「Webフロントエンド技術で作る体験型コンテンツ勉強会」を開催しました
2024年2月17日-18日の2日間をかけて「Webフロントエンド技術で作る体験型コンテンツ勉強会」を開催しました。参加いただいたみなさま、ご協力いただいたみなさまのおかげで、結果として運営していた我々にとっても、とても刺激的で有意義な会になったと思うので、開催までの経緯とか、当日の内容などを振り返り的にまとめてみます。
開催に至るまでの経緯
コロナ禍が明け、一時はどうなることかと不安をずっと抱えていた世の中の展示や体験型のコンテンツ設置やイベント実施も、少しづつ需要が戻ってきました。
どうしようもない事態であるということは理解しながらも、決まっていた案件が次々となくなったり、作りたいものを作ることが出来ないような状態が先行きも見えないままずっと続いて、悔しい思いをしてきたこともあり、展示を考えたり作ったりする機会がもどってきたのは、心の底から嬉しい。
さあ、これからたくさん色んなアイデアを形にして、世の中にもっと体験を送り出していくぞ、と意気込む反面、やはりこの業界は作り手がそもそも少なく( 関西は特に ) 、具体的な案件があっても、チームを組成することがタイミングによっては難しいということが多々あります。もちろん採用においても、パートナー探しにおいても、そもそもプレイヤーが少ないという状況においては、良い出会いも当然少なくなります。
STARRYWORKSもBUTTONも今でこそ、たくさんの体験型のコンテンツを制作させて頂いていますが、元々はWebサイトの制作を生業とするメンバーで構成されています。そこから少しづつ自分たちでノウハウや経験を積み上げて、現場の展示案件をリードして実施に導けるようになりました。
そんな我々だからこそ、おそらくWeb制作に携わる方々に向けて、体験型展示制作の扉を開くところまでは、色々と共有できる事があるんじゃないか。そんな話をSTARRYWORKS代表の木村と雑談している中で「じゃあやってみようか」という事になったのがスタート地点でした。
前提として決めたこと
実施に向けて具体的な計画をする中で、最初に決めたことがいくつかあります。
2日間通しで実施すること
座学によるレクチャーに絞れば、数時間から半日くらいの時間でも開催することはできたと思いますが、体験型コンテンツの場合は、いろんなインプット / アウトプットの機材が必要になってくるため、家にかえってから実際に手を動かしてやってみようかと思っても、できることが限られてきます。
どんなことでもそうですが、取得した知識は、実際に手を動かしてやってみることで、経験として身について、それがスキルになっていくと思っています。知識を得てから、実際にやってみるまでの期間が空いてしまうと、どうしても熱量が冷めてしまったり、つまづいた部分がフォローされないまま諦めてしまう可能性が増えて、ハードルが高くなるので、しっかりまとまった時間をとって知識を得る所から、実際にやってみるところまでを一気通貫で出来ることが最低限必要、そしてできれば自分でアイデアを考えて小さな作品を作る、というところまでいければ、あとは自分の興味や熱量で自走していける可能性が高いのでは、という思いがあり、参加のハードルは上がると思いながらも2日間終日通しで実施することを前提としました。
少人数で実施すること
上の目的と重なりますが、人数が多くなりすぎると、どうしてもフォローが薄くなり、なんとなくよくわからない、うまくいかないまま終わってしまった、というケースも多くなります。今回は初めての試みでもあったし、こちらが割ける技術スタッフの数にも限りがあるので、手広くやる、というよりも、参加してくださった方と密度高く出来るだけ向き合えるような時間にしたいという気持ちから、10人から多くても15人くらいが限界だろうというところを大事にしました。
無料で実施すること
STARRYにとってもBUTTONにとっても採用や一緒にプロジェクトに参加してくれるパートナーとの出会いを求めた場所でもあるので、最初からお金とってやろうという頭がそもそも無かったというのもありますが、テーマ的にどこまで興味をもってくれる人がいるかわからない上に、大阪で、しかも休日二日間をぶち抜いてやる勉強会で、そもそも参加のハードルが、他のイベントよりかなり高いので、出来るだけ参加の裾野を広げたい、というのが前提としてありました。
思ったよりたくさんの人が興味をもってくれた
正直なところ、当初は10人いくかいかないかくらいか、20人応募があったら御の字だなぁと思っていたのですが、蓋を開けてみれば70名を超える応募をいただき、興味を持っていただける方がこれだけいるんだという事実を心強く感じました。
