駄作
愛しているからという免罪符で好きでもない名前をつけられ、何の説明もなくしたくもない勉強や運動をただ無心にさせられ、常にそうやって受動態に徹するからおまえはダメなんだと呪詛のように唱えられたらもう四面楚歌で抵抗する気も失せる。
青春は美しいものなどという子供騙しを見抜けずに、自意識過剰な同級生どもがその限られた日々を土足で荒らしていくのを無力に眺めているうちに気づけばもう若くはなくなる。
本当に心からなりたいわけでもなかったけど周囲との兼ね合いとか周囲が気にするであろう世間体で選んだ進路を、踠き苦しみながら泳ぎ何とか一つ目のゴールにたどりついて人生の第1章を無理矢理完成させて、当然ながら第2章の書き出しが全く思い浮かばない。
誰のために生きているのか。
そんなことも分からないようなやつだからお前はダメなんだ。と別の声が現れて言うだけ。
こんなちっぽけな内省世界も、相変わらずの二枚舌で要求と批判ばっかりの周辺世界にも
既視感しか覚えない。退屈だけが側にいる。
何もしたくない。
何かしようと色々手を出したところで、それらを継続していくだけの動力が切れている。ハッタリがきいてるだけで別にもともと大して面白い人間でも何でもない。
案外みんな鋭いから、期待していたより空洞な僕を見て勝手にがっかりしているんだろう。辛うじて残った個性を神経使って増幅させて自分らしく生きようったって、そういう無理な個性は集団の普通さに簡単に敗北する。そもそも奇を衒うのは好きじゃない。
敗北しかわからない。
集団の中にいて敗北感以外の感情を抱いた試しがない。何と勝負した訳でもないのに。
そういえば昔、おまえの成績が良いせいで俺が親に叱られると言ってきたやつがいたな。あの時は実に理不尽な苦情だと思っていたが今思うと実にあわれな奴だ。僕はその頃も今も親御さんの言うようなできた人間じゃない。幼き日の君は何もこんなもぬけの殻みたいな人間のせいで苦しまなくても良かっただろうに。
オンラインゲームに興じているか眠っているかして圧し殺した自我すらも完全に失った状態でしか心の平静を保てない。
目覚ましが鳴り自己が自己を認識した瞬間から既に苦行は始まってしまう。かと言って実際問題死ぬほど何かに追い詰められている訳でもない。そう、本当に何もしたくない。ただそれだけ。
こんな駄作でも続けてさえいれば何かのエピソードで趣も変わるかもしれない、そう事実は小説より奇なりとも言うし。
そう暗示をかけて生きていくつもりだが正直喉のあたりにいつも引っかかって飲み込めない。嚥下障害ってやつだろうか。
とにかく大変なことはもう何もしたくない。真面目にだらだらと、僕はそれでいい。