見出し画像

はじめて体験型展示の制作にチャレンジする上で気を付けておきたいこと

BUTTONでは、様々な子ども向けデジタルコンテンツを制作していますが、イベントや常設問わず、テクノロジーを使った、子ども向けの色んな展示やアトラクションの制作も主領域の一つとしています。

近年ではウェブ技術で体験型展示コンテンツのフロント部分を作るというのも十分にメリットのある選択肢になってきており、普段ウェブサイトの制作などを主業務にされている方も「慣れている技術アセットで制作できるなら、体験型展示の制作にもチャレンジしたい」と思われている人もいるんじゃないかなと思ってます。BUTTONも過去につくったいくつかのコンテンツのフロント部分はElectronを採用して制作しています。

とはいえ、体験型展示はコンテンツの制作以外にも色々と気にしておかなければならない事が結構あり、その勘所が無い状態で取り組み始めると、かなり高い確率で手戻りやトラブルが発生したりします。

僕自身も元々ウェブサイトの制作を主業務としてずっとやってきて、少しづつ体験型展示の制作に関わるようになっていったので、企画や制作を進める上で、次々とぶち当たる壁や、気にしておかなければならない事の多さに、最初はかなり戸惑ったことを覚えてます。

色々試しながら気づいたり、周りの詳しい人たちにアドバイスを頂きながら、少しづつ経験を積んで今に至るわけですが、同じ様にウェブの世界から、展示の制作にもチャレンジしていきたいと考えている方向けに、少しは勘所を提供できるのではと思い、簡単にまとめてみようと思います。

この記事の前提

この記事はテクノロジーを使った体験型展示を制作・設置するために必要な事を網羅することを目的としていません。

あくまでも初めて体験型展示にチャレンジしようとする方、特にウェブサイト制作を生業にしている方々で「展示をやってみたいけど未経験で全く勘所がない」という方に向けて「なるほど、こんなこともあるのね、ふむふむ」というように、少しでも視野が拡がれば、と思い書いてます。そのため、展示の制作に関わったことがある人にとっては、説明するまでもないくらい当たり前の内容も含んでいます。

同様に、体験型展示を制作するための具体的なプロセス ( 企画、制作、設営・設置、運用… ) は解説していません。もし需要があったら別の機会にまとめてみたいと思います。

またここで触れている内容については、全て屋内で実施することを前提として書いています。屋外での体験型展示の設置は、屋内とは比較にならないぐらい考慮しておくことが多く、ハードルが爆上がりするので、ここでは想定しません。

照度に気をつけよう

体験型展示をやる時の映像の出力方法として、プロジェクターが選択される事はとても多いと思います。やはり大きさは正義。壁面いっぱいに投影される映像で体験できるコンテンツは展示ならではの魅力です。

めちゃくちゃ当たり前の事ですが、プロジェクターは明るい場所が苦手です。室内であっても外光がガンガン入ってくるような環境だと、そこそこ輝度の高いプロジェクターでも「全然みえないな…」くらいに感じることもしばしば。どんなに良いコンテンツでも、見えにくいと思われた時点でかなり体験性が下がります。

実施前に一度近しい環境をつくって(可能なら現場で)、使用するプロジェクターで投影テストをしておく事をオススメします。

・プロジェクターは明るい場所ではパフォーマンスが出ない
・コンテンツが良くても映像が見えないと良い体験にはならない
・現場もしくは近しい環境で投影テストをしておく

影に気をつけよう

プロジェクター関連でもうひとつ。こちらも当然ながらですが、プロジェクターは影ができます。照射面をタッチさせるようなコンテンツはもちろんですが、少し離れた場所にコントローラーがあるような場合でも設置場所によって影ができてしまう事があります。

照射面の情報がコンテンツの進行に必要なとき、それが影で隠れると、体験者はどうすることもできません。そのため現場の図面をしっかり確認して、影を出さないような設置場所・設置方法を事前に検討しておくことが重要です。

基本はプロジェクターのレンズ面と照射面の間に極力なにも入らないようにすることが重要ですが、機材があるなら、2台で別の場所から同じエリアにピッタリ重ねて照射することで、影が発生しても映像が完全に隠れないようにするとか、照射面にタッチするようなコンテンツではなく、奥行きも十分にあるときは専用のスクリーンを用意し、リア打ち(スクリーンの背面から照射)を検討するなども工夫できます。

