ビョーキ的な彼氏
■□■□■□■□
【ビョーキ的な彼氏】
あたしの彼氏はビョーキ的だ。
それはもうパッと見の身体の細さや顔色の悪さからくる直接的なビョーキ的もそうなんだけど、なんかヘタクソすぎる嘘も平気でつくし変にカッコつけるしとにかくビョーキ的に空気が読めなさすぎるという感じ。
そんなビョーキ的な彼とつきあったきっかけは・・・う〜んと正直、憶えていない。
特に告白といったものもされてなく、一緒にいるのがフツーになって・・・って感じだから。
周りから見る彼の評価は最悪で、「別れちゃえば」とか「他にいい人見つけなよ」とか言われるたびに「ホントそう!」って思ってしまう。
あれはたしか、付き合って初めて迎えたあたしの誕生日。
その誕生日に彼がくれたプレゼントが、壷。
なんかただの壷。
どれくらいただの壷かというと鑑定士軍団に鑑定依頼しても席すら立たずに遠い位置から指だけさして「それ500円!」って言われそうなくらい、ただの壷。
「・・・なにこれ?どういうこと?」ってこの壷を入手した経緯を問いただすとさ、もうびっくりしちゃったわけ。
ある日、彼が駅歩いてたんだって。そしたらなんか地味な女性に「手相の勉強してるからあなたの手相みせてください」って言われて見せたらしくて。
そしたら女の人、彼氏の手相見るなり「あぁぁぁああああ!!」って。
どうやら話を聞くとチョー運命が悪い感じへと完全になりかけてるらしく。
そんで彼氏も慌てちゃって
彼氏「その悪い流れを断ち切るためにどうすればいいんですか?」
手相の人「だ、だいじょぶ!です!私がなんとかしてみせます!!」
みたいなやりとりになって、なんだかんだで結果的に・・・
壺を買わされたんだって!!!
その女性が言うには「この壷を玄関に置いておくと悪い流れがなくなって、むしろ幸運が舞い込む」とのこと!!
あはははは!!!!
なんで途中から風水(笑)
あははははは!!!!あれ?
馬鹿なの?あんた馬鹿なの?
なんてそんなベタすぎる詐欺にひっかかってるの?手相みたのになんで壺?あれ?風水?手相?風水?なんでなんで?ってならないの?
しかもさ、その壺をよりによってあたしの誕生日プレゼントにして持ってくるってどうゆうこと?
「いや、なんか僕の部屋に合わないしいらなかったから」
だって(笑)
さすがに芽生えたね。殺意。
だからあたしは皮肉たっぷりにこう返したの
「とっても最適ね!あなたの骨壺に☆」って。
ね?ホントどうしようもないでしょ?
しかも彼しょーもないウソ付くんだけど、そのウソがびっくりするくらい表情にでるの。
あのね彼、ウソ付いた瞬間、白目剥くの。
白目よ白目。ウソ付いて「目が泳ぐ」とか聞いたことあるけど、泳ぐどころか溺れて死んでる顔よ。白目剥くって。
最初はびっくりした、というより恐怖に近かったけど、クセってわかった瞬間、ビョーキ的だから仕方ないかって諦めた。
ってか、逆にわかりやすいから全然オッケー。
「今のあたしの話きいてた?」ってきくと
「え?・・うん!」って言いながら剥いてるの。
白目。
お料理を作ってあげて、ちょっと味付け失敗したかなーってときも「おいしい?」ってきくと
「うん!おいしい!」って言いながらまた剥いちゃいました。
白目。
ね?ここまできいてわかるでしょ?最初に言った
周りから見る彼の評価は最悪で、「別れちゃえば」とか「他にいい人見つけなよ」とか言われるたびに「ホントそう!」って思ってしまう。ってこと。
実は、それウソ。「ホントそう!」とか全然思ってない。だって、あたしはアイツのことが大好きだから。
こんな自己中なあたしを受け入れてくれてずっと一緒にいて楽しい彼が大好きだから。
大好きすぎて大好きすぎてその表現の仕方が、たまたま彼のネタ的な行動にフォーカスしただけ。
あたしの突拍子もない行動にもフォローしてくれて、あたしが苦手の料理もいつも気を使って「おいしい」って食べてくれるの。大好き。
そしてなんてったって彼はあたしの夢をしっかりサポートしてくれる最高の味方でもあるのだ。
私の夢は、絵本作家。
絵本作家になって世界中の子供達にステキな笑顔を、夢や希望をもってもらうの。
こんな夢物語に献身的にサポートしてくれるのが、彼。
でもね、最近ちょっと変わってきた。彼と一緒にいて、彼と一緒の時間を共有して。変わったの。
絵本作家は、目標にしよう!って。
あたしの夢は。
あたしの夢は
目標である絵本作家になって
あたしが創った絵本をパパである彼が
あたしたちの子供に読んで聞かせるの
それがサイッコーに幸せ。
これが、
あたしの、夢。
そのためにあたしはまずは目標に向かってがんばんなきゃいけないし、そして夢に向かって今日もビョーキ的な彼氏と戯れなきゃ。
彼に語っているあたしの夢が、実は「目標」で
本当の夢は、『彼と幸せな家庭を築く』ってこと
このことはまだ彼には当分
内緒なのだ!
今日顔をあわせたらとびきりの笑顔で彼に「おはよう」をいう。
あしたどこかのタイミングで「いつもありがとう」をいおう。
そして毎日「あなたといれてあたしは今日も幸せです」と心の中で復唱するのだ!
夢に向かって。
〈終〉