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プロレス深夜特急2023……九州プロレス・長崎県五島列島小値賀島篇

※『プロレス深夜特急』(徳間書店刊)未収録作です。プロ格連載に埋もれたままにしておくのがもったいない作品は今後noteに再録していきます。

■2023年6月17日(金)……福岡市博多区→長崎県小値賀町

九州プロレスとしては13年ぶりとなる五島列島小値賀島での大会。真夜中のフェリーで博多港から出発するのだが、いつものように筑前さんがうちまで車で迎えに来てくれた。理事長にそんなことまでしていただいていつも本当に恐縮なのだが、オレは車を運転しないし持ってもいないので、試合のさいはいつもうちまで迎えに来てくれるのだ。そんな会社。それが九州プロレス。

助手席に、イギリスから留学中のジェイク・リードの姿が。皆で会社の車に分乗するので、彼がたまたまそういう割り当てになったようである。

「筑前さん、いつもすみません」

「いえいえ、すぐ着きますけど後ろでゆっくりしててください」

「Hello TAJIRIサーン」


誰が呼んだか、筑前さんこそは九州のイエス・キリスト(運転中)。

現在九州プロレスではイギリスからのジェイクと、イタリアからのミルコ・モーリ、ニコ・インベラルディの3人が留学中。なのでいつも日本語と英語とイタリア語が飛び交っている。つい先日まではマルタからのオーエン・ブランコとシンガポールからのアンドリュー・タンもいて、もっとにぎやかだった。世界中の若者に「いつか彼らが立派になったとき、青春の良き思い出の地として九州を懐かしんで、この島の素晴らしさを伝えてくれたら」(筑前さん談)という理念のもとである。次回は夏以降を目途に、新たなる世界中の留学生たちが九州を目指して海を渡ってくるのだ。

10分ほどで港に到着。横浜のマリンタワーに似たコンパクトなシンボルタワーが青くライトアップされ、フロリダの海辺のPOPなネオンを想い起こさせる。すべてがコンパクトでちょうどよい街。そんな博多。


いつかここで原田知世さんとデートをすると決めている。

待合室には、すでにほとんどの選手関係者。テキ屋風なジイさんが、タトゥーだらけのミルコとニコをつかまえて「すんげえ入れ墨だなあ、えー!?」と、イカの塩辛のように絡みまくっている。見てくれはイタンリアンマフィアな2人だが「ハイ……イエス……」と、気圧され小声で返事をしていた。2人はフランシスコ・アキラの仲間というか同僚というか。そんな関係から第一陣留学生として九州プロレスにやってきている。

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