・プロジェクターは影ができることを忘れない
・影がでないような設置場所を考えておくことが重要
・コンテンツの特性によってリア打ちや、2箇所からの重ね打ちなども考慮してみる

音の事も忘れないで

リアルな体験展示では、BGMやSEも体験性を向上させるために非常に大事な要素です。もちろんコンテンツによりますが、体験型展示に於いてサウンドの存在は主役級の働きをします

ウェブサイトの場合は、そもそも無くても成立するケースがほとんどだし、PCやスマホのスピーカーから再生されるので、再生機器などには特に気を回すことはあまりなさそうですが、現場の環境によってはモニターやプロジェクターに搭載されたスピーカーだと、小さすぎたり、音が悪かったりするケースがたくさんあります。

場所によっては人の声や環境音が非常に大きい場合もあるので、実施環境でのプレイに耐えうる適切な音量を担保できる音響機材が必要です。現場の環境を確認して、適切なスピーカーやアンプ、オーディオインターフェースなどの機材の採用を検討しましょう。

・体験型展示において、音の存在は主役級
・音響機材も事前に考慮しておく
・実際に現場を訪れて、どんな音がなっている環境かを確認しておく

電気容量に気をつけよう

展示になると環境やコンテンツの内容によって、明るいプロジェクターや、ハイスペックなPC、場合によってはLEDパネルや、たくさんの照明器具などなど…さまざまな機材が必要になるケースがあります。

展示する現場ではだいたい使える電気容量が限られていることがほとんどです。電気は無限に使えるわけではありません。それぞれの機材には動作させるために必要な電力量がありますので、それを事前に計算して会場で使える容量を超えない様に注意しましょう。

超えてしまうとブレーカーが落ちて、周りの環境にも影響してしまう可能性があります。一般的には1回路1500W(15A)が上限になるので、会場で何回路つかえるのかを確認して、1回路に接続される機材の総容量が1500Wを超えない様に計画しましょう。

・電気は無限に使えない
・機材リストをつくって、使用する電気容量をあらかじめ計算しておく
・一般的な1回路は1500W、何回路必要かを確認しておく

排熱に気をつけよう

デジタル展示では、アウトプットの機材がたくさん必要になるため、それを制御する機材も必然的に多くなります。PCやアンプ、オーディオインターフェースなどの制御機材はユーザーにアクセスされない場所に固めて配置しておき、トラブルの発生時や調整が必要になったときにスムーズにアクセスできる様にしておきたいものです。

現場の環境によっては、そういった条件を満たす場所がない場合も多いので、機材ボックスとして専用の什器を用意して、その中にまとめて配置しておくこともよくあります。その際、機材から発せられる熱がうまく逃げられず、庫内の温度が高くなるとPCなど機材の動作に異常が発生してしまいます。機材を収納する場所や什器を考えるときは、必ず排熱とセットで考える様にしましょう。

一般的には庫内にUSBファンなどを設置し、什器に外側から空気を取り入れ、温まった庫内の空気を外に出すような循環が担保できるような設計にしておくことが望ましいです。ものすごくPCの負荷を掛けるようなコンテンツの場合は、水冷のPCなどを用意するなども効果的かと思います。

・制御機材はメンテナンス性を考慮し、できるだけ一箇所に固める
・機材は熱を発するので、機材置き場は通気性が担保できているか確認する
・機材庫に空気の流れを作る。ファンなどの備品を用意しておく
・温度計などもいれておくと、状況把握がしやすい

ケーブルの配線に気をつけよう

先の機材ボックスの話にも関連しますが、たくさんの機材が連携して実現される展示物では、当然機材間の通信や、電源の供給などに様々なケーブルが必要になります。この時、ケーブル類は出来るだけ綺麗に配線し、整理するようにしておきましょう。

機材ボックスからプロジェクターやスピーカー、ユーザーが操作するコントローラー端末などに繋がるケーブルの場合、ケーブルがだらだらと見えているのは単純に美しくないですし、つまづいて体験者がコケてしまう危険性や、それに伴ってケーブルが抜けて、システムトラブルになる可能性もあります。長めに配線する必要があるものは、少し距離的に不利になっても、人の動線を避け、壁際にピッタリと沿わせて、しっかり固定することが大事です。

また機材ボックス内にはたくさんのケーブルが密集するケースが非常に多くなります。たくさんのケーブルがそれぞれどの機材につながっているのか、メンテナンス時などに見通しを良くしておくために、適切な長さのケーブルを選定( 0.5mでよいのに5mのケーブルを使うなどを避ける )し、余ったケーブルが邪魔にならないようにしたり、ケーブルガイドを使うなどして、絡まりにくいように配置する、またケーブルタグなどを利用して、ケーブルの両端にどの機材のものかを記載しておくと、とても見通しがよくなり、トラブル時の切り分けにも役立ちます。

