ガール・レディ・バード
あら、可愛いわね。
片田舎の6月。白いカッターシャツを着て自転車を押して坂を歩いていたら、ちょうど花の水遣りに出てきた近所のおばさんに微笑まれた。
視線の先を見ると、いつのまにか自分の左胸にワンポイントの刺繍があった。天道虫だ。
気恥ずかしさに小さくなりながら、あまり揺らさないようにゆっくりと歩いてみたけれど、すぐにその名の通り南西の空へと羽ばたいた。冴えない僕に嫌気がさしたんだろう。
おばさんは時折こうして名前も知らない僕に話しかけてくれる。初めて言われたのが「そんな暗い顔