
オリジナル版・プロレス深夜特急……第14回
■日が暮れ始めていた。東京→大阪のボードを掲げるオレたちの前に、古い型の乗用車が止まった。
開いた窓から、目つきの鋭い中年男性が顔を出し、ぶっきらぼうに
「乗れ」
とだけ言う。
「いいんですか?」
「早く乗れ」
小川さんが助手席に、オレは後部座席に乗り込んだのだが。
無線機材か、盗聴機材か、あるいは宇宙との交信機材なのか。車の中にビッチリと、その手の機械が山積みにセッティングされていたのだ。
「通信関係の方ですか?」
小川さんが尋ねた。
「ちがう」
「じゃ、もしかして探偵さんですか?」
「黙って乗ってろ、京都で降ろすから」
気分を害してしまったのだろうか。無理してコミュニケーションをとるよりも、黙っておく方がよさそうだった。東京を発ち1日半。オレたちは、もうじき京都という距離まで到達していた。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?