・人の動線上へのケーブル配置は避け、しっかりと固定する
・機材庫内のケーブルも、適切な長さにし、極力整理して見通しをよくする
・ケーブルタグなどで、何のケーブルがわかるようにしておく

ケーブル長に気をつけよう

前述の項目で「少し距離的に不利になっても、長めに配線する場合は人の動線をさけて綺麗に配線をしよう」と述べたところなのですが、ケーブルが長くなりすぎる事にも注意が必要です。

例えばHDMIケーブルなどは、ケーブルが長くなるとそれだけデータの減衰や、ノイズの混入などが発生します。5mくらいまでは、ほとんど問題にならないのですが、10mを超えるようなケースだと、機器との相性などによっては、伝送が途切れたりするケースが発生することもあります。

可能であれば、ケーブル長を短く保てるような設置レイアウトが計画できると良いのですが、環境やコンテンツ内容によってはどうしても長くケーブルを引き回さないといけない、というケースも発生すると思います。

そんなときは、リピーターと呼ばれる、途中で信号を増幅させるような働きをもつ機器を挟み込んだり、エクステンダーという伝送する信号をLANケーブルに乗せて通信することで、長距離伝送ができるようにする仕組みなどの採用を検討しましょう。

USBケーブルなども同じ様にケーブル長が長くなることで問題が発生しやすいので、こちらも同様に延長が必要な際は、リピーターケーブルなどを検討してください。

・HDMIやUSBケーブルは長くなるとトラブルの元になる
・極力ケーブル長がながくなりすぎないようなレイアウトを計画する
・どうしても長くなるときは、リピーターやエクステンダーで減衰やノイズに気をつける

UPSを使おう

展示の案件に関わっている方々にはおなじみですが、UPS ( Uninterruptible Power Supply / 無停電装置 ) という機材があります。詳細はWikipediaやメーカーサイトなどの説明を読むことをお勧めしますが、誤解を恐れずにいうと、停電時などで電力供給が断たれたときに、接続された機器にしばらくの間、内臓バッテリーから電力供給を行い、その間にPCなどの安全なシャットダウンを行うことができるようなものです。

デスクトップPCなど、内蔵電源を持たない機材は電源供給が絶たれたとき、通常そのままOSごと異常終了します。問題なく復帰できるケースもありますが、タイミングによっては、データや設定ファイルなどが飛んでしまったり、最悪の場合OSが損壊して、起動ができなくなるなどのトラブルも発生する可能性があります。

そういった機器については、どんな場合でも極力正しい終了手順が担保されるようにしておくことが望ましく、UPSを利用することで、停電などの場合に電力供給が絶たれたことを検知し、自動的に正常なシャットダウンプロセスが走るように設定しておくと良いでしょう。

・停電などで不意に電源供給が絶たれるとシステムにダメージがでる
・UPSを使うことで、停電時にも安全にシャットダウンできる

PCの環境設定を忘れずに

展示物がPCを中心に構成されているとき、PC側の環境設定にも気を回しておく必要があります。インターネット接続がされている時は特にですが、アップデートなどの通知のウィンドウが運営中のコンテンツ画面に出てしまうというケースが発生します。

また常設のように長期間展示するようなケースだと、関連するアプリケーションが自動的にアップデートされたことによって、自分たちの作ったアプリケーションの挙動が変わったり、動かなくなる、ということも考えられます。OSのアップデートなどが自動で走ってしまったりすると、意図せずコンテンツが止まってしまうことにもなります。

そのため、事前に各種アプリケーションの通知をオフにしておく、スリープにはいらない設定にしておく、OSのアップデートが自動で行われないようにしておくなどコンテンツの動作中に意図せず割り込んで表示されるものを把握して、適切にOFFにしておく、ということを考えておきましょう。

セキュリティなどの観点からOSやアプリケーションのアップデートはもちろん実施した方が良いと思いますが、その場合は適切にアップデートの手順を決めて準備し、メンテナンスの日を決め、システムの動作を確認した上で実行するようにしておくのが良いかと思います。

・スリープしない設定にしておく
・コンテンツの画面に割り込むような通知類はOFFにしておく
・インターネットにつながる場合は、OSやアプリの自動アップデートもオフにしておく