運営のメンバーで、応募いただいた方のポートフォリオや、過去に制作されたものを一つづつ見させて頂いて、めちゃくちゃ難しかったのですが、色んな観点を議論しながら参加いただく方を決めて行きました。熱意や実績も含め、本当はみんな参加してほしいとおもうようなレベルの応募が多数だったので、本当に悩みましたし、相当に時間がかかりました。
もう一つ、とても嬉しかったこととして、現役の高校生からの応募があったこと。運営メンバー内でも、これは本来の枠から拡張しても、ぜひ来てもらいたいし、実際にクリエイティブの仕事にしている色んな参加者とも交流してほしい、という想いもあり、1枠だけ拡張してぜひとも参加していただこう、ということになりました。
初日
そんなこんなでバタバタしている間に当日を迎えます。
最初に参加者を含めた全員の自己紹介を簡単にしたあと、早速技術のレクチャーに入ります。 技術講義のアウトラインはこんな感じ。
技術レクチャーのアウトライン
Electronの基本
Hello World
p5.jsでの描画
OSC
DMX
MIDI
さまざまなインプット
インプットとは
よく利用されるインプット一覧
さまざまなセンサ類
例 : 測域センサ
例 : Kinect
例 : ZigSim
例 : Arduino
例 : TouchOSC
さまざまなアウトプット
アウトプットとは
よく利用されるアウトプット一覧
例 : モーター
例 : レーザー
例 : Arduino
おまけ
技術講義は木村がカリキュラムの作成からレクチャーまでを担当し、ほぼ全ての項目に対して、知識のインプットである座学と、それを実際に動作させてみるハンズオンをセットとして実施。利用する機材類も全て持ち込んで、どうやって動かすのか、どのように動くのか、などを実際にひとつづつ全員が動作させながら進めて行きました。
カバーの範囲がかなり広かったこともあり、若干2日目に溢れてしまう項目もありましたが、事前に参加者全員が同じネットワークから様々な機材を操作できるためのシステムをつくっていたこと、何より参加者のみなさんの熱量や理解度の高さにたすけられて、滞りなく全工程を体験してもらうことが出来たと思います。
やっぱり実際に「モノがうごいた」という感動は、いつもすごく大きくて、参加者のみなさんが目をキラキラさせて体験されていたのがとても印象的でした。
また両日ともに技術解説とハンズオンが中心の構成にはしていましたが、実際の案件の中でエンジニアも積極的に関与できる領域である「企画」と「現場」という二つのテーマについては、簡単にでもいいので触れておこう、ということで、僭越ながら僕が1日1時間ずつお時間をいただいて、この二つのテーマについてお話しをさせて頂きました。
企画レクチャーのアウトライン
実際の体験型コンテンツプロジェクトの進め方の例
どうやって体験型コンテンツの仕事をつくるのか
体験型コンテンツの企画について
体験型コンテンツ企画の前提
企画の際に押さえておくべきポイント
アイディエーションにおけるエンジニアならではの目線
フィードバック感の重要性
実現性の検討
質疑応答
1時間しか時間がない中での説明ではあったので、あまり広範囲にカバーすることはできませんでしたが、ばっくりとした全体概要から、エンジニアが企画にコミットするための視点としてプラスになるような項目をピックアップしながらお話ししました。
2日目
2日目は最初に「現場」の項目の座学レクチャーから開始。
実地にインストールする体験型コンテンツは現場と切り離して考えることは難しく、システムの構成上、エンジニアにリードが求められることも多々あるため、その辺りの勘所をもってもらうことを目的とした構成にしました。
現場レクチャーのアウトライン
プロジェクト全体の座組について
現場調査での確認ポイント
電源の位置
電気容量と系統
照度
環境音
動線
電波強度
制御機材の設置場所
吊元
障害物の位置
図面手配の可否
セキュリティ要件の確認
搬入経路
制作中のポイント
機材の設定
什器合わせなどの関連パートの進捗把握
インナーテストの重要性
設置・運用計画
インストール時のポイント
計画の実行と想定外への対処
作業中の安全への考え方
安全であること
体験型コンテンツは十分に安全であることが大前提
対象年齢やコンテンツの性質ごとに安全であることを厳しく考える
質疑応答
こういった項目はWeb制作の中ではなかなか必要になることがありません。そのため、そんなに難解なことでなかったとしても、知らなければつまづいてしまうような落とし穴が最初はたくさんあります。こちらも1時間という短い時間の説明になりましたが、こんな観点があるということを具体的に知っておいてもらう、ということを目的に構成しました。
特に安全面については、こういった話を人前でするときは必ずしているのですが、体験型コンテンツは一歩間違えると物理的な危険を体験者に及ぼすことになります。我々制作者はその事実をしっかりと認識して、最低限ではなく、必要十分な安全への配慮を前提にものづくりを進める必要があるということは、心に留め置いてもらえるように、最後に一番大事な話としてお伝えしました。
その後、初日に時間の都合で説明がもれてしまった項目の座学 + ハンズオンを午前中に実施した後、お昼休憩をはさんで、いよいよ自由制作。各々使いたい機材をつかって、自分のアイデアを形にした小さな作品をつくってみるというお題です。
たった4時間という短い時間の中なので、完成度をもとめるというよりも「アイデアを形にしようとしてみる」という実践が重要と考えていたので、ちゃんと体験できる形にするのは、難しいかなとおもっていましたが、最後の作品発表をみていると、中にはほんとに4時間でつくったの?というレベルで形にされている方もいらっしゃって、ポテンシャルの高さをひしひしと感じました。
単純に皆さんのアイデアとか試行錯誤を見るのがとてもワクワクして、やっぱりものづくりっていいなーという割と初期衝動に近いところを掻き立てられる1日になった気がします。
コミュニティとして持続させたい
最初は雑談から生まれたような企画だったし、僕たちにとっても初めての経験だったので、うまく伝えたいことを持ち帰ってもらえるか、意義のある会にできるかという不安もたくさんあったのですが、終わってみれば、最高の二日間になったんじゃないかなとおもっています。( すくなくとも僕にとっては )
今回は限定的な人数で、二日間通しの開催ということもあり、両日とも勉強会が終わった後に、懇親会を開催して、みんなで色んな話をしました。同じテーマに興味をもって、そのテーマについてワイワイ語れるってそれだけで本当に楽しいし、色んな刺激も受けます。こういう雑談の中からまた新しい試みとかプロジェクトが生まれることもあると思います。
なんとなく、最初はもっと体験型コンテンツの作り手が増えてくれたらいいなとか、採用もそうだし、一緒にプロジェクトに参加していただけるような良い出会いがあればいいなと思いながら、すごくダイレクトに知識や経験をお伝えする場所が作れたら、と考えていましたが、もっと前提として体験型コンテンツつくるのに興味があるとか、やってみたいとかおもっている人が対話したり、継続的につながっていけるような場とかコミュニティ作りがすごく大事だと確信できた二日間でした。
正直なところ、かかるパワーを考えるとそんなにコンスタントに実施できる類の勉強会ではないな、とおもったのも事実なんですが、今回いただいた皆様とのご縁はもちろん、他にもたくさん体験型コンテンツやってみたいと思っている方が想像しているよりもたくさんいることがわかったので、なにか継続的に体験型コンテンツをつくる人たちのコミュニティのようなものを、具体的に形にしていけるように、今後も色々と考えて実行してみようと思いますので、またウォッチしてもらえると嬉しいです。( そして何かあった時には気軽にぜひご参加ください )
おわりに
今回のイベントは各所の善意のご協力のおかげで、成立させることが出来たと思っています。
まず急な申し出に対して、快く場所をお貸しいただいたZIZOさん。本当にめちゃくちゃ素晴らしいスペースです。参加者との距離感もちょうどよく、あの場所だったからこそ、良いコミュニケーションができたと本当に思います。あと芝生が最高に心地よくて、数えきれないくらい寝落ちしそうになりました。うちにもほしい。本当にありがとうございました!
参加者のみなさんにも、撤収を手伝っていただいたり、わからないところを参加者同士で助け合っていただいたりと、とても助けられました。本当にありがたいことに、大阪とか関西近郊だけでなく、東京、名古屋、富山など遠方から参加していただける方もたくさんいて、参加者同士の交流という意味でも関西を超えて、すごく有意義なものになったと思います。
そして、技術サポートに入ってくれた村野さんと、足立さん(STARRYWORKS) にも大感謝。お二人のおかげで、限られた時間の中で、参加者のみなさんの理解もしっかり担保しながら、滞りなく全工程を終えることができました。いつも超頼もしい二人に助けられています。
そしてもちろん、業務で忙しい中、合間をぬってあれだけの量のカリキュラム立案や当日のシステム設計、サンプルコードの制作などをガリガリやってくれた木村さんにも感謝の念が絶えません。
しかし本当にめちゃくちゃ楽しい二日間でした!最終日の懇親会の後、これで終わってしまうのと、みんなとまたしばらく会えないのかと思うと、寂しすぎて泣きそうになりました!そんな勉強会ある?!
参加者のみなさん、関係者のみなさん、本当におつかれさまでした!
またやりましょう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?