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オリジナル版・プロレス深夜特急……第6回
※週刊プロレスモバイルにプロレス深夜特急を連載していた2011年の3月11日。日本を揺るがす大災害が発生した。東日本大震災。そのころのオレはSMASHをプロデュースしていた時期であり、月末には初の後楽園ホール進出を控えていた。そんなときに起きた大地震。その週はプロレス深夜特急ではなく、地震が起きたことによるSMASHの境遇を連載に書いた。当時の記憶をもとにかなり加筆し、今回の前半はそれを再録してしまう。
■金曜日(2011年3月11日)。オレは新宿西口のビル14階にあるSMASHオフィスで、某雑誌のインタビューを受けていた。ある質問に対しての、良い答えがなかなか思い浮かばない。
「えーと……そうですねえ……」
視線はインタビュアーにではなく、窓のそとに向いていた。すると、建築中の遠くのビルの屋上に設置されているクレーン車が、なぜかユサユサと揺れているのだ。なんでだろ?あ、もしかして……
「地震?」
口にしたと同時にドーン!と、下から突き上げられるように縦に揺れた。ユッサ!ユッサ!ユッサ!次の瞬間には、経験したこともない横揺れとなる。
とうとう来た!南海トラフに違いないと思った。
「みんな逃げて、早く!」
SMASHオフィスは、酒井代表が経営するQJJという会社の一角にある。オレはQJJの社員たちに大声で叫んだのだが、誰もがただ呆然とするばかりで体が反応できないようであった。それでも一人二人と逃げ出したのを確認し、オレは階段へダッシュした。
ガッシャン!ガッシャン!ガッシャン!
信じられないことに、ビルの階段が船の機関室のような轟音を立てグニャグニャと歪んでいた。降りても降りても1階まで到達しない。途中からは「捻挫したって逃げてやる!」と、15段ほどを一気に飛び降りたりもした。やっと1階に辿りつき路上へ飛び出すと、とっくに逃げてきていた大原はじめと児玉祐輔が「助かったあー!」なんて言いながら、まだ激揺れだというのに安堵の笑みを浮かべタバコなんかふかしている。SMASHAでは全所属レスラーが裏方業務もこなしていたので、この日も全員オフィスに居合わせていたのだ。多少弱まったようだが、揺れはまだまだ止みそうにない。すると、路上に溢れていた群衆が、いっせいに叫び声を上げた。全員が同じ方向を見上げている。
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