機材のバックアップを用意しよう

実施場所や期間にもよりますが、機材のバックアップを適切に用意しておくことも重要です。

展示環境は屋内といえど、使われる機材にとっては、割と過酷な環境である場合が多いです。ホコリなども多いし、長時間の稼働が何日も続きます。また体験の内容にもよりますが、人が実際に触れる部分 ( ユースケースに関わらず、物理的に触れることが可能になっている部分も ) は、配慮をしていても、子ども向けの展示などは特にですが、操作デバイスが不意に落とされたり、センサーなどにぶつかってしまったりするケースも発生する場合があります。

そこで万が一、ハードウェアのトラブルが発生してしまった場合、その部分の交換対応をすることになりますが、センサーなどは発注から手元に届くまでのリードタイムが長くなるケースもありますし、例えばタッチモニタなどを使っていて、その形状に合わせて什器などが作られている場合、そもそも全く同じ製品と交換が必要になることも考えられます。

そのため、設置前から運用中のトラブルのことも考慮して、手に入りにくいものは予備をもっておく、またPC等はセットアップにも時間がかかることがあるので、あらかじめ全く同じ構成にしたものをもう一台用意しておく、などの手を打っておくことで、トラブル発生時に慌てずに済みます。

デジタル展示にトラブルはつきもの。構成が複雑になればなるほど、色々と事前に検討していても、完全にトラブルをゼロにすることは難しいと感じています。しかし、展示は止まってしまうと、それだけで体験機会が完全に失われるので、出来るだけ早く復旧させるように準備をしておくことが大事です。システム全体の完全なバックアップは無理でも、すぐに替えが効かないモノについては、最低限用意しておくと良いでしょう。

・ハードウェアトラブルが起こると交換が必要になり、展示がとまる
・手配に時間がかかるような機材はバックアップをもっておく
・PCなどもセットアップした状態でサブ機を待機させておけるととベター

起動終了を簡単にしよう

展示物は短期イベントなどで制作者が会期中ベタ付きできるケース以外は、多くの場合制作者の手を離れて運用されます。そうなると展示物の起動終了を含めた運用は現場のスタッフの方に実行して頂かなければなりません。

現場を担当されているスタッフの方は必ずしもテクノロジーの知見がある方ばかりではなく、展示されているシステムに精通されているわけでもありません。他にも現場の業務を抱えておられるケースがほとんどです。そのため、システムの制作者は極力シンプルなフローで日々の起動終了などのオペレーションを設定しておくことが重要です。

理想的なのは、スタッフの方が普段施設の運用のためにやっている動作のみで、自動で起動終了するのが良いです。例えば施設のブレーカーが入って通電したときに、それを検知して展示のシステムを起動させる、その逆として、ブレーカーが落とされた時に、UPSで電源供給がなくなったことを検知して、システム全体を正常にシャットダウンするなどです。常時通電している場合は、タイマーで起動終了の設定をする事もできます。

・運用が始まると制作者の手を離れて運用されることがほとんど
・毎日のオペレーションは極力シンプルにしておく
・UPSやタイマーを使って、自動的に起動終了できるとベター

遠隔からの確認体制を作っておこう

前項で述べた通り、日々の運用は制作者の手を離れていることがほとんどです。そうなると何かトラブルが発生した際は、現場を担当されるスタッフの方が発見し、制作者に連絡がくるという流れになります。そのため、一次情報は曖昧な状態で伝えられることも多いため、まずは正確にトラブルの詳細を把握し、原因を切り分けていくことになります。

そんな時に会話や、現場写真等での状況のやりとりが主になってしまいますが、アプリケーションやOSの設定を確認していく際、ひとつずつ何度もやりとりしていくと、かなり時間もかかりますし、他の作業もある現場スタッフの方の時間を割き続けてしまうのも、負担になってしまいます。

そこで、インターネットに接続できる場合限定にはなりますが、設営時の段階からリモートで端末にアクセスできるような環境を現場のPCにもつくっておくと少なくともソフトウェア的な一次情報の把握は、正確に行うことが可能になります。現象がソフトウェア、ハードウェア両面から疑われる場合、遠隔でソフトウェアの状況を確認し、そこに問題が見当たらなければハードウェア側のトラブルの可能性を探っていくという形です。

遠方に設置する場合は特に、遠隔で対応が完了するケースも多々ありますので、備えておくと便利です。

ただし、リモートログインはインターネット接続が必須になりますし、関係者とはいえ、外部から常にアクセスができてしまう事は望ましくない、というケースもあろうかと思いますので、クライアントや現場スタッフの方としっかりオペレーションの会話を事前におこなって許可を得ておくことが必要です。現場の意向として常時インターネットに接続した運用は回避したいという場合でも、回線だけは確保できるようにしておき、トラブル時だけ接続してもらうなどの対応も考慮しましょう。

・トラブル発生時は一次情報の正確な把握が必要
・リモートデスクトップなどでログインできる準備だけしておく
・ソフトウェアトラブルの場合は、現場に行かずに復旧ができる場合もある

何をおいても「安全」を最優先しよう

最後になりますが、これが最も重要な項目です。上記のどれができていなくとも、この項目だけは体験型展示に関わる以上、何を置いても最優先する義務があります。体験型展示は、当然、実際にそこに人が来て、用意されたコンテンツを体験して成立するものです。体験者が、自分たちの作った装置や、設置した機材にアクセスし、設えられた環境に入ってさまざまな振る舞いをするということです。

その環境の中で発生する可能性がある危険は、作り手が意図した正常なユースケースであるかどうかは関係なく、しっかりと想定し、然るべき水準まで配慮されているべきです。

子どもが走り回るようなコンテンツであれば、ぶつかってしまうような障害物をできるだけ排除しておく、機材ボックスなど配置せねばならないもののカドにクッションガードをつけておく、転倒しても大丈夫なように、プレイマットを引いておくなどがあります。

また天井から重い吊りものなどをする場合は、固定具だけでなく、落下防止ワイヤーを取り付けておく、前述したケーブルの配線をできる限り動線上に配置しない、やむを得ない場合は、ケーブルモールなどで保護する、といった事もつまづきを防止したり、ケーブル劣化による漏電などの危険をなくす事にもつながります。 ( ケーブル劣化については半断線状態などになると、最悪の場合ショートして火災の元になるケースもありますので、細心の注意を払いましょう ) 

安全面への配慮は、定石もある一方で、どんなコンテンツを設置し、どのような装置をつかって、どんな体験を目指すのか、それによって、体験者にどんな動作が導かれるのかによって、気にしておくべき事が異なってくるため、一概にこれをしておけばOKということはありません。しかし重要なのは、自分たちの展示するコンテンツは安全だろうか、という意識をいかなる時でも持っておくということだと思っています。

アイデアを考える時、システムを設計する時、機材を選定するとき、現場の状況を確認する時、プロトタイプで体験性の確認をする時、設営の時、いつどんなフェーズであっても「それは安全か?」という問いを忘れないという意識を持つという事を、チーム全体で共有しておくことが大切です。

・安全は何をおいても優先されるべき
・展示における安全対策の定石を知る
・定石以外にもコンテンツの体験に応じて、危険性の洗い出しをする
・どのフェーズにおいても「それは安全か」という問いを常にもっておく

おわりに

体験型展示制作ことはじめ、としてとりあえず知っておいた方が良いかなと思う項目をつらつら書いていくだけで、結構な文章量になってしまったので、もしかすると「思ってたより大変そうだな…」と思われた方もいるかもしれません。

とはいえ、安全面以外は、自主制作であるとか、状況によって最初から全てを完璧にする必要もないし、なんとなくこういう事があるのかと知っていた上で、事前の現場調査やヒアリングに向かうと、回避できるトラブルもたくさんあると思います。また実際に一度やってみると、すぐに慣れるし、二度、三度と制作していくと、息を吸うように気を付けていくことができるものばかりです。

社会情勢的にも、やっと体験型展示を、まっとうに届けられるような状態に戻ってきたのかなと思っています。子ども向けにコンテンツを提供する僕たちは、ここ数年ですっかり失われてしまっていた、子どもたちの様々な体験機会を、これからちゃんと取り戻していかないといけないと思っています。

そのためには、子どもの体験機会をつくるプレイヤーがもっとたくさん増えて、いろんな場所で、いろんな体験ができるようになっていく必要があるし、そのためにできることを探して、少しづつでも取り組んでいきたいとおもっています。なので、少しでも体験型展示の制作やってみたい!と思われている方は、是非取り組んでみて欲しいです。

僕たちも引き続き、子どもに良い体験機会を提供できるような、面白いコンテンツを作っていきたいと思っています。同じような思いを持っている方、お仕事や協業のご相談はもちろん、質問などでも、ぜひお気軽にコンタクトをいただければと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?