筑後吉井 ――白壁となまこ壁のある街
みなさんは「なまこ壁」というものをご存じでしょうか。蔵などの壁の下の部分に黒地に白い模様が入っている、アレです。
私はヤシの木以外にも、町中に潜んでいるなまこ壁を採集しています。採集とはいっても、なまこ壁が好きだからコレクションしているというより、なまこ壁がどのように使われているかが気になるから、事例を集めているというほうが正確です。
前置きが過ぎました。今回はそんななまこ壁がいたるところにみられる、福岡県うきは市の筑後吉井という街を紹介します。
久留米から久大本線の列車で約40分、筑後吉井に到着。駅を降りて駅舎を見てみると、もうなまこ壁があしらわれたその姿を目に入ってきます。しかも右手にあるトイレの壁も、なまこ壁。
筑後吉井は豊後街道沿いの宿場町として、また周辺の物資の集散地として発展しました。写真のような現在の白壁が連なる街並みの原型は大正期につくられたとのこと。
そんな筑後吉井は伝統的建造物群保存地区に選定されています。街の中には神社の緑や水路があり、街歩きしても様々な表情が見えて楽しい街です。
酒蔵を改装した、その名もズバリ「土蔵(くら)」という観光案内所があります(写真左)。こちらもなまこ壁が見えますね。
その駐車場案内の看板にも、なまこ壁らしきものが。
どうやら催し物の紹介看板にも、土蔵を意識してか、なまこ壁が使われているようです。
ちかくの整骨院にもなまこ壁が。屋根もついていますし、蔵を模しているのか。
この辺で「本物」のなまこ壁を見てみましょう。基本的には黒い部分が瓦、白い部分が漆喰でできています。瓦の部分にも模様が入っていて、芸が細かいですね。
案内図にもなまこ壁の意匠があしらわれています。ここまでくると、その意匠が記号的につかわれてると思いませんか?
こちらも見つけた案内の柱ですが、柱の下部にあるのはかなり簡略的に表されたなまこ壁ではないでしょうか。
極めつけはこちら。「白壁交流広場」の床がなまこ壁の模様のようになっているではありませんか(航空写真で見るとわかりやすい)。
広場の名前の通り、白壁の街並みで売っている筑後吉井ですが、私の目からすると「なまこ」たちが至る所に生息している面白い街なのです。
さて、なまこづくしな文章でしたが、そんなマニアックな目線で見ずとも、歴史のある街並みを散策しつつ、リノベーションされたカフェや本屋さんなどを巡って、街歩きするのに素敵で落ち着いた街、筑後吉井でした。
参考資料
うきは市ホームページ 筑後吉井伝統的建造物群保存地区 http://www.city.ukiha.fukuoka.jp/imgkiji/pub/detail.aspx?c_id=71&id=21&pg=2 2021年1月30日最終閲覧