連絡を取るのは心理的に大きな負担です。「従業員のみんなが働きやすい環境を作る」ことが労務のミッションなのに、その逆をいってしまうことになります。
そして、相手の会社にとっては、ただでさえ忙しい年末の時期に何か月も前に辞めた従業員の源泉徴収票を発行することは大きな手間です。同じ労務担当として、その苦労は痛いほど分かっているはずでした。
—— そこまで分かっているなら、変えるべきじゃないか
振り返りを行うことにより、メンバーの“想い”を共通認識として持つことができました。
さらに、業務プロセスを見直してみると、給与システムへの入力作業については「派遣のスタッフさんにお願いをして、『入社対応業務』の一つとしてやってもらえばいいのでは?」という気づきも生まれました。
その結果、
「前職の源泉徴収票は、入社時に回収しよう」
という意思決定ができたのです。
意思決定(2)「トリプルチェックまでは必要ない。ダブルチェックにしよう」
冒頭でご紹介したように、年末調整は従業員の給与に影響するものですので、ミスや失敗は許されません。抜け漏れを防ぐために、SmartHRさんではこれまでトリプルチェックを行っていました。
仕事では耳にする機会も多いワードですが、実は、かなり負担の多い工程でもあります。
自分で2回・3回と確認したとしても、それはダブル/トリプルチェックとは呼べません。セルフチェックに意味がないとは言いませんが、人間は誰しも間違いをおかすものであり、それを自分自身で見つけることは困難だからです。
別の人の目で見てチェックすることが、ダブル/トリプルチェックの原則です。
※参考:ダブルチェックの原則 | 経営 | 稲盛和夫について | 稲盛和夫 オフィシャルサイト
…ということは、トリプルチェックを行うためには3人の担当者を用意しなければならないことになります。ただでさえ忙しい年末の時期、期限に追われつつ何百人分もの書類をトリプルチェックするのはかなりの負担です。
しかも、チェック作業は油断するとすぐに形骸化してしまうため、本当に意味のあるトリプルチェックをしようとすると、メンバーの心理的負担は計り知れません。
※これは「社会的手抜き」と呼ばれていて、ちゃんとした論文もあります👇
ダブルチェックの社会的手抜き
ただ、年末調整は年1回のプロジェクトであり、SmartHRでの経験が浅いメンバーが毎年誰かしらいることから、
「やっぱり、トリプルチェックはした方がいいよね…」
と思われていて、これまで継続されてきていました。
それが、今回の振り返り会議によって「やめる」という意思決定をすることができたのです。
実は、今回の年末調整ではダブルチェックで問題がないかどうかの検証を行っており、結果として大丈夫であることが分かっていました。
しかし、翌年の年末調整の時期になり、新しいプロジェクト・リーダーが「多くの年は、トリプルチェックをしていた」という履歴を見たときにどう思うでしょう。
「今年はダブルチェックで行こう」という決断にはかなり勇気が必要なはずです。
ミスは許されないというプレッシャーにさらされたとき、「一応、例年にならってトリプルチェックにしておこうか…」という意思決定に流れてしまうことは想像に難くありません。
だからこそ、未来のメンバーへのメッセージとして、現メンバーが「ダブルチェックにしよう」という決意表明をしておくことが、とても重要だったのです。
未来の自分を「楽」にするために、過去の自分を振り返る
松下幸之助もこう述べているように、ときに立ち止まって過去を振り返り、そこからどのような学びが得られたのかを考えることが、未来への成長へとつながっていきます。
当社がさまざまな企業様からお話を伺うなかでは、年末調整に対して、
プロジェクトリーダーの役割は持ち回りで行われることが多く、毎年同じ人ではないため前回の経験が生かしにくい
年末調整が始まってから、「あぁ、これは前の年にも苦労したんだった」と思い出し、でも同じようにやるしかないと、残業を増やしてがんばる
…という課題をお持ちの方は意外に多くいらっしゃいます。
未来の自分たちがより効率よく、そして楽に業務を進められるように、みなさんも年末調整の振り返りをしてみませんか?
今回ご登場いただいたSmartHRさんとは別の企業様ですが、実際にBYARDを使って年末調整の振り返りをしている様子は、以下の動画もぜひご覧ください